グレヰトな裁定11
両陣営の戦闘は苛烈を極めた。
その凄まじい激突はまさしく総力戦の様相だ。
ただ惜しむらくは、イノウエの闇によって身動きが取れないため、いつにも増してオレの実況能力が低下していることだろうか。
ほとんどの戦闘行為は地面のある所で行われているので、大穴の端に身体を向けられているオレにはほとんど何も見えない。
ドカーン!
バキバキバキバキー!
ドシャー!
そんな感じである。
時々なにかが光ったり、あとは砂埃やら小さい小石が舞い散っている。
あと怒号っていうのかしら。あれが結構すごい。民度の低い居酒屋みたい。
聞こえてくる声からすると、タカシもいるようだ。あとは駅ビル一派は当然として、学団の連中の声も、獣寺の面々の声……っつうか吠えてるのも聞こえる。まあその、聞いたことある声ってのは意外と分かるもんやね。見知ったばっかの連中とはいえ。
ちなみにいつもそうだが、どの攻撃でも掠っただけでオレは死ぬはずだ。下手したらさっきの小石がヒットしただけで死ぬ。
忘れて欲しくないから何度でも言うが、オレは一撃死する。しかもここんとこ毎日こんな感じだ。
ウワー!
ぎゃー!
みたいな声が聞こえる。
実際にはもう少し臨場感があったり台詞があったりもするが、お前らもちょっとこの状況を考えて欲しい。
自分すれすれの場所を死が飛び交ってる中、そんな細かいニュアンスまで伝えられるワケねえだろ。
家から目的地まで、傘もささずに雨粒を全部避けていけるか?
YES!答えは家の中にいたから!
みたいなクイズじゃなくて、ガチで。
土砂降りの日に外出てみろ。軒先から一歩でも進んだら濡れないのは無理だろ?
今はまさにその軒先ってわけだ。雨粒は死だ。
正直な話、もう目を閉じることしか出来んわけよ。
引っ張った輪ゴムを目の前に向けられた事ある?まあオレはあるんだけど、まぶたプルプルするよな。撃たれる瞬間なんかはギュッと目を閉じちゃうだろ?
その撃たれる瞬間を四方八方から連打されてる感じだと思ってくれ。
せっかくの大規模な戦闘だし、オレが出来ることっていったらまさしく戦果の記録ぐらいなもんだと思うんだけど、見えないものはしょうがない。9割は大穴しか見えてないしな。
音にしてもそうだ。
音や声だけでどこの誰が何をしているのか、この規模で分かるわけがない。聖徳太子が百人ぐらいいればなんとかなるかもしれんけど、残念ながらオレはかなりの低脳だ。
そんなわけで、この大戦が通り過ぎるのをひたすら祈っていたわけだが、ふと気がつくと周囲の闇が無くなっている。
おろろ?もしかして奴さん、オレを縛っとく余裕すら無くなってきたんか?
いけるんか?最強同盟?やれるんか?
「「おおおおおお!」」
近くで上がった怒声にビックリ仰天おったまげしながら振り返ると、声の主であるシヴァ闘王&シヴァ闘士の親子がイノウエらしき闇とゴリゴリのバトルを繰り広げているところだった。
タカオおじさんの脇腹からは血が流れ、それを一本の腕で押さえているようだ。
手で押さえてないと中身でちゃうぐらいの、まさかの深手か?
シヴァの二人はイノウエの持つ武器を警戒しているようで、それに触れないように立ち回っているようだ。
それにしてもシヴァ神の力を持つ者を切り裂けるとは、なんだあの武器は……
「てか、もしかしてあの武器がムトウさんだったりして」
思わずそう呟くと、背後から声を掛けられる。
「その通りだハザマザンペイ。ムトウは名前の字義を変えられた結果、イノウエの武器に成り下がった。」
富国強兵が苦々しく呟いた。
「んじゃ、あの武器が武刀神裂ってワケか。あんなふうにされて自我とかあんのかな?ていうかさ、アンタが思ったよりも近くにいてびっ」
「お前を死守する必要があるからな。どのみちここが落ちたらお終いなら、この場所を起点にして防衛する方が良かったんだ。オレも個人としての戦闘力はないからな、どうせなら固まっていた方が他の奴らも守りやすいだろう。」
それもそうか。防御を堅める場所としては最適。動く防衛拠点ザンペイといったところか。
とりあえず辺りを見回してみたものの大乱戦もいいところなので、正味な話、何が起きてるかよくわからん。
オレが自由になると同時に猫ちゃん達も自由になったわけで、その後は防御術として珍矛林による珍矛森でバリケードまで作成されて、ますますよく分からん。
総力戦なわけだが、オレには何が出来るってわけでもないし、このままこうしていても何の役にも立たないし何が起こっているのか上手く伝えることもできないっていうか何やねん。
ちょっと様子がおかしいぞ。
おいおいおい……待て。ちょい待て。このタイミングはアカンだろ。今そういうのじゃないだろ。
何してくれとんねん。
「またココかい!」
人差し指を天に向け、激しいツッコミをする。
逡巡している間にまたココだ。
無愛想天使もどきオペレーターによって上位存在とのコミュニケーションが取れる夢空間、デバックルームである。




