第三話 エミリア
初めての町に着いたとたん、俺は衛兵たちに四方八方から取り囲まれた。
バイクは乗っていない、関所同様バイクは押して歩いてきた、なのになぜか俺は衛兵に・・・いや、これは当たり前の状況か。見たこともない鉄の塊を初めて見た人間だ、もしも俺がその状況になれば警戒するのは当たり前のことだ。さて、どうやってこの場を切り抜けようか?
「どうしたお前たち!」
衛兵の向こう側からキレッキレの女性の声が聞こえる。たとえるならば性格のきついエリート女性上司のような感じだ。・・・正直俺は苦手のタイプだ。日本にいた時だって・・・いや、それは言うまい。
「ハッ!このものが何やら怪しいものを運んでいましたので拘束している次第です!」
「怪しいもの?」
そう言って衛兵のわきを抜けて顔を出したのは若い女性で、見た目は青銅色の輝く鎧、腰に付けた長剣は豪華な装飾が付けられており、ほかの衛兵とは一線をかいている。歳は20代前半だろうか?長い髪の毛を頭部の後ろでくくってある、いわゆるポニーテールだ。ほどいたら腰までありそうなしなやかに揺れる金色の馬の尻尾。顔は美少女といっても過言ではない。目はくりっと大きいのに目じりが少し吊り上がり、整った顔立ちをしている、日本に居たら間違いなくアイドルといてスカウトを受けていたに間違いない。
「私の名前はエミリア、この衛兵団の団長をしているものだ!おい、貴様。この塊はなんだ?」
いきなり、おい、貴様とは綺麗な顔から出していい言い方じゃねぇな。
「これはバイクという乗り物ですよ、人を乗せて道を走るだけの乗り物です。」
「嘘をつくな!このような乗り物見たことないぞ!」
「そりゃ・・・アーティファクトですから。」
俺はバイクをどのように説明しようか迷ったが、先ほど関所であの若い衛兵が言っていた言葉を使わせてもらった。
「なんだと!?これがアーティファクトだと?!貴様!嘘をつくのもたいがいにしろ!」
「さっきからきいてたら、貴様とか、俺が嘘を言っているとか。あんた少しは自分の言動に気をつけろよ。」
「なんだと!?」
「初対面の相手に、しかも丸腰の人間に槍を突き付けて、罵倒するのか?この町は?」
「あ、え?あ・・・たしかにそうだ・・・申し訳ない。」
「まぁいいさ。これは確かにアーティファクトだよ、こんなものこの世界で見たことないだろ?」
「え、えぇ・・・本当に乗り物なのか?」
「そうだよ。音が少し大きいから初めて見る人はびっくりすると思ってここまで押してきたんだ。」
「なんと・・・そうでしたか。申し訳ありませんでした、衛兵が騒いでいたのでてっきり事件だと思いあのような態度をとってしまいました。」
「もういいよ、わかってもらえたんだったださ、若いんだから今後は気を付けないとね。」
「え?あ・・・うん・・・」
ちょっと赤みを帯びた顔がまっすぐ俺を見つめていた。それはさておき、これでこの場所もバイクで移動できるな。
「動かすところを見せようか?」
「よいのか?アーティファクトといえば希少なものでこの世界でも発見例は数例しかないものだ。そんな貴重なものを見せていただけるなんて。」
「大丈夫だ、たださっきも言った通り音がでかいから少し離れてくれ。」
エミリアは周りにいた衛兵たちに下がるように声をかける。俺とエミリア、衛兵たちのやり取りを見に来た野次馬たちも俺とバイクに注目をする。何時ものごとくキーを回しエンジンをかける。大きい叫び声とともにエンジンのピストンが駆動する。周りを見ると何故かエミリアも衛兵も野次馬も見たこともなく、聞いたこともない音に何故か大歓声と拍手をしている。調子に乗って空ぶかしでさらなる歓声を誘ったのは内緒である。
「すごいな!なんというか、胸がはじけ飛ぶような興奮だ!そういえば名前を聞いていなかったな!」
「ん、あぁ俺はケンゴだ、カジ ケンゴ。よろしくな。」
「ケンゴか、数々の無礼を許してほしい。申し訳なかった。」
「だからもう気にするなって。」
「ところでこれはどうやって乗るものなんだ?ただ音をだすだけではないのだろう?」
「うむ、そうだな、もしよかったら乗ってみるか?」
「いいのか?!」
エミリアはさっきまでのきりっとした顔とは裏腹に、好奇心旺盛な少女の顔をのぞかせていた。
俺はエミリアに一通りの説明をして鎧を脱いだエミリアを後部座席に座らせた。この世界に来て初めての二人乗りだ、俺も安全を考慮して少しづつスロットルを開けていくことにした。
「すごいねケンゴ!わたし、風になった気分だよ!」
「おいおい、口調が変わって…こんなもんじゃないから。もっと早く走れる。」
