トラヰブの狂宴15
食事が終わり、駅ビル一派と九雷子学団、獣寺の代表者で集まった。
はじめは会議室の予定だったが、シヴァ闘王が入れないため屋上で話す事になった。
オレはというと、何故かこの会議に参加している。
この集まりの幹事である、富国強兵が話し出す。
「狭間残兵の出現により色々な物事が動き出したわけだが、まさかここまで良い方向に進展するとは思わなかったな。」
シヴァ闘王が頷く。
「そうさなぁ。どこの連中もマゴマゴしてて退屈してたところに残兵が来たおかげで火種には困らんな。残兵、お前ひょっとして魔除けならぬ魔寄せかぁ?ハーッハッハ!」
「良くも悪くも均衡を崩したのは間違いありませんね。とはいえ彼の存在によって私の領土が脅かされるようなことはありませんでしたが。」
シヴァ闘王の強気な発言を聞いた聞いた九雷子都市将が見栄を切るが、さっき殺されかけてたのを忘れてないかしら。
領土防衛どころか駅ビル一派の傘下入りしてるし。つっても富国強兵からしたら城壁や堀みたいな扱いだったか。哀れなやつ。
「残兵くん、何か言いたそうだね。」
九雷子がオレに凄む。
「いや別に。でもこの三勢力の中では九雷子んトコが一番扱い悪かったわ。肩は外すわ殺そうとするわ、クソは漏らすわ殺そうとするわ追い出すわ。」
脱糞はオレのせいか。
でも殺そうとし過ぎなのは間違いないわ。
「二人とも今は止めておけ。二年分の停滞がこの数日で動き出した事を考えると、いまこの瞬間にもコトが動き出す可能性はある。雑談は後に回し、重要なことから話さないか?」
富国強兵の提案に対し、シヴァ闘王も肯定的な返事する。
「ああ構わんよ。今からまた寺に戻って仕切り直しってのもつまらんしなぁ。早いとこやろうや。」
このオッサンが「やろうや」っていうと「殺ろうや」なのか「闘ろうや」なのかわからなくて困惑するな。姦ろうやじゃないのは救いだけど。
……ん?いや、オレやられてたわ。チイ サナとカメイ マコトに姦通されてたわ。駄目だわ。
「まずは共通の話題からいこう。シヴァ闘士の情報だ。」
シヴァ闘士に似た反応が4つあったこと。そのうちのひとつがシヴァ闘王だったこと。タカシと戦った後もマキシマム・常の出現情報があること。にも関わらず、タカシの情報は出てこない事などを説明した。
その情報を聞き、シヴァ闘王は顎をさすりながら呟く。
「フーム、とりあえず四つの反応はオレとタカシと、あとは家族の位置だろうなあ。妻のタカナとジジイで間違いないだろう。あいつらも写真の類は残っちゃいないがな。」
それを聞き、富国強兵の眉が上がる。
「名前と性別か。魂導探の探索精度を上げられる可能性がある。シヴァ闘士、シヴァ闘王が親子関係であり性別も同じとなれば、その反応は祖父や母よりも近いはずだ。シヴァ闘王に一番似た反応のある所がシヴァ闘士の居場所である可能性は高いな。」
まあそうなるか。祖父よか親父の方が血の繋がりも濃いし、母よりか父の方が性別も同じ分、フィジカル的な能力値も近い気はする。
とはいえタカシはゾウさんを切り落としてたわけだから、その辺りがどう判定されるのかわからんが。
「ひとまずもう一度、魂導に探らせてみる。その後はどうする?獣寺はシヴァ闘士の捜索をするか、それとも他の家族を優先するか。もちろんそこに本当に望んだ家族がいるのか保証はしかねるが。」
ゾウさんないもんなあ。それが捜索のノイズになるかもしれんよな。
「タカシからで構わんよ。ジジイとは元々ウマが合わんし、タカナもなぁ。獣寺の連中を見たらどうなるかわからん。」
そういってバツの悪そうな顔をするシヴァ闘王を見て、富国強兵が尋ねる。
「今この世界の状況でウマの合わない親と合流を不安視するのは当然だ。しかしパートナーにも何か問題があるのか?ひょっとして動物が嫌いなのか?」
「いや逆だな。めちゃくちゃ好きなのよ、動物。そんでめちゃくちゃアレルギー持ち」
ああ……。
全員が嘆息を漏らす。
まあ当然だわな。発声だけでも空気をぶん殴ったような威力を出すシヴァの一員だもんな。アレルギーによるクシャミとは言え、大砲の乱発ぐらいの厄介度にはなりそうだ。
少なくともオレが食らったら絶命するだろう。
再び富国強兵が話し出す。
「となると、やはり息子であるシヴァ闘士の捜索からにするのが無難か。他に必要な情報等はあるか?物資も可能な限り用意するので不足があれば教えてほしい。」
「ん、まあ食い物さえあれば何とかなる。だがお前さん達に得はあるのか?こっちばっかり貰っている気がするが。」
「こちらとしてはシヴァの一族が敵対しないだけでも充分かな。もちろん希望はある。今後の友好関係については前向きに検討してもらいたいし、マキシマムジョウが現れた場合の援護も願いたい。しかし欲を言えばキリがない。」
「マキシマの倅か、まあ出くわしたらぶっ飛ばしとくよ。因縁もあるしな。」
寺を返せば丸く収まるんじゃね?
