グレヰトな裁定4
階上へと向かう為、駅ビルにある商業施設の通路を掛ける豚力車ことオーク魔ヤバ豚、そして担がれて若干気持ち悪くなっているオレ。
曲がり角まで差し掛かった時に、反対側から来た人物と衝突した。身長2メートルをゆうに超えるオーク魔ヤバ豚様ともあろうものが、弾き返されてよろめく。
そこにはオーク魔ヤバ豚よりもさらに一回り大きな人物が立っていた。
「おうザンペイ」
「なんだよタカシか。悪りいけどピンチなんで後でな。行こうぜヤバ豚。」
ヤバ豚が再び走り出す。よーしよし、その調子。タカシもいればあっちは大丈夫だろ。
「ってちょっと待て止まれ豚ァ!」
しまった。勢い余ってヤバ豚にまで暴言吐いちゃった。急停止し、苛立った様子で話しかけてくる。
「なんですかも〜!ほんと口悪い大人だなあ」
「違う違う!アレ!今ぶつかったのタカシ!シヴァ闘士!」
「えぇー!!なんでいるんですか!」
「いや知らんけど戻れ戻れ!九雷子に加えてタカシもいるんならこれ以上逃げる意味ないだろ!ちょい聞いてみるわ!」
急いでタカシの方へと駆け寄る。
「タカシ!おまえ何してんの?何で上から来たの?どこ行くの?ていうかいままで何してたの?」
「いや残PAY。お前こそ何してんだよ。何で下から来たんだ?どこ行くんだ?いままで何してたんだよ。」
「ああン確かに!ていうか残PAYじゃねーって言ってんだろ。オレは今、下に来たマキシマから逃げてんだよ。あのヘルメット博士やべえから。お前は何すんの?そっちにマキシマいるけど。」
「おう。アイツぶっ飛ばしてやろうと思ってな。」
心強いじゃないの。
「じゃあオレらも行く?ヤバ豚」
「いやザンペイさん。あなた自分が一撃でももらったら死ぬこと忘れてます?下手したら飛んできた瓦礫でも命を落とすんですよ?」
「言われて見りゃそうだな。やっぱり着いてくのやめよう。逃げようぜ一目散に。」
にげて!いのちだいじに!
「その必要はない。」
背後から富国強兵の声がする。
「代わりにシヴァ闘王が抜けたが、なんとか間に合った。ウチの連中もいるし、今やりあってる九雷子都市将もいる。そこへシヴァ闘士が参入ともなれば、マキシマムジョウといえど問題ないだろう。」
富国強兵のうしろ見ると、駅ビル一派の武闘派っぽい面々がいる。防衛大臣を始め、見覚えのある連中もいる。
「こうなると幸先がいいな。標的が向こうから来てくれたわけだからな。行くぞハザマザンペイ。シヴァ闘士も協力願おうか。」
なんかオレの知らないところで話が進んでいるようだ。何が起きたのか聞いてみたいものの、言葉を発する前にマキシマと九雷子のいる広めの通路にたどり着いた。
連続してスパークする空間に、それを避け、たまに防御するマキシマの姿がある。さっきよりも服の焦げた部分が増えているということは、流石のマキシマムジョウといえど九つの雷撃を交わすには骨が折れるらしい。
マキシマがこちらに気づく。
「邪魔者が増えたか。だが、ハザマも連れてきてくれたのは手間が省ける。」
そう言うと、マキシマが今までになく足を踏み込み、強烈に地面を蹴ってこちらへと距離を詰める。オレの目では追えないが、そのスピードとパワーは九雷子の張った帝釈天包囲網を突破したようだ。突き破った勢いで青白く帯電した人影が、オレへと向かう。
「くっ、帝釈天包囲網を二重にでもしておくべきだったか!」
九雷子が叫ぶ。
叫んでいる間に余裕で全滅すると思ったが、マキシマの突撃は大きく青黒い腕によって阻まれていた。真名再臨によってシヴァ神の力を得た男、タカシである。
「貴様、シヴァ闘士か……!」
マキシマの眼光に怒りが宿る。
「よぉヘルメット。テメエのせいで2年間、散々な目にあったぜ。」
タカシの三つの目が血走り、全身から怒りを噴出させる。
いやでもちょっと待って、これ前例に照らし合わせると今から大破壊道路がビルドできちゃうパターンじゃないの?
