第9話 スタート
ついにレースの始まりです。
ケンゴもバメルもやる気満々!
『レースバトルの時間だ!みんな準備はいいか?!今回のレースバトルはこの町がスタート地点になり関所が折り返し地点だ!その後はこの町に早く戻ってきた方の勝利だ!約200キロの道のりだ山あり谷あり森あり湖ありのレースだ!なお50キロ地点に魔法師を配置してどうなっているかを判断する、ラストの50キロからゴールまでは魔法師が魔術によって常に状況をこのスクリーンに映し出してくれるぞ!』
コラムの解説で町のみんなが歓声を上げる。
『さらに!この勝負にグレン氏が勝てばクロネコ亭のミアちゃんを嫁にするこのになっている!ミアちゃん可愛いもんな~!うらやましいな~!どうすんだケンゴ?おとなしくミアちゃんを渡すのか?!ミアちゃんの人生はお前にかかってるんだぞ!?どうすんだコノヤロー!!』
煽るなぁ~・・・ま、そこまで言われたって最初から俺は負ける気がない。かといってグレンがどんな手を使ってくるかはわからない。ん~どうするかなぁ。
「ケンゴ殿、先行っておくが拙者は卑怯な手を使うつもりはない。だが、グレン殿は違うようだ、どうか油断なさらぬようお気をつけくだされ。」
「敵にそんなことを言っていいんですか?」
「敵とか味方とかではなく、拙者は卑怯者になりたくないのだ。それがたとえ勝つと分かっている勝負でもだ。」
「ふふ・・・」
「なにがおかしいのだケンゴ殿?」
「勝つと分かっている勝負ですか、ならこの勝負一切手を抜けませんね。」
「手を抜かなければ貴公は拙者に勝てると?」
「そうですねー、まぁ負ける気はしませんね。」
「ならば全力でお相手いたす!」
「こちらこそ!!」
俺もバメルも気合を入れてスタートの合図を待つ。
周りは歓声やらなんやあらでものすごくうるさいのになんだかとても静かに感じる。まるでこの場に俺しかいないようだ、バイクのエンジン音と振動が体に伝わる。今にも早く走らせろと言わんばかりだ。グランドホースがどれくらいのスピードかは知らないがそんなことはどうでもいい、ぶっちゃけ言うと俺はスピード狂だ、何よりも早く自分の出せる最速を追求したい。だが日本では速度制限がある、道路交通法だってある、しかしこの世界にはそれがない、バメルも全力を出すなら俺もそれに応えたい。
『さぁ!スタートの時間だ!みんないっしょにカウントダウンだ!いくぞー!5!4!3!2!1!スタートだ!』
ついに始まったスピードバトル、合図と同時にバメルも俺も走り出す。先陣を切ったのはバメルだった初速がとんでもなく速い、ミアとエミリアが連れてきたグランドホースなんて目でもない。120キロ出しているのに追いつくのでやっとだ。でもこっちはまだ本気じゃない、本気でスロットルをまわせば・・・
『実況のココです。ただいまものすごいスピードで走っています!今二人はギザ渓谷に差し掛かる手前まで来ています。この先ギザ渓谷、マルス湖、ビオ渓谷、ガム関所を通り折り返しとなります!所々で中継をはさんで皆さんにお送りします。』
俺達には実況は聞こえていない、バメルはものすごいスピードで走っているこんなすごい馬がいるのか。俺だって負けない、スロットルを少しずつ解放していく。120キロから徐々に徐々にスピードを上げていくすでに150キロを超えている。道はスキルの陰で問題なくグリップしている、バメルのほうは最初に勝負を決めるつもりなのかスピードを落とすつもりはないようだ。ギザ渓谷に入り俺はバメルを抜く、スピード差があるためどんどん引き離していく、俺は更にスピードを上げる。受ける風、ハンドルから伝わるバイクの振動、加速され過ぎ去っていく景色。日本じゃレース場でしか体験できない・・・はず。俺?内緒の話だが、ある高速道路で260キロまで出したことがあるが内緒の話だ。
相手のグランドホースもスピードを上げるが遥か後方に位置しているためバックミラーで確認するとゴマ粒のようにしか見えない。ギザ渓谷の中腹に差し掛かると前方に人がいる、こんなの聞いていないぞ?何かの仕掛けか?
