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エリヰトの繁栄9

屋上。

懐かしい我が母校。

卒業したのは何年前だっけか。そもそも卒業したんだっけか。


オレの身体は九雷子(クライシ)痛打(ツダ)折打(オダ)足打(アシダ)の4人の猟奇的活動により、屋上へ(はりつけ)にされている。


肛門から口にかけて身体を貫いている角材は、足打(アシダ)拳突(ケント)の目利きによる逸品だ。

オレの目は中空を眺めているが、その目にはもはや何物も映り込んではいなかった。


串刺しの発案者である痛打(ツダ)猛将(タケマサ)は腕組みをし、ライオンのような顔つきでオレを見上げている。


角材のひとつひとつは細く頼りないが、組突(クミト)が上手く組み合わせたことで、オレのわがままボディを屋上へ固定することに成功していた。


全員から一歩下がった位置では、この特定狭域暴力団の長である九雷子(クライシ)が、その様子を見ている。


夜空には満月が浮かび、オレの身体が照らし出されている。

異能力者が跋扈(ばっこ)する今の世界なら、ひょっとすると数百メートル先からでもオレを視認できるかもしれない。


死人を視認ってか。ぷぷ。


「ぷぷ」


「キモいからやめろ」


拳突(ケント)が冷たい視線を送る。

オレの死体を見上げながら、オレの死体を見上げるオレに対して。


ん?分かりにくいか?


いまオレは、オレの串刺し死体を見上げながら、学校をジャックしたサイコパス達と屋上にいる。


死体は九雷子の隣にいるガクが作った。


思絵(オモイエ) (ガク)は思った通りに絵が描ける。キャンパスが無くても筆が無くても絵の具が無くても。」


思絵(オモイエ)(ガク)の作品「オレの串刺し死体」を見ながら、九雷子(クライシ)が説明した。


「最初にいってくれませんかね。マジで殺されるかと思ったんだが」


小柄な少年といった感じの思絵(オモイエ)(ガク)が割って入ってきた。


「リアリティが必要なんですよ。あの時のザンペイさんの恐怖に(おのの)いた表情が、今そこで(はりつけ)になってる作品にリアリティを与えているんです」


うんこ漏らしたんだけど。


「うんこ漏らしたんだけど」


「出産の時なんかもいきんだら出ちゃうらしいですよ」


ガクのフォローに対し、いやオレ別に出産でもなんでもないだろと言いそうになったが、この台詞は口の中で噛み潰しだ。


「パンツを描いてくれないか」


代替案である。


「ガクの絵は立体ではあるが、伸縮はしないからパンツを描いても実用性はないぞ。広げた瞬間にひび割れて崩壊する」


九雷子(クライシ)の助言が(ほとばし)る。


「じゃあウンコを無かったことにしたいから上書きしてくれ」


「上書きして見えなくはできるが、消すわけではないので実態としての人糞は君の下着の中に残ったままだぞ。」


九雷子(オマエ)に聞いてないんだが。

ていうか、じゃあどうしろってんだ。


「どうしろってんだ」


「パンツを渡すので着替えてきて下さい」


ガクは頭が良いのでオレの欲しがっている答えをくれる。


「こいつとパンツじゃ価値が釣り合わねーだろ」


騒動の火種に改名した方がいいんじゃないか拳突(コイツ)


「じゃあ糞漏らしたパンツのまま今日は泊まってくわ。よろしくな拳突(ケント)きゅん。」


「ガク、この不審者にパンツを用意してやってくれ」


「りょ」


「いやいいよ、オレは拳突(ケント)きゅんと寝るから」


「駄目だ。パンツを変えろ。そして明日になったら失せろ」


こうしてオレは無事、パンツを手に入れることに成功したのだった。

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