第一話 バイク乗り
初めましてよろしくお願いいたします。
深夜遅く、俺は仕事の帰りに長野の峠道をバイクではしっていた。
東京から2時間、急な仕事のトラブルによって急遽ではあったが俺宛に協力要請が来た。
車で行ことも考えたがすぐに終わるトラブルだったし、たまには風に当たりながら小旅行気分でツーリングを楽しむのもよいかな?と思いバイクで行くことにした。そんな考えが間違っていたんだろう。トラブルは厄介なトラブルですぐ終わるわけもなく、最終的に処理できたのは着いてから4時間後になった。
俺の名前は「鍛冶 研吾」バイク好きのフリーランサーだ。
今回は、旅だし観光しながら、あわよくば趣味のキャンプをと思いバイクに一式を積み込み、出発したのは朝の7時だった。トラブルなんだからさっさといけよと言われそうだが、相手先の会社から時間指定されており夕方出ないと話ができないので16時に来てほしいとのことだった。幸いにもその日から3日間は休日だったので準備する余裕はあった。もちろん仕事のトラブル解決で行くのだから、パソコンも持ったしスマホも十分に充電してあるし最悪充電がなくなってもバイクに取り付けたUSB電源に差し込めば、バッテリーの電気を使ってスマホだって充電ができる。キャンプ道具の中には緊急用蓄電池として小型バッテリーも積んである、これでパソコンだって充電できる、更に小型のモバイルプリンターもあるのでどこでだって仕事は問題なくできる。フリーランスの特権である。もちろん仕事はちゃんとしてるしな。俺の仕事はドローンを使って空撮をすることだ、田舎町、都会の風景、断崖絶壁、どんなとこでもドローンで飛んでドローンで撮影する。夢だった写真家のようなことができる仕事だ。
今回のトラブルは以前撮影したデータと編集したものがすべて消えたという事だった。自宅から同じ素材を使って再編集してデータとして送れば特に問題ないのだが、その素材に更に地元アイドルのイベントシーンを組み込んでほしいという事だった。その素材が届くのが夕方という事でそんな時間に指定されたのだ。編集素材はある程度そろっていたのである程度以前と同じように編集してPCにデータとして入れてきたのでそんなにかからないで編集作業は終わるはずだった。
朝6時にアラームを付けていた俺はアラームが鳴ったことで目が覚めた。
「ふぁ・・・あぁ。もう時間か・・・。」
寝覚めはいいほうだと自分で思っている。歯を磨き、朝食を食べ、長野に向かうべくバイクを止めている駐車場に足を運ぶ、家から大体5分くらいのところに借りている雨ざらしのバイク駐車場だ。
東京の駐車場はただバイクを止めるだけのスペースしかない、それ以上のスペースをと思った場合は基本車の駐車場を借りるしかない。ガレージなんて持ってるのは金持ちか、金持ちの跡取りとかそんなやつさ。俺だってガレージほしいよ。
俺のバイクはDUCATIモンスター400だ、昔から憧れていた名車中の名車だと俺は思っている。たまたまネットでバイクほしーなーとオークションサイトを見ていたら格安で販売されていた。バイクのエンジン始動動画なんかも乗っていてこれは行ける!と思いなけなしの貯金をかき集めて即決で購入した一台だ。
埼玉のお口のバイク屋だったので自分で仮ナンバーを区役所で借りて、自分で取りに行った。だってさ、せっかくなら乗りたいし、状態も確認したい、それで自走を選んだのだが・・・あれ?なんかおかし・・・い?結局修理だなんだかんだでかなりかかった。・・・安さには安いだけの理由があるのさ、それはまた今度話そう。
バイクのエンジンに火を入れるためにセルを使ってエンジンに火をつける。キュルルルっとセルが回りグォンっという音とともにエンジンが気合を入れて動き出す。この瞬間が俺は一番好きだ。バイクに命を自ら吹き込むこの瞬間、走っている時も好きだが、それよりも俺はこの瞬間が一番好きだ。
「さて、行きますか。」
