トラヰブの狂宴11
自己紹介はおじさんが済ませてくれたので助かった。
名前ぐらいしか言うことないし、名前で突っ込まれるのも懲り懲りだからだ。
「そういやザンペイ、お前の名前どうなったんだ?漢字でよ」
いや結局自己紹介いるんかい。
「残念な兵隊と書いてザンペイだよ」
「残念な……兵隊?だァーっハッハッハ!!なんだお前、残兵なのか!」
周りからも笑い声と拍手が沸き起こる。
オマエらシヴァ闘王が良ければ何でも合わせて来るのな。
「うん、残念ながら残兵なんですよオジサン」
ハーッハッハ!と笑いながらオジサンがオレの肩を叩く。
衝撃で目がとれそう。しんどい。
「んん?でもオマエ、考えようによっちゃアレだぞ?」
どれだぞ?全然分からないぞ?なんだぞ?
「残兵ってのは残った奴らだろ。オマエが残るって事は、必ず生き残るってことだ!」
はー?
前向きに言えばそうなるかもしれんが、こちとら肩を外されたり電撃くらったり脱糞したり、ダメージ盛り盛りなんだが?仮に死なないとしても生き地獄なんだが?
「まあ生き残るっつって、手足もがれて目玉抜かれて生き延びてても辛いわな!ハーッハッハ!」
もっと怖い事言うじゃん。
ていうかフラグ立てるのだけはやめて。マジで無理。
「さて、そんじゃ出掛けるか!!」
シヴァ闘王が立ち上がると他の全員も立ち上がった。
いやいや、いきなりなんなの。急すぎるだろ。
こっち陣営は呆然として……いや珍矛林は立ってるわ。さすがだわ。
「ど、どこ行くんだ?」
「おう残兵、オマエも行くぞー!」
シヴァ闘王に持ち上げられ、小脇に抱えられる。
おお、もう……今日のオレはこんなのばかりやんけ……
「ちょ、おじさん!行くって何処へ?」
「そらオマエ、巻島んトコだろー。面白そうだしタカシの事も聞けそうだしな!」
のしのしと歩きながら、シヴァ闘王はとんでもない事を言った。
わざわざヤヴァいトコいくの?このおじさん。
「ついでだから富国強兵の所でひと暴れしてくぞー」
この言葉を聞き、猫ちゃんが黒目を目を縦にして叫ぶ。
「なんニャ!なんで強兵さん達を襲うニャ!」
「遊んでもらうだけだって〜!殺さん殺さん!ハーッハッハ!」
焦る猫ちゃんを見て虎魂大牙が話しかける。
「戻るか?止めないが」
「やーめーとーけェ。いま戻ったところで何もならんだろォ。主は遊びたいだけだ、大事にはならんだろ」
犬使猟大狼が止める。
「ザンペイ、シヴァ闘王……おじさんを止めてくれニャ」
「いや、オレだって行きたかないが、止められるかコレ?」
「ニャ……」
猫ちゃんが力無く返事をし、本堂から飛び出していった。
「あ〜ァ、馬鹿ヤロ……」
犬使猟大狼が呟く。
「なぁに!殺りゃせん殺りゃせん!」
シヴァ闘王は動じた様子もなく進む。
「?????」
珍矛林は混乱しつつもオレ達に着いて来る。
こうして1日かけた道程を再び戻ることになった。
行きは歩きでしんどかったが、帰りは無敵の破壊神が同行だ。命の心配は無さそうだが、向こうについてからどんな罵詈雑言が飛び出すのやら。
しかしまあ、シヴァ闘王が同行ということは、当初の目的は達成したんだろうか。
シヴァ闘家の一人を連れてるんだけど……まあ通らんわな。
「そういやおじさん。今回オレ達はそこの犬使猟大狼と虎魂大牙に翻弄されまくって、まるで掌の上で転がされてるように泳がされてたんだけど、なんでこっちの動きが筒抜けだったんすか?」
「おお、それか。忘れてたわ!おい、サナ!」
「はい!」
シヴァ闘王が声を掛けると後ろから小柄な女が駆けてきた。
女、だよな?ガスマスクにラバースーツを来た、スタイルと声は女の何かだ。
「それともう一人!」
「……やあザンペイくん」
サナと呼ばれた小柄な女にそっくりなな女が挨拶した。
マスクとスーツで顔までは見えないが、体格も声もそっくりだ。
「?????」
いかん、オレまで珍矛林みたいなリアクションになってしまう。
「ど、え……は?」
どえは。
もちろんそんな言葉はない。
「そこのサナはな、いくらでも体を小さくできるんだ。名前もそのままチイ・サナ、小さなって意味らしい。ひらがなだぞオイ!」
シヴァ闘王が無闇に高笑いする。
で、もう一人は誰なんだ。
「コイツは分かるだろ?仮名真だ!」
「えーーーー!!」
語彙力ゼロですわ。
「い、意味がわからん……おま、なんでそんな格好、じゃなくてスパイ?あれ?二重スパイ……は空騒通達か。で、え?そもそもなんで?どうやって?え?」
仮名真と紹介された人物は気まずそうに答える。
「すまんなザンペイくん。入る時にサイズ間違えてしまったわ」
入る時……アッー!
富国強兵の拠点でのあの夜、あの肛門の痛み。
「食事にそこそこ強めの睡眠薬盛ったんだけど、流石に起きてしまったみたいでスンマセン」
「いやいやいや、スンマセンじゃないだろ!何してくれちゃってんの……オレの鋼鉄処女を奪っておいて……」
「僕とサナで一気に入ったからかな、二人で入るんならもう少し小さくしてから入るべきだったわ」
「二人!?オマエ、オレの初めてをいきなり二人がかりって、しかもその人もって……」
オレはまた、この世界で大切なものをひとつ失った。
鋼鉄処女と人としての尊厳だ。あ、駄目だこれじゃ二つだったわ。もう駄目だオレ。
話を聞くに、仮名真は脱出用に縮小した小サナと同行しており、小さくなった小サナに変化することで、オレの肛門の奥深くに身を隠していたらしい。
内部では更に奥までいくために小サナがさらに縮小し、その姿に変化したため痛みは治まっていたようだ。
そして公園の仮眠時に脱出し、犬使猟大狼にコンタクトを取り、道中で聞いたセーフハウスの位置を伝えた。
メンバーも分かっていたので、その対策も犬使猟大狼に伝えたわけだ。
その結果、びっくりするほど掌の上で転がされて今に至る。
「で、こいつら二人が何でこんな格好してるのかは聞くまでもないよな、ザンペイ!」
そう言うとシヴァ闘王が笑った。
まあ人様の肛門に潜り込むんなら、オレでもこのぐらいの完全防備はするさ。
「でもこの人の中、意外と綺麗でしたよ」
小サナが謎のフォローを入れる。
まあ前日しこたま漏らしたからな。