「そうはならないでしょう。」
なんだぁてめぇこのジジ……あ、無答さんか。チワーッス!いつもお世話になってます!
「貴方という人は……。まあいい。大丈夫ですよ、その時とは違って、今回はこちらにも手勢がいますからね。それに……」
そこまで言うと、横から富国強兵が遮る。
「ひとまず一気に押し切るぞ。戦闘員は全員、シヴァ闘士の邪魔にならないように能力を解放。防衛大臣は駅ビルの防御態勢を立て直すため離脱。入り口の方へ行ってくれ。」
「了解しました。」
防衛大臣はその巨躯に見合わないコンパクトな動きで、駅ビル入り口へと走り出した。
「次、空騒通達。猫台風経由で珍矛林を呼び出してくれ。アイツは離れた位置からの戦闘支援に向く。猫台風はそのまま入り口の防衛につくように伝えろ。獣寺の者たちについては自由にさせろ。」
「あいよ!」
軽快そうな声。日に焼けた肌は外出が多いせいか元々か分からないが、いかにも陽キャといった感じの男。名前だけは聞いていたが初めて見たわ。これが空騒通達か。
何ぞ口に手を当ててパクパクしている。金魚の真似か、もしくは伝令とかいうやつだろうか。
「次。千動 拳多と組打 絞外。お前達は待機。肉弾戦特化のお前達ではあの二人の戦闘に混ざるのは危険過ぎる。無答と組んで、オレとハザマザンペイの前に控えておけ。」
「「了解」」
誰とは言わんが、どこぞの足打拳突とはえらい違うな。こっちの方がちゃんとしてそう。あいつ死んでればいいけど。
こうして富国強兵が支持している間にも、すぐそこでは苛烈な戦闘が行われている。
もはや分身しているようにしか見えないマキシマの動きを、タカシが三つの目によって捉える。
カウンター気味に打ったタカシの剛腕は寸前でかわされ、背後へと回ったマキシマがタカシの頸椎目掛けて蹴りを放つ。
しかしその蹴りはタカシの四本ある腕のうちの一本で防がれたため、マキシマの身体がバランスを崩す。
その隙を逃さず、タカシが残った腕で無防備となったマキシマの頭へ掴み掛かる。しかしこれもまた絶妙に身体を捻ることで何とかかわし、マキシマはバックステップで一旦距離を取った。
バックステップした瞬間を狙って九雷子の雷撃を放つが、マキシマはこれを全身を使って何とか避ける。だが雷撃は複数本降り注いだため、何発かは被弾する。
どうやらダメージとしてはそこまで通っていなさそうだが、手足が痺れるのか少しよろめいているようだ。
そうこうしているうちに、距離を詰めたタカシがマキシマの頭上へと四本腕の鉄槌を振り下ろす。
「まずい」
富国強兵が言うのとほぼ同時に、タカシの攻撃をガードしたマキシマの足元へヒビが入った。
「崩れるぞ!オーク魔!ハザマザンペイを離すなよ!」
「了解です!」
ヤバ豚の激しいハグがオレを包み込む。
とんでもない絵面だ。
だが命には替えられんのである。
タカシの攻撃により床が崩落し、全員が下の階へと落下する。
普通に怪我する高さなので、雷撃以外は普通の人間のはずの九雷子とか死ぬんじゃないかと思ったが、こともなげに着地する。
そういや富国強兵の加護で身体能力が強化されてるんだっけか。
オレも傘下に入っとけば良かったわ。
ていうかむしろ、何で傘下入りを打診してくれないのかな。
無答さんなんかは身体能力強化されてても危なそうだったが、落下地点から竹の矛が飛び出して簡易的な足場を作り出す事で、問題なく着地した。
どうやらちょうど近くに珍矛林がいたようだ。
「珍矛林!来たぞ!」
いや違う。来たのはオレ達だ。まあいいけど。
下の階には、珍矛林の他に猫台風こと猫ちゃんや、獣寺の犬束猟大狼と虎魂大牙もいた。
どうやらマキシマはコイツらをスルーして、一気にオレとヤバ豚の方に来たらしい。
おかげで全員健在での第二ラウンドスタートとなった。一転してマキシマのピンチとなったわけだ。
まあ皆には頑張ってほしいと思う。




