トラヰブの狂宴5
猫ちゃんのリーダーシップに感謝して、ドーム状の変な遊具の中に入り込み休憩することにした。
それにしても、人間以外も妙な名前のやつらが出てくるとなると、ますます生き物としてのオレの階級が下がってきたのではないだろうか。
いやでも珍矛林よりは残兵の方が聞こえはマシだしなぁ……能力的には珍矛林凄いらしいけど。ていうかそんな名前つけるなよ飼い主も。
オレだったらもうちょっと……
いや、でも名前が違ってたら珍矛林は能力が変わってしまうか……
じゃあ一体なにが正解なんだ……?
名前負けしない名前で、なおかつカッコいい名前……
大トロ食い放題とかどうだ?
いかんな、腹減った……
たとえば名前を一度だけ変更できるとしたら……この空腹だとマジで飯出満とかにして、米食いまくりそうだな……
いや、オカズないとつまらんか。
ああ、オレが米出して、仲間がオカズ出せばいいのか。
いやいや、それでも結局は富国強兵とか九雷子みたいなのに取り込まれたりして、タカシと知り合いだから今みたいな展開になるのか?
でも米出せるから今よりマシか……
……何がマシだっけ?
大トロの話……?
まあいいや、大トロでいいや。
…………。
…………。
…………。
……いつの間にか寝ぼけていたようで、そこから記憶がない。
思考が眠い時の支離滅裂っぷりだったな。
起きると身体が揺れていた。
え?何で揺れてんの?
視界も明るい。
「んん……?」
「ザンペイさん!やっと起きましたか!」
オーク魔の声がする。
どうやらオーク魔がオレを担いで走っているようだ。
「え、オレ寝てた?スマンコスマンコ、グッモーニン。いま何時?」
「それどころじゃないですって!犬っころ!犬使猟大狼だったんですよ!」
「イヌヅカ……?イヌヅカイヌヅカ、あー?」
どっかで聞いたな。
んー?
「強兵さんとのミーティングの時に聞きましたよね!?犬使いのヤバい人狼ですよ!でもなんでこんな近くまで……!」
オーク魔が大地を踏み締めて跳躍する。
瓦礫混じりの家々の屋根より高く飛び上がる。
「うっは!すっげェ!」
「喋ってると着地で舌噛みますって!ちゃんとしがみついてて下さいよ」
塀を飛び越えて着地すると、さらに眼前に塀が迫る。
「もう一度跳びますよ!しがみついて!」
オーク魔とオレは再び宙へと舞い上がる。
周りを見ると数十匹の犬と猫が入り乱れている。
屋根の上を追走してくる野犬と、それを阻止すべく威嚇する猫達。道路のあちこちでも小競り合いが見える。
そこら中でニャーニャーワンワン言ってる。こえー。
すぐ横から猫ちゃんの声がする。
「オーク魔!朗報ニャ!」
「猫さん!朗報とは?」
屋根に着地し、オーク魔と猫ちゃんは並走しながら会話する。
「犬使本人はまだ来てないニャ!こいつら雑魚なら私と珍矛林で蹂躙できるニャ!」
再び跳躍し、地面に着地して走り出す。
「本人はいないのに僕達を襲うんですか!?」
「指示が出ているんだろうニャ」
「どうします?僕達はともかく、ザンペイさんは一撃で致命傷ですよ!」
「案内を付けるから先に行くニャ!万が一、犬使と会敵しても小回りのきく私だけならどうとでもなるニャ!」
猫ちゃんが野太くアーオと鳴くと、オレ達の周囲に2匹の猫が来た。
「この2匹が先導するニャ!セーフハウスに着いたらオーク魔の荷物に入ってるちゅーるをあげてやって欲しいニャ!」
そう言うや否や、猫ちゃんは身を翻して犬の大群と向き合った。
少し遅れて珍矛林も猫ちゃんの横に並ぶ。
「ここで大騒ぎして足止めしとくニャ!珍矛林は目立つし小回りきかないから、少ししたらそっちへ向かわせるニャ!」
他の猫達も次々と猫ちゃんと珍矛林の横へ並ぶ。
「空騒通達との連絡までには戻るニャ!」
犬の大群が迫る。
猫達は尻尾を膨らませて逆立て、唸り声を上げる。
「猫ちゃ」
オレが声をかけようとした瞬間、無数の竹槍が地面から飛び出し、犬達を蹴散らした。
「珍矛林!推参!っはは!」
ハイテンションな人影は、もちろん珍矛林だった。
なるほど、よく見ると形状は矛だ。竹槍ならぬ竹矛とは珍し……ああ、それで珍矛林。まんまや。
それでも負けじと突き進む犬達に対し、今度は猫の集団が散弾銃のように突撃して布陣を破った。
「猫台風に喧嘩を売るとは馬鹿なやつらニャ。」
「猫ちゃんスゲー」
「ザンペイさん、速度を上げますから前を向いて下さい。首痛めますよ!」
オーク魔はそう言うと塀を越え屋根を越え、時には狭い通路を拳でぶち壊して突き進んでいく。
最初は聞こえていた犬族と猫族の喧騒も、すぐに遠ざかって聞こえなくなる。
だがそれでもオーク魔は速度を落とさない。なんだったらどんどんスピードアップしている。
犬使猟大狼がよほど恐ろしいらしい。




