第22話 怖い
今回はケンゴの心情がテーマです。おれつえぇぇぇぇ!ではないケンゴはいろいろ考えることがあるようです。
「そうだったんだ、君は異世界人ということになるのか・・・」
「まぁそういう事かな?向うで死んでこっちに転生した感じかな?」
「うむ・・・ならなおさらおねがいしたいかな。」
ナナはカウンターから出てきて俺の周りをくるくると回り、俺をまじまじと観察する。
なんだかちっと恥ずかしいな。
「で、俺に頼みたいことって何なんだ?」
「うん。私がエルフってことはわかったと思うんだけどね。この先の旅でエルフの里がいくつか出て来ると思うんだけど、もしも『レアリアの里』に行くことがあれば『マナ』というエルフにこの手紙を渡してほしいんだ。」
「ん~・・・自分で届けたらいいんじゃないか?もしかしたら行かない可能性もあるし。」
「そうだね、行かないときはそれはそれでいいんだ。今まで私のことを手紙なんて書いたこともないし、もしかしたら、もう死んでると思っているかもしれないし。」
ナナの顔が一瞬悲しみに染まる。なぜ今まで手紙をかかなかったのか、なぜ連絡を今まで取らなかったのか?俺の中でいろんな考えが浮かんでは消える。俺はどうしたらいい?この手紙を受け取るのか?その町は何処にあるのか?届けたほうがいいのか?
「そんなに悩まなくていいんだ、ただ道すがら通りすがったら程度に思っていてくれればいいよ。大した内容じゃないしね。」
俺はカウンターに地図を広げる。自分の通る道を確認してナナにレアリアの里の位置を聞くことにした。
「俺たちはマックリー王国に向かって旅をしているんだけど、レアリアの里ってどこにあるんだ?」
「えっとね、この辺かな?」
ナナの指さした場所はここからさほど遠くない場所でマックリー王国までの道のりから少しだけ外れた場所にあった。この場所なら問題ないな、少し寄り道になるけどいけない距離じゃない。
「わかった。行けたら渡しとくよ、マナさんだっけ?」
「ほんと、いけたらでいいからね。」
「わかったわかった、名物と特産品を教えてくれ。」
「え?・・・なんでそんなこと?」
俺は地図をしまいながらナナを見てハンドアックスを取り出す。
「そうだなぁ、のんびり行く旅は何処にでも行けるんだよ。予定なんてない、行先だってスター地点とゴール地点が決まっていれば、どこに行ったって最後にゴール地点に行けばいいんだよ。」
「う、うん?」
「だから、まぁそういうことだ。」
「ハンドアックスと何が関係あるのかわからないんだけどなんでそれだしたの?」
「こいつも同じだよ。キャンプだってどの道具を使うかなんて使ってみないと分からない、鉈がいいのかハンドアックスがいいのか、それともほかにもいいのがあるのか?でもそれは目的じゃない、キャンプを初めて無事帰れるか?が目的だ。まぁ細かい目的もあるけどな。料理を何作るとかどこでキャンプするとか。」
「う~ん、君が何を言ってるかわからないけど、要は行ってくれるってことでいいんだね?」
「おう!」
俺はナナから手紙を受け取ってストレージにしまう。無くしたら申し訳ないしな。それに誰かに見られることもないし。
「そか、まぁよくわからないけどお願いするね。じゃあこれ上げる。」
「なにこれ?」
ナナはウィンクしていいから持って行ってと無理やり渡された。箱?なのか手のひらサイズの小箱とでもいうのだろうか?細かな細工がされた銀色の小さな箱だ。
そのあとはもういいから早くいけと追い出されてしまった。
「まさか・・・あの伝承はケンゴのことなのかしら?」
ナナは一枚の巻物をカウンターに広げて中の伝承を読み上げる。
『その人物、異界より現れ村の危機を救う。異界の物を使いあらゆる厄災より人々を救う。』
「これがケンゴのことなら・・・マナ・・・」
巻物をクシャッと両手でつかみ、胸元に持ってくると『よし!』と気合を入れていつものナナに戻るのだった。
俺はナナと話した内容を二人に伝えた。レアリアの町に少し寄り道すると言ったら二人とも興奮していた。エルフの里はとても珍しく特殊な結界が張られていいるためエルフから直接場所を聞いて探すしかないらしい。まぁ日本にいた時に漫画や小説で読んだ内容だったり、ゲームでやった知識と同じようなものだなぁ、ファンタジーだなぁと思ったのは言うまでもない。
買うものも買ったし、準備も整ったので俺たちは女将さんとルルを呼んで最後の挨拶をすることにした。
ルルは最後は泣きっぱなしで女将さんにしがみ付きワンワンと泣いていた、女将さんも目じりに涙を浮かべながら必死にこらえていた。
「じゃあ俺たちはまた旅に戻りますね。帰りの時にまたよります、ルルもその時までお別れだけどいっぱいお土産話持ってくるから楽しみにしててな。」
「うん、絶対だよ。絶対に来てね。待ってるからね!」
こうして俺たちはナナミの村を後にした。
目的はある、マックリー王国に行くという目的だ。そこでミアの両親に会いに行くことだ、そのあとはまた初めの町に戻る予定だしな。
『ナビゲーターです、次の町『コスト村』までのナビゲーションをいたしますか?』
お?ナビさんが次の村にあんないしてくれるか・・・ん~そうだな。できれば一日二日はキャンプしたいな。川のそばでキャンプできるようなところがあったらナビしてくれないかな?