もちろんツッコミは誰もせず、富国強兵が会話をを続ける。
「あとひとつ、覚えておいて欲しいことがある。」
「おう、なるべく短めで頼む。記憶力に自信がなくてなぁ。」
「富国強兵の能力はさっき説明したように、傘下になったもの達に対し、あらゆる強化を与えることができる。」
「らしいなぁ。そのスタンガンみたいな兄ちゃん、急に動きが変わったもんな。」
そう言って九雷子都市将を見やる。
九雷子の方はというと、少し気まずそうに目を逸らしている。構わず、富国強兵は続ける。
「そうだ。それを覚えておいて欲しい。」
急に周囲へと不穏な空気が流れ始めた。
発信源はシヴァ闘王である。
「……あ?」
そりゃそうだよな。富国強兵の能力は魅力だけど、発動条件は傘下入りが必須。そんなもんこのオッサンが飲むわけない。
「落ち着けシヴァ闘王。能力強化をエサに傘下入りを打診しているわけじゃない。」
どゆこと?タカオおじさんも目を丸くしている。瞳孔開いた三つ目の青黒い人って怖いね。富国強兵は更に話し続ける。
「今後、出先で何か有用な能力を持った者が現れるとする。しかしその能力自体は便利であっても、やや物足りない。力不足。そんな事もあるだろう。そんな時、その便利な者をこちらが一旦引き取って傘下として迎える。それで強化したのち、獣寺への人材派遣という形で戻す。もちろん能力不足を感じなければそんな事をする必要はない。強化したい人材がいたら手伝う。シンプルに言えばそんなところだ。」
なるほど。悪くない条件だわ。
ただこういう話には胡散臭さを感じてしまうのが有能の辛いところね。
だって一度でも人材強化の味を知ったら戻れんでしょコレ。たとえ用事が終わったら傘下契約を解除できるとしても、強化された本人だって富国強兵傘下に残りたがるわ。抜ける時に弱体化して放り出されるのと変わらないもんな。
タカオおじさんにしてもそうだろ。一度でも富国と強兵の味を知ったら、自分には必要なくても獣寺の連中には分けてやりたくなるわな。その時点で負けよね。生活の一部、身体の一部に富国強兵っつう存在そのものが根付く。
まあタカオおじさんと獣寺の連中が本物の戦闘種族だったりとかで、戦いの果てに死ぬことしか考えてなかったら強化の有無ってのは重要でないかもしれんけど。
「ふむ、そうかそうか。まあそうなったらそうなったで色々とありそうだが、手段のひとつということで検討しておこうか。それだけか?」
飄々(ひょうひょう)とした感じでシヴァ闘王がそう答える。
富国強兵もこれ以上は言及せず、頷く。そして顔の前に人差し指を立て、芝居がかった口調で声を上げる。
「さて、それともうひとつ。ここにいる全員が気になっている事を解消するチャンスだ。」
オレ知ってる。
こういう流れの時って、ろくなことにはならないって。




