トラヰブの狂宴14
強烈な雷撃がシヴァ闘士に炸裂した。
凄まじい閃光と爆音。目の前で落雷が発生し、落ちたような感覚。
落雷であれば付近一体も無事では済まないというかオレも落命しているはずだが、そこはさすが九雷子といったところか。雷撃に指向性を持たせていたのか全員無事だった。
雷撃による閃光と、電力供給を解除して暗闇に包まれたフロアのせいで状況は視認出来なかったが、轟音で遠くなった耳にもこの一言は入ってきた。
「そんな……」
九雷子の消え入りそうな声だ。
その後、何度か雷撃が起き、轟音が鳴った。
もううるさいわ眩しいわで、目を閉じて耳を塞いでいたが、どうやらシヴァ闘王には雷撃が無効なのか、やがて音と光は収まった。
これは結構やばい展開だな。
まあだからといってオレには何も出来ないし、そもそも九雷子学団の連中には碌な目に合わされていなかったので、九雷子に暗い死が訪れたところでノーダメージである。
「狭間残兵、分かるだろう。これが九雷子都市将が学校程度の範囲しか治められない理由だ。」
富国強兵が隣で呟く。
九雷子は能力に恵まれてはいるが、我が強すぎる。つまりは若造というわけか。
「つまりは若造ってい」
「だがこのままではまずいな。見てろ狭間残兵。」
富国強兵はゆっくりとした動作でシヴァ闘王、九雷子都市将の方へ向き、声をかける。
「二人とも落ち着いてくれ。……とは言っても今の九雷子都市将の非礼は誰の目から見ても、いや少なくともオレの目から見ても悪かった。いま少し、謝罪の時間をくれないだろうか」
「知らんな」
シヴァ闘王はなおも腕に力を込める。九雷子は既に声が出ない程に喉が締め付けられている。
「だろうな。オレでもそうする。では九雷子都市将、お前の方はどうだ?オレの見立てでは、このままでは1分も持たずに絶命するが、仕切り直したい気持ちはあるか?」
九雷子には聞こえているのだろうが、引き絞られた喉からは呻き声すら出ていない。
「オレは二人にもう一度、普通に話す機会を設けたい。無償とは言わん。シヴァ闘王には情報提供を、九雷子都市将には学団の平穏と、この一件についての命拾いを提案する。反応が無ければこのまま続ける。」
反応はない。
「……代わりに九雷子都市将、お前達にはオレ達の傘下に入ってもらう。とはいえ特に指示などはしない。今まで通り学団を治めて外敵からの拠点防衛に勤めてくれれば良い。無論、有事の際にはこちらの手伝いもしてもらうが、逆もまた然り。学団からの支援要請にも可能な限り応じさせてもらう。ここまでで特に文句が無ければ反応しなくていい」
反応はない。
「ここで終わりたく無ければ、オレの傘下に入ることを表明しろ。少なくともそれで仕切り直しのきっかけぐらいにはなる。九死に一生を得ろ、九雷子都市将。了承するのならば、喋る代わりにシヴァ闘王にタップしろ。それを以って契約とする。そしてこの契約はお前に力を与える。そこの痛打武将にもな。」
九雷子は弱々しく手を上げ、自身を締め上げるシヴァ闘王の腕を二度タップした。
「いいだろう、契約は成立だ。」
富国強兵が言うや否や、再び雷撃が渦巻き、同時に九雷子がシヴァ闘王の腕を振り払った。
傍には痛打武将もいる。二人で腕を振り払ったようだ。
「あらァ?奴さん、急に早いじゃねェの。」
犬使猟大狼が呟く。
「身動き出来ないように押さえつけていたつもりでしたが、予想以上に力強いですね。」
虎魂大牙も首をひねりながら呟く。
「おお?」
シヴァ闘王も目を丸くした。
富国強兵の方を見る。
「こりゃお前か?」
殺気はなく、好奇心からの質問といったところだろうか。
犬使猟大狼と虎魂大牙からも殺気が消えている。
「九雷子都市将、それに痛打武将らのいる学団はオレの傘下となる契約をした。オレの名前、富国強兵はその名の通り、自分の傘下になったものを強化することが出来る。およそ1.5倍といったところか。」
「強兵か、面白い能力だな」
シヴァ闘王は感心しているようだ。続けて質問をする。
「富国の方はなんなんだ?」
「そちらは領土の方に適用されると考えて良い。水はより清く、土は滋養に富む。あらゆる生命力が活発になる。言ってしまえば富国も強兵も同じ理屈の事が起きている。」
「ほーん、強いな」
「そう、強い。強兵の力で能力を強化された仲間達が結束するのは非常に強力だ。良かったらこのまま有益な情報も伝えたいんだが。」
「おう、構わんよ。」
「九雷子都市将、お前の方は納得できているか?さっきは生きるか死ぬかの瀬戸際だから契約したが、今は一生を拾えたろう。気に食わなければ契約は解除しても良いし、その後に帰っても良いし戦闘を続行しても良い。こんな場に呼びつけた代償として、オレの首を獲りに来るのも自由だ。」
「いえ……学団もそのままで、味方も増えると考えるなら文句の言いようありませんね。ただ、この富国強兵の効果範囲は気になりますが。」
「そこは安心して欲しい。オレの支配下は全て能力の影響下にあるから、今頃は学団の連中も力が引き上げられているはずだ。」
すっご。
オレはてっきり九雷子みたいな能力が主人公的なスーパーパワーだと思ってたけど、富国強兵も強すぎんか。
強兵と残兵の差が凄いよ。今からでも富国残兵と狭間強兵に入れ替わりませんかね。そのぐらいの方がバランス良いと思うんだが。
「富国強兵の能力についての説明はこれぐらいにして、食事が冷めてしまうから続きは後にしようか。九雷子都市将、手間をかけるが本日の電力供給を全て任せて良いか?」
「傘下に入りましたからね。それに能力が強化されてる分、負担も少ない。問題ありませんよ。」
「助かるよ。では食事を再開しようか」
こうしてようやく、落ち着いた食事の時間が始まった。
ここまでオレの活躍はゼロだが、摂取カロリーは4000キロを超えたことをここに記す。オレがナンバーワンだ。