「ほんとに!?馬よりも速く走れるの?!」
「もちろん!出してみるか!?」
「お願い!」
俺はエミリアにしっかり捕まるように指示する。すでに60キロのスピードで走っている、馬よりも早くって言われたので馬ってどれくらいのスピードで走るのか想像する。とりあえず俺は120キロまでスピードを上げて町の入り口まで戻った。町の入り口は先ほどよりも人口が増えており、俺が帰ってくるとまた大歓声が沸き上がる。なんだか癖になりそうだ。
「ケンゴ!すごいよ!私風になったよ!あんなに速く走ったの初めてだよ!馬よりも風よりも早いなんて生まれて初めての経験だよ!」
「エミリア、口調が戻ってないぞ。」
「あ・・・な、なかなかよかったぞ!」
周りにいる衛兵も町のみんなも大笑いして、その場が和やかになった。
「みんな!ケンゴのこの乗り物は・・・えっとアーティファクトのバイクというものらしい!今見てもらったとおり安全だ、今後町の中で見かけたからといって迷惑をかけたりするのはこのエミリアが禁止する!わかったな!」
こうして俺はエミリアのお陰で町に入ることができた、騒ぎを起こしたのもエミリアなんだけどね。
町に入り、宿を探しにバイクを低速で走らせる。さっきまで町の入り口にいた人は手を振ってきたり、追っかけてきたりしていた、いちいち止まって相手するのも面倒なので、手を軽く上げたりしてその場をやり過ごした。
少し街中を走っていると宿屋らしきものが見えてきた。木造の二階建てで入り口横に猫のマークの看板がぶら下がっている。建物横にバイクを止めて宿にはいろうとしたが、野次馬たちがすぐに集まってくる。これはこの先対策が必要だなと考えさせられそうになったが、問題はすぐに解決した。
「あ、もしかしてストレージに入るんじゃないか?」
俺はそう言ってモンスター400を試しにストレージに収納してみた。シュンッ!という音とともに俺のストレージにバイクのアイコンとモンスター400の表記がされた。うまくいったようだ、バイクがその場から消え去ったことも町の人たちはびっくりしていたが、バイクがなくなったことでみんな解散していった。
頃合いを見計らって俺はクロネコの看板の宿の入り口に入っていった。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「あ、はい。」
「一泊、銀貨3枚です。」
「銀貨三枚か…俺この金貨しか持ってないなぁ…」
俺は金貨を見せると店員は笑顔で大丈夫ですと対応してくれた。
この世界は銅貨、銀貨、金貨、大金貨で成り立っているらしい。銅貨は日本円で100円銀貨は1000円金貨は10000円といったところだ。大金貨はよくわからない扱いになっているらしい。普段流通するような代物ではないらしい。ちなみに俺は大金貨を20枚ほど持っていた。金貨が100枚この二つしかストレージになかった。ニャウスの仕業でしかない、いきなりこんな大金持たされてもな…なので必要最低限で使うことにした。
部屋に通された俺は受付にいた女性の店員さんに食事ができないか聞いてみる。店員さんは今から食事の用意をするので30分後にラウンジに降りてきてほしいと言われた。俺はそれに従うことにした。
案内された部屋はベットが一つとテーブルと椅子が一脚、実にシンプルな作りになっている、テレビやラジオ、PCだってない。でも、俺はたぶんこんな生活をこころのどこかで臨んでいたのかもしれない。
色々あったことをベットに横にながら思い返いしていた。
そろそろ30分が立つ頃だろうと思い、下のラウンジに降りると先ほどの店員さんが食事の用意を済ませ、俺が来るのを待っていたようだ。
「よかった、今呼びに行こうとしたところなんです。」
「そうだったんですね、ありがとう。」
俺は席に着くとテーブルの上にある料理を見る。見たこともない食材ではあるがとてもうまそうだ。
長い串に通された肉はよく焼かれており、肉汁がしたたり落ちている。においも香ばしい、何か香草を使って焼き上げているようだ。その隣にはスープが用意されている、色々な野菜と思われる葉や、大根のようなものが入っていた。びっくりしたのはパンが焼かれていたことだ、日本のパンとは似てもいないが間違いなくこれはパンだった。この世界の料理はいろんな意味で興味深い、キャンプや野宿をするのであればこういった野菜などの知識も持たなくてはいけないと思いながら俺は料理を味い、ラウンジを後にして自分の部屋にもどっていった。
(´;ω;`)「パンや・・・パンがおる・・・」