「たすけて!ママがけがしたの!」
幼い子供が叫んでいる。罠・・・そう頭によぎる、グレンの姑息な罠かもしれない。でも・・・もしかしたら本当かもしれない。本当にこの子の母親がけがしているのかもしれない。というか150キロで走ってるのに声が聞こえるって・・・・どんどん近づく、もう時間もない、どうする。
「大丈夫?ママは何処だい?」
「こっち!岩に挟まってるの!」
「わかった!今助ける!」
俺は近くにあった棒でテコの原理を使い母親を岩から救い出す。その間にバメルが俺の後ろを通過した、一言だけ残して。
「大変すみませんでした!おかげで助かりました。」
「いえ、大丈夫なら僕は先を急ぎますので。」
「あの!気を付けてくださいこの先に・・・グレン様の用意した罠があります。」
「え?」
「私たち、クロネコ亭のミアさんにお世話になったもので。ですが、グレン様につかまってココに連れてこられたんです。そしたら落石で…あの!どんなことがあっても勝ってください!おねがいします!」
「わかりました。ママと一緒に気を付けて帰るんだよ。」
「うん!ママを助けてくれてありがとう!お兄ちゃん頑張ってね!」
俺はまたバイクにまたがると親子に手を振る、さらに気合が入る俺は猛スピードでバメルを追いかける。親子の娘のほうは俺が見えなくなるまで手を振ってくれていた。ミアやエミリアだけじゃない、俺を応援してくれてるのはほかにもいる。ミアの運命が俺にかかっているのはみんなわかっている、だったら俺は負けれない絶対に負けたくない。
ギザ渓谷を抜けた俺はマルス湖に入る、グレンの仕掛けた罠は今のところ何もない、だがいつどこに仕掛けられているかはわからない、気を抜けない状態だ。バメルはまだ見えない、グランドホースはそんなにスタミナがあるのか?そんな疑問さえ浮かんでくる。マルス湖の中腹に差し掛かるとあの日三人でキャンプをした場所に差し掛かった。
『いろんなところに行きましょ!ケンゴさんの行ってみたいところ見たいもの全部!』
『そうだよケンゴ!旅はこれからなんだから!』
二人の楽しそうな声が聞こえてくるようだ・・・
『さぁ試合はマルス湖に差し掛かります、前を走っているバメルさんの姿は確認できませんが、ケンゴさんはものすごいスピードでマルス湖の横を走り抜けていきます!こんなスピードで走る乗り物は今まで見たことがありません!』
実況の声は俺には聞こえない、だが考えることは同じだ。バメルの姿が見えない、いくら早い馬といってもこっちは直線と緩やかなカーブしかない上にスピードも180キロは出している、何かあったのか?いや、グレンの罠か?って姿が見えないわなってなんだよ。とか考えていると前に突然バメルのグランドホースが現れた。ついにとらえた!俺はさらにスロットルを開放する、加速されたバイクはバメルにドンドン近づいていく、捉えた!と思った時に俺はバメルに違和感を感じた。
バメルは俺の出すスピードに驚いている、異世界の馬だといってもバイクには勝てないと俺は確信している。相手は生き物だどんだけ早く走れてもいつかは疲れてスピードだって落ちてくるはず、落ちてくるはずなのにバメルの乗る馬は疲れが一切意味受けられない。スピードも相変わらず速い、ドーピングや俺の知らない技術か何かがこの世界にはあるのだろうか?これは油断していられない、知らないという事はとても恐ろしいものだからだ。ほんの一瞬だがバメルの横に並ぶとその瞬間に違和感の正体がうっすらとわかった、違和感・・・俺の気のせいかもしれない、グランドホースの模様が少し違う気がした。はっきりとは俺お覚えていない、ただ少し馬の目の部分にある茶色の模様が少し変わっている気がした。バメルの馬をしっかり見ていなかった俺にはその違いが判らない。トップスピードも速くなっている気がする、すれ違いざまだったしそれすらわからない。すでにバメルは後方に位置している。マルス湖を抜けた俺はすでにビオ渓谷に突入している、この世界の人間が普通にここまでくるとすると・・・二日はかかるらしいけどね、まぁバイクだしこの世界で言えばチートだし、ガソリンいらないし、魔力だし、多少のことなら何とかなるし。
ビオ渓谷中服でグレンは部下に怒鳴っていた。
「同うことだ!なぜあいつが先行しているんだ!バメルは何をしている!せっかくうまくグランドホースを交換できたのに!」
「それが、ケンゴの乗り物が思ったより早く我々の作戦がうまく働かないのです。」
「そんなこと知ったことか!このバトルは僕が勝たなければならないんだ!」
「しかし・・・」
「うるさい!こうなったらあいつの乗り物ごとこの渓谷で壊せばいいんだ!」
「お待ちくださいグレン様!それはやりすぎです!」
「僕に指図するな!これであいつはおしまいだ!」
グレンは魔法で大岩をV字になっている渓谷の崖の上に作り出すと魔力切れでふらふらになりながらも部下に指示をする。ケンゴが通過し関所から折り返ししてきたタイミングで大岩を落とすようにと。更に魔法でバメルが通れる分の隙間だけを開けケンゴを岩でつぶし、バメルの勝利を確実のものにしろというとグレンは気絶すした。
そんな作戦を知らない俺は渓谷を抜け折り返し地点のガム関所にはいり、後半戦に向けてUターンをした。
お読みいただきありがとうございます。
気に入っていただけましたら、下にあります評価☆☆☆☆☆を付けていただけると嬉しいです。
ブックマークもよろしくお願いいたします!