グレヰトな裁定12
「またココかい!」
もう一回やったった。
声が響いて気分いいわ。
それにしても、ここにいた時間は後にしてみると1ナノ秒にすらならないんだろうけど、気分的には助かるわ。
ずっと死が飛び交ってて神経すり減らしっぱなしだったから、心安らぐというか。
デバックルームには相変わらず、無愛想な天使風オペレーターが冷めた顔で立っている。
心なしか前回よりも冷めている気がする。
分かりやすく説明すると、ファミレスの冷たいパンプキンスープぐらい冷めてる。分かる?
それにしてもなんで?オレからこっちへ来たわけでもないし、営業時間内にも声かけたりしたけど、結局返事しなかったのそっちじゃない?なんで?生理?
あ!心底軽蔑した顔。
冷たい表情から冷たい言葉がこぼれる。
「何してるんですか。」
「そりゃオレのセリフよ。ここに移動させたのはそっちだろ。えらい変なタイミングだったぞ。」
「違います。地上で、あなたは、何してるんですか。丸一日も、経っていないのに、大・戦・争が、起きてるじゃないですか。」
「そりゃオレのセリフよ。なんで大戦争起きてんだよ。昨晩は状況説明しただけだし、次に朝起きたらもう始まってたぜ?しかもイノウエもオレの動きを察知してたし、富国強兵なんかはそのイノウエの行動を更に読んでたわ。」
「そんな馬鹿な。そんな事、未来でも知らない限り……あ」
「……あ?おい待てアンタ。いまなんか、心当たりがありそうなの漏れたぞ。」
「………………」
また通信中か。なんなんだ一体。
いや、なんなんだってこともないか。こんなんどう考えても上のやつが一枚噛んでるだろ。
「…………すみません、お待たせ致しました。」
何やら疲弊した表情である。
「お、おう……。どしたん、話聞こか?」
「いえ結構です、いやらしい。」
「いやら……!?」
気まずい沈黙が流れる。
オ、オレのせいじゃないだろ、流石に。いやらしくないし。
「まあその、さ。どうせアレだろ?何かやったんだろ?アンタの親分。」
そう聞くと、無愛想天使風オペレーターはうつむきながら応える。
「まあその、はい。」
そういうと、上位存在のした事を打ち明けた。それはかいつまんで言えばこういう事らしい。
昨日の夜の事だ。
上位存在……この表記めんどいし普通にムカつくからジョーイって呼ぶわ。とにかくジョーイは閃いた。
展開が遅い。
ってな。飽きっぽいってのは昨日のやり取りで何となく察してはいたが、想像を超えた飽きっぽさだったようだ。
そこで今回の騒動のキーとなる人物に、夢見でそれとなく未来を伝えたんだと。んでそれがイノウエタカシってわけ。
イノウエは夢見によってオレ達の目的と今いる場所が分かったので、直後に進軍を開始したようだ。
流石に判断が早すぎる。フェアじゃない。
干渉したのが良くなかったかもしれないと思ったのか、ジョーイは次に富国強兵の夢へと干渉し、再び夢見を行ってこれから起こる未来とイノウエの様子を教えた。
すると富国強兵もすぐさま布石を打ち、隠されていたシヴァ闘士の爆速回収作戦を開始した。
あわわわ、パワーバランスが。
そう思ったジョーイは今度こそ物事を公平にするために、この様子を未来予知的なインスピレーションとしてイノウエへと送信し、それを受信したイノウエが対策をする。
対策の結果、タカシは出られたもののタカオがとらわれてしまう。一人しか出られない罠だ。
でもこうなると、イノウエに最初の夢見を行った後に富国強兵側を弱体化させただけのような気がしてくる。
それはそれで不公平なので、イノウエの裏をかくような作戦をインスピレーションとして富国強兵の脳へと叩き込む。
富国強兵はこの不思議なインスピレーションを元に作戦を立て、オレを大穴方面へと飛ばした後に位置変えと吹き飛ばしのコンボでマキシマを彼方へとぶっ飛ばし、その後に同じような理屈でオレ達と合流することにした。
またパワーバランスがおかしくなってる。
焦ったジョーイはギリギリのタイミングではあったがイノウエとマキシマに未来を伝える。
これにより布石が打たれ、マキシマが手元に復活したうえに無答心策が陥落、陣営チェンジとなった。
……というのが、上位存在ことジョーイの行った行動らしい。
「全部そのクソ馬鹿ムーブのせいじゃねえか……。」
おまえコレ、とり返しつかんぞ?
つくか?つかんよな?絶対無理だよな?
思いついたアイデアは一旦寝かせるのが創作においては重要だろうが。あまりにも行き当たりばったりすぎる。オレの物語とコンセプト変わらんぞ。
青筋を立てるオレに対し、さすがの無愛想天使風オペレーターも焦りの表情を浮かべる。
「これは流石に反省しているとのことです。」
「いや、反省とかじゃなくて……ああ」
リアルに頭を抱えてしまう。
駄目だこれは。本物の馬鹿野郎が世界の運営をしている。
ていうかこれもう干渉したくないとかのレベルじゃねえだろ。アホほど干渉してるし、アホすぎる干渉だ。
どの口で言いやがったんだよ、ホントに。他人が馬鹿すぎて泣けてきそうなのは初めてだ。
無愛想天使風オペレーターに話しかける。
「なあ、ジョーイ……じゃねえや、オレと上位存在の話を橋渡しできるか?」
「少々お待ちください……」
しばしの沈黙。そして回答。
「…………ジョーイでいいよ(*>ω<*)だそうです」
くっそ。ムカつくわ〜。
なんで言語での会話なのに顔文字とかまで伝わってくんだよ。超常存在すぎるだろ。なんか若干古臭いし。
「続いてメッセージがあります。
ゴメンね(>人<;)
……だそうです。」
いやゴメン、もうなんか笑うわ。
「分かったからさ、済んだことは置いといて、どう収拾つけるか話し合おうぜ。まず聞きたいんだけど、時間って戻せるん?アンタが干渉しだす前のタイミングまでさ。」
「でき……
る?
→ ない?」
「いやそういうのいいから。やめろって。ちゃんとやろ!ちゃんと教えて!」
(>人<;)
「…………時間の巻き戻しは可能なものの、それによる別のエラーが誘発される可能性が高く、推奨できないようです。」
「おん、そうなの。そういや似たような話したっけか。ていうかさ、もしかしてアンタ……結構ちゃんと変換して伝えてくれてる?」
「わかりますか?」
「まあ、さっきのやり取りしてたらジョーイがどんなやつか分かったっつーか、アンタがいなかったら会話ですらまともに収拾つかなそうな感じがするんで。」
「……ありがとうございます。」
無愛想天使風オペレーターが微笑む。
初めて微笑んだ!アカン惚れてしまう!
……あ、ウソウソ。続けてどうぞ。
「これもまた思いつきでしかありませんが、エラーを誘発しにくい干渉を行うのはどうだろうかと言っております。」
「ふむ?何か妙案があんの?」
「…………できれば一緒に考えてほしい。だそうです。」
「あー、わかったわかった。思いつかんってことね。」
(>人<;)
「いや、いいよ別に。だから頭に直接それ送るのヤメテ。」
(*^ω^*)
は
|
い
……まあいいや。
暖簾に腕押しって言葉を神みたいなやつに使うことになるとは思わんかったけど、これまさに暖簾に腕押しだわ。




