ロリヰタの幻影2
気がつくと、そこはオレの知っている世界ではなかった。
シバタ タカシ。
唯一の友人の名前だ。
漢字で名前を書けって? 任せとけ。
シヴァ闘士さ。
おかしいだろ?
おかしいんだよ。
前はそんなはず無かった。
そもそも漢字変換して、苗字と名前が繋がってたら上手く区切れない。
でも確かにアイツはシヴァ闘士になっちまった。
ヒンドゥーの破壊神シヴァの如く暴れる闘士に。
狭間の残兵とはえらい違いさ。
時を戻そう。
電車に飛び込んだオレは、気がつくと中学生のような天使の目の前にいた。
違うぞ。さっきのビッチは天使みたいな中学生で、今回は中学生みたいな天使だ。
なぜ天使かというと、そこはライブ感みたいなもので納得して欲しい。
本物の天使には、有無をいわせず天使と納得させられる存在感がある。
光を光と感じ、音を音と感じるように、原始的な部分で天使と知覚できる存在だった。
天使は天使であった。
「なぜ席を譲らなかったんですか?」
堕天使が何か言ってるぞ。
正直な話、オカルトの類は好きだがそれを相手側から押しつけられるのは嫌いだ。
そもそも天使というからには人間より成熟した存在であるはず。
未成熟な存在である中学生のフォルムをしている時点で胡散臭い。
「席を譲るのは法律じゃないからです」
人には人のルールがあるのだ。
法律で定められていない限り、オレを裁くことは神とて許されないはずだし、オレは人間としての権利を主張できる。
「そう」
感情の欠片もない返事。
「今から貴方の……いえ、全ての人の名前が変わります」
ほう。
「名前の持つ意味が変わり、貴方はその名前そのものの存在になります。ザンペイ、あなたは残った兵と書いて残兵として生きることになります」
ほうほう。
「面倒なので説明すると、この名前の改変は我々の上位存在……神の気まぐれです。いつまでも同じような出来事しかおきない現世に飽きた神は、世界に大きな動きを与えるためにこのような行動に出ました。良かったですね」
なにも良くないが。
「親の未来と電車の清掃代金という迷惑行為からエスケープできたのですから、良かったでしょう」
返事もしてないのに回答きたんだが。
ていうかオレが死にかかった事より電車の清掃代金が上に来るんですね。
まあでも疑問がある。
名前の変更が漢字の改変で行われるのなら、欧米人はどうなるんだ?
「悪刃魔とか売電とか兎卵負とかになるのでは?なにぶん神のなさる事なのでわかりませんが、そもそも残兵ごときが海外に進出するほどの行動力があるとは思えませんし、気にしてもしょうがないのでは?」
「ぐう……!」
なんとかぐうの音は出たが、やや負けた気がする。
つうかなんで歴代アメリカ大統領で例えたんだ?
それにしても、残兵がダメなら苗字に期待するしかない。
覇斬魔ならワンチャンある。
「狭い間と書いて狭間ですよ。あっちでもこっちでもない、中途半端な狭間。線路とホームの間に吸い込まれる貴方にピッタリですね。」
いかんでしょ、そういう口撃は。
ただでさえ残兵なのに、追い討ちもするのか。
ジュネーブ条約とかで何か書いてあるんじゃないかその辺。知らんけど。
天使と言っても終末にラッパ吹くタイプのやつだろコイツ。
そう思った途端、気に障ったのか天使は姿を消した。
いや、姿を消したのはオレだったのだろう。
次の瞬間、目の前に現れた景色は、いつもの現実世界だった。




