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グレヰトな裁定7

やり直しを要求したい。


飛立新地(トビタシンチ)とかいうポッと出の元ヤンによって、上空千メートルぐらいは飛び上がっているのだろうか。

いやもっと高いな。見てみアレ。スカイツリーがあんなに下の方にある。まあスカイツリーじゃなくてただの電波塔だけど。じゃあ千メートルいってないんちゃうか。いや知らん。

とはいえあんなもんが肉眼で見えるってことは、高度一万メートルとかまでいってないんじゃなかろうか。

いや、ひょっとしたら見えるもんか? まるでわからんしどうでもいいけどね。


あと一応言っておくと、めちゃくちゃ寒い。

上空をとんでもないスピードで吹っ飛んだことある? オレはある。今だ。寒いし息できないんだぜ。

幸いにもオレにはオーク()ヤバ()とかいう生命維持装置が付帯しているので、こいつに包まれる事によってなんとか生きていられる。若干豚骨くさいが。

猫ちゃんと珍矛林もオーク()ヤバ()が抱えているが、さすがの濃厚豚骨モンスターでも人間二人と猫一匹を隙間なく包み込むのは無理だ。だからまあ、寒いし息苦しいのである。


「おいヤバ()!ホントに大丈夫なんだろうな!?」


怒鳴ってみたものの、風の音で全く聞こえてないみたいだ。うん。


「ヤバ()〜!」


うん、そうだね。返事なし。

無視してるわけじゃないよね?

Z世代ってそういうところがあるって聞いたことあるけど、お前のその風体(ふうてい)はどちからといえばZ指定だもんな。

ていうか返事しろよ。聞こえてんだろ絶対。


「ザンペイさん!」


「なんだよヤバ()無視されてんのかと思ったぜ。鼓膜と脳の回線遅延してない?」


「無視するぐらい嫌ってたら、そもそも一緒に飛ばずにザンペイさんだけ打ち上げてますよ!」


そりゃそうだ。ていうかそんなこと普通思いつく?めちゃくちゃサイコブタやんコイツ。


「んじゃまぁ一緒に飛んだってことは、着地の算段はついてるって事でいいだな!?」


「いいえ!ついてません!」


はぁあああ!? 馬っ鹿。馬鹿なのかコイツ。いや豚か。

この馬鹿豚……いやなんか違うな新しいキメラみてえだ。なんだクソ。


「テメェこの豚! お前が大丈夫っつうから飛んだのに、どストレートに死ぬだけじゃねえか!こんな勢いで地面に激突したら高速道路逆走するジジイよりも大惨事だぞ!」


「すみません! でもあのまま残っても殺されるかもしれなかったから……!」


「殺される『かも』ならそっちのがマシだろが!確実な死亡ルートを選択してどうすんだよバーーーカ!!」


「ひっど! ずっと命懸けで守った相手にそんなこといいます? 心まで氷河期なんですか!?」


「てめ……年齢が特定されるような発言すんじゃねえ! 息すんなデブ!」


「言わせておけば……!」


「二人ともやめるにゃ」


猫ちゃんが仲裁に入る。


「ちゃんと手段は考えてあるニャ。安心するニャ。」


「さすが猫さん! ザンペイさんとは違いますね!」


「おーおー、さすが猫ちゃんだわ。どっかの畜産物とは頭の出来がちげーなー。」


「この氷河期世代(アイスエイジ)は……」


「やめるニャ。今は言い争ってる暇はないニャ。今から作戦を説明するからきちんと聞くニャ。」


作戦……? お、おお。

とりあえず猫ちゃんの作戦を聞くことにする。


「いいかニャ? もうすぐ地面に向かって降下しはじめるニャ。そしたらまず、私たちはオーク()の背中側に移動するニャ。」


「ふむふむ、背中に。んでそのあとどうすんだ? ヤバ()ってモモンガみたいな滑空出来たっけ?」


「できませんよ、紅の豚じゃありませんし。」


紅の豚にそんなシーンねえだろ。


「いいから聞くニャ。地面が近づいてきて、いよいよ激突するかしないかの瞬間……」


瞬間……


「オーク()を踏み台にして私達は飛び上がるニャ。これで地面スレスレからジャンプした分の衝撃だけで着地できるニャ。」


おお……猫ちゃん、コレは……


「オーク()は硬いからなんとか我慢すればいいニャ。」


これは駄目だ……所詮、所詮は猫。脳が小さい。論理的思考能力の欠如。マタタビ中毒。

この問題は、エレベーターのワイヤーが切れたらどうやったら助かるのかって疑問に対して、最高峰の馬鹿が考えつく着地法である。答えは死だ。


「そうか。猫さんがそういうのであれば、オーク()ヤバ()、喜んで犠牲になりましょう。」


所詮は13歳。豚界では中年でも、人間界ではオシメが取れたばかりのベイビーだ。お前に待っている未来は豚おろし肉ぶっかけでしかない。地面との摩擦と衝撃で砕け散るぞ。


「ヤバ()、駄目だ。やっぱ死ぬぞオレ等。猫ちゃんの言った方法は、絶対にうまくいかない。死んだら土に帰って調べてみるといい。」


「何言ってんですか。家に帰るみたいな口調で土に帰るとか言わないで下さいよ。そもそも死んだら調べられませんし、調べる必要もないですよ!」


「そうだなスマン。ちょっと動揺してたわ。でもまあマジで助からんぞ。死因はお前らがアホだったからだ。」


「とりあえず僕が仰向けになって皆さんの緩衝材代わりになりますから、それでなんとかなるように祈るしかないでしょう。幸いにも僕は身体も頑丈ですし、浅い角度で地面に衝突したらなんとかなるかもしれません。」


いや、お前はもう豚ミンチ確定なんだが。

馬鹿も入ってるから合い挽きだけど。

とはいえオレ達はどうだろうか。豚カーペットに乗って超高速で地面に突っ込んだ場合、なんとか生き残れるだろうか。いや無理だろう。

鋼鉄製の飛行機でも胴体着陸は難しいのに、豚に毛が生えた程度のオークがそんな芸当をやってのけるというのか。おこがましい。オロナミンC。

……いかん、焦ってよくわからんことを言ってしまった。すまんこ。


そうこうしているうち高度が下がり始める。

なるほど角度はかなり浅い。元ヤンにも配慮はあったようだ。

これなら衝撃もかなり少ないかわりに、摩擦で大根おろしのようになって死ねるだろう。


「ところでオイ、珍矛林(チンポコリン)が大人しいな。気絶でもしてんのか?」


「んニャ、こいつはちゃんと起きてるニャ。緊張してるのか外を眺めて固まってるだけニャ。」


まあそれが普通だわな。むしろオレ達に緊張感が無さすぎるとも言える。

一緒に視線をくぐり抜けてきた猫、豚、イケメンが、まさかこんな最後を迎えるとは。

その時、黙り込んでいた珍矛林(チンポコリン)が大きく手を上げて叫んだ。


「チン・ポコ・シン!!」


チンポコ神?

衝突寸前に言う遺言がそれか?

さすがは元ネコである。緊張感も脳の容量も足りてない。

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