トラヰブの狂宴12
シヴァ闘王の進軍速度は早く、夕方より少し前には富国強兵の拠点である駅が見えた。
線路上を歩いていくと、駅のホーム付近で富国強兵一派が待ち構えている。
先頭の富国強兵の横には猫ちゃんがいた。尻尾で地面を叩いている。不機嫌そうだ。
「シヴァ闘王。よく来たな。まさかあの獣寺が根城とは思わなかった」
「獣寺?ハーッハッハ!そんな名前で呼ばれてたか!」
「知ってりゃ挨拶にも行けたんだが、人狼や虎男が怖くてな。ともかく会えて光栄だ、中へ入ってくれ。」
そう言うと富国強兵はシヴァ闘王を招き入れる。
「ああ?なんだよ遊んでくれねーのかよー?」
シヴァ闘王は拍子抜けといった具合で、不満そうに呟く。
「ウチの使いが知らせてくれたからな、お陰で戦闘以外の準備が出来た。もてなしだ。」
そう言うと猫ちゃんを撫でる。
猫ちゃんはゴロゴロ言いながら顎をあげる。
「もてなし、なぁ」
困ったような顔をしてシヴァ闘王が後ろを振り向く。
犬使猟大狼が答える。
「まァ、飯食わせてもらうってんなら良いんじゃねェですかね?毒ならオレの鼻ですぐ分かりやすぜェ」
これに虎魂大牙も口添えする。
「後ろについて来ている連中は闘王と違って疲れているようです。ご子息を探すため、更に西を目指すならここは友好的に行った方が良いかと」
「そうかぁ?全部滅ぼすのも楽しいんじゃねーかぁ?」
破壊神すぎるだろ。
しょうがないな、ここはオレが一肌脱ぐか。
「おじさん、彼らは他の家族のいる位置も調べられるらしいよ」
「お?ホントか?」
富国強兵が応える。
「本当だ。こっちには人探し能力者がいる。偶然の賜物だが、アンタを見つけたのもそいつの力だ」
「ほー!会わせてくれ!」
「もうすぐ日が暮れる。食事の準備をしているから、ひとまず済ませたらどうだ?」
「大将ォ、腹減った」
なまじ、さっきもてなしの話を聞いたからだろう。
犬使猟大狼の交戦意欲はゼロとなり、食事に全力となっている。
「わかった!飯!飯を出してくれ!」
「じゃあこっちだ。案内させる。狭間残兵を借りても良いか?」
「おう、好きにしろ!」
シヴァ闘王は富国強兵へ向かってオレを投げて寄越す。
人を投げんなってオッサン。
富国強兵の傍らにいる初老の大男に受け取られる。
ヤダ、惚れそう。
「お早いお帰りですね、残兵さん」
「おお、パンツくれた……えっとスンマセン名前を」
「スエヒロオミです。防衛大臣と書いて防衛大臣。拠点防衛の任についております」
適材適所ゥ!
「よう、狭間残兵」
富国強兵が見下ろしている。
心なしか棘のある感じ。またオレなんかしちゃいました?むしろ何もしてないだろ。おん?
「思ったよりもかなり早かったな。ここ2年、まるで何も起きなかったのにお前が来た途端に物事が動き始めた。」
「いや、別にオレなにもしてな」
「狭間残兵、名前はなんてことないが、お前には名前以外にも何かあるのか?」
富国強兵がじっと見て来る。
直視はきつい。怖いよこの人。闘王おじさん、今すぐ引き返してきてコイツを殺してくれんか。
「ザンペイ、お疲れだニャ」
猫ちゃんが声をかけてくれる。
天使ぞコイツ。
「もっとこう、石とか投げられるかと思っ」
「投げて欲しけりゃ準備させるぞ」
いや何を言い出すのん強兵さん。
本当は恐兵なんじゃないのかって。
「しかしお手柄だったな狭間残兵。三日目の定期連絡より前に一人目を連れて来るとは」
「いや、そもそも歩いて1日ぐらいの距離だったんだけ」
「そこが妙だがな。魂導の観測位置にズレがあったのは何故かな。本人ではないからか、それともシヴァの一族相手では精度が確保できないのか」
「闘士も全然違う位置にいるって可能性もあ」
「それはどうかな。シヴァ闘士の位置は大破壊道路の先の先だ。理屈としては通っている」
「にしても仮名真のやつ、まさかシヴァ闘王と繋がってるとはニャ」
猫ちゃんが忌々しそうに呟く。
たしかに。たしかにとは思うが、でもよく考えたらアイツまあまあ怪しかったわ。
なんか関西弁風な雰囲気からして駄目だ。標準語のこと関東弁とか言ってそう。
「ああ、まさか狭間残兵の中に紛れるとはな。どう脱出するか見ものだったが予想外だった」
は?
「アイツが内通者って知っ」
「無答心探」
あ。
富国強兵に言われて思い出した。
そうか、心を読まれてたらバレバレですよな。
「とはいえ無答も全てを読めるわけではない。正確に読まれないように思考にノイズを走らせるのは訓練次第じゃ可能だそうだ。」
いや無理だろ。
何言ってんだコイツ。
「だが何かを隠しているのは分かった。となれば隠し事の中身は、仮名真が進言する内容に関連しているのだろう。泳がせるにはそれで充分だ。」
いや当たりだわ。
天才だろコイツ。
「狭間残兵、お前にももちろん食事は用意してある。それと手柄の礼だ、男物のパンツを用意してある」
「男物パンツ……いいのか!?」
何言ってんのオレ?
いや、でも……分かるだろう?脱糞からこっち、ババアの履き古したパンツばっかりだぜ?
そんなオレが男の証である男物パンツにありつけるたぁ、こいつぁありがてえ。
「ちなみに新品だ。良かったな」
「ははっ!」
いや、ははっ!じゃねえよ。
思わず臣下の礼みたいな返事しちゃったけど定価499円とかのパンツだぜ?
毒されたなーオレも。
それにしてもパンツか。新品のパンツ。
このスラム街以下のバトルシティで何人の男が本物の男物パンツを履いてんだろな。
目覚めて二日のオレが新品の男物パンツを支給て、何げに凄かろう?
あぁ〜、承認欲求が高まるわなぁ〜。