『かしこまりました、ここから300キロ地点の場所にキャンプ地を確認いたしましたそれでよろしいですか?』
OK!それで行こう!
『ではナビゲーションを開始いたします。』
そう言えばたしか、クライスって村が港町で海の魚が食べれるんだよな、楽しみだ。
俺は走りながらインカムで二人に今日の予定を話す。
「って感じでどうかな?今日と明日はキャンプしようかな~って。」
「私はいいですよ。また釣りができますね!」
「わたしもいいよ~!」
二人の許可も得たことだし、今回もたーっぷり楽しむぞ!
たわいない話をしながら俺は目的のキャンプ地まで順調に走っていく、道中少し休みを入れたりして旅を楽しんでいた。少しだけ気になったのはモンスターのことだ。平和な世界ってことだけどモンスターはいる、この街路樹を越えた先は危険な世界だという事を俺は先日知った。日本にモンスターなんていない、いや地球上のどの地域にもモンスターなんかいない。いるとすればゲームの中だ、モン◯ンとかファイナル◯タジー、ドラゴ◯クエスト、俺も何本もやってる。それで現実世界ではない、テレビ画面やパソコンモニター上でしか存在しない。正直怖い、リアルでそんなものに対峙することなんてなかった、でも今は・・・
「ケンゴさんどうしたんですか?難しい顔をして。」
「え?」
「そんなしかめっ面してると顔のしわが増えちゃうよケンゴ?おじいちゃんになりたいの?」
「は?え?ごめんそんな顔してた?ちょっと考え事してたんだ。」
俺たちは三人で分担して到着したばかりのキャンプ場でキャンプの準備をしていた。
俺はモンスターのことを考えてたびたび手が止まっていたようだ・・・二人に任せっきりとか申し訳ないな。ただ、今でも少し思うこともある。日本で生活していた時にいろんな本を読んでいた、ラノベもそうだしネット小説なんかもたくさん読んだ、漫画も読んだ。主に異世界に転生して特殊な力を手に入れたりしてその世界を生き延びるいわゆる異世界転生系の物を読み漁った。読んだ本は全てが面白く、憧れた。俺も剣と魔法のファンタージー世界に転生してチートスキルでバッチバチにバトルをなんて考えた。でも、実際に異世界に来てわかった。俺は・・・モンスターに出会うことが怖い。この世界でバイクはチートだナビだってチートだ、ストレージの中に在るものだってチートなものはたくさんある。魔力もある、魔法だって使えるのかもしれない。冒険者って職業だってあるくらいだし、モンスターがいるのは間違いないと思う。でもそれだけなんだ。
俺は・・・怖い。
「ケンゴさんまた手が止まってますけど大丈夫ですか?何かあったんですか?」
「今日のケンゴはどうしちゃったの?」
「あぁ・・・二人には話したほうがいいよな。ずっと考えていたんだ、先日のことを。」
「先日ですか?」
「何のこと?」
「俺、多分・・・いや、間違いなく怖いんだ。」
「怖いといいますと?」
「モンスター・・・」
「ん?」
「モンスターですか?」
「俺のいた世界にはモンスターなんて存在していなかったんだ、空想上の存在だったり本の中やゲームの中でしか見たことがないんだ。」
「平和な世界だって言ってましたもんね。」
「ゲームってなに?それも何か面白いやつなの?」
「ちょっとエミリア、ケンゴさんの話ちゃんと聞かないと。」
「ごめーん。」
「現実に、リアルにモンスターなんて見たことないし、しかも戦うなんてしたこともない。むしろ俺は戦えないんじゃないか?って思う。恐怖が勝って逃げ出すんじゃないかって…それが怖いんだ。戦うことも、二人を置いて逃げ出してしまうかもしれないと思うことも。」
そう言った俺を二人はそっと抱きしめてくれた、キャンプ準備も終わり夕方になり空も夕焼けから夜空に代わる。目の前の焚火がパチパチと音をたたて燃えていく。
「大丈夫ですよ、私もいるしエミリアもいるし。」
「そうだぞケンゴ!それに怖いなら私がケンゴを鍛えれないいんじゃん!」
「え!?なんでそうなるの!?」
「だってこの間武器屋でけんかってたじゃん。」
「いや、あれはかったというよりも。」
「私の指導は厳しいからな!ちゃんとついてくるんだぞ!わかったか!?」
「エミリアが衛兵団にいたころに戻ってる・・・。」
「ケンゴさん、無事に帰ってきてくださいね。」
「ちょ!ミア縁起悪いこと言わないで!」
こうして俺はエミリアに鍛えれれることになった・・・どうしよう。
昼間に釣った魚が焚火の火に照らされていい感じに焼けた、この世界の魚の味にも、もう慣れたもんだ。とにかく俺は二人を守れるくらいには強くなろうと決めた。といってもこの世界もそんなに危険なことはないはずだしそこそこ頑張ろうと思う。
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