俺のバイクにはリア部分にGIVIのハードタイプのパニアケースとTANAXのソフトバックを積んでいる、その中に仕事道具、まぁドローンとPCとタブレット、それ以外にキャンプ道具が入っている。こうして俺は首都高に向かって走り出す。
長野までの長い道のりは途中でPAやSAなどを中継したりして向かっていった。
最近のバイク用品は昔に比べて充実している。フルフェイスに取り付けたインカムからスマホの音楽が聴けたり、ラジオだって聞ける。誰かと一緒にバイクでツーリング行くならこのインカムで会話だって何不自由なくできる。ちょっと前までは手信号ではないが何か発見したときは軽くクラクションを鳴らして相手が確認したら手で指さすか、一度止まってそこで話すっていうのが主流だったのに、すごいよなぁ。
東京から千葉を抜けて関越道をひたすら走り、藤岡から上信越に入り長野となる。今回もその道で走っていく、なぜなら俺には群馬県に親戚がいるのでこの道はよく通っていくみちのりだ、上信越にはいかないで前橋まで行くんだけどね。話はそれるけど、この関越道の景色ってすげーいいのよ。都内から離れるにつれて田舎道に入っていくんだ、信号がない高速道路で風を浴びながらビル群から田んぼや畑、さらには巨大な山々、それに沿って流れる川や一般道。自分が普段見ていない景色の中で自分の感覚をいろいろ刺激してくれる。都内の道を走っていてもビル、人、車、嫌いではないけれどぎゅうぎゅう詰めのお弁当箱の中の迷路を気を付けて気を付けて走っているみたいに感じる。その点こういった山々や畑、田んぼ道を走るのは都会から来たからならではの感覚何だろうがいろいろな発見をする。四季の移り変わり、川のせせらぎの音、鳥の鳴き声、俺は自然が大好きだ。
「ふぅ・・・やっぱこれだよな。」
フルフェイスの中で俺は誰に言うわけでもなく、つぶやいた。
車という個室の中でナビを見ながら周りの景色を見るのもいいが、やはりこの風を感じる感覚はバイクでしか体験できない。
埼玉から群馬県に入り上里のSAで少し休憩する。
バイクの駐車スペースにバイクを止めると、ほかのライダーたちがこちらを見た。
まぁ、そうだろうな、みんな高価なライダースジャケットやブーツ、グローブを身に着けてきめっきめなスタイルでいろんなバイクに乗っている。
ヤマハMTー25やスズキGSX250R、ジクサー250、どれもこれも新車の現行モデルだ。
中にはハーレーダビッドソン、BMW、DUCATIの大型などなど最近はYouTubeのお陰なのかバイク乗りが増えている。
それに比べて俺はジーパンにブーツ、上はTシャツに長袖のジャケットを羽織っているだけの何ともラフなスタイルだ。ちなみに手袋は滑り止めのゴム付き軍手を愛用している。これはグローブが買えないからじゃない、軍手はものすごくいろんなことに役に立つからだ、俺は昔からこのスタイルでバイクに乗っている。いろんなスタイルで乗っている人がいるんだ、俺はこれでいい。
前に、そんな格好で走るのは危ないと言われたことがある、俺もそれはわかっている。だが、自分が今まで走ってきたり、事故したりしてきた経験上、俺はスタイルを崩すつもりはない。もしこれで事故をして命を落としたとしても俺は後悔しない。これでバイクに乗るのが好きだからこうしているんだ。だから俺は他人にも強要しないし、仮にパンツ一枚でバイクに乗っている人間がいたとしても俺は反論しない。それだけその恰好でバイクに乗るのが好きなのだから。服装だってバイクの一部だと俺は思うんだ。
長野について一通り観光を終わらせ、時間になり相手の会社に行く。
出迎えてくれたのは営業部の新人の山田君だった。
「あ!鍛冶さん!バイクで来たんっすね!かっこいいですねー!」
「あ、あぁ今回は休日も兼ねてるからさ。データはちゃんと持ってきてるから安心してよ。」
「これなんてバイクなんですか?」
「ん?DUCATIのモンスター400っていうんだ。もう古いバイクだよ。」
「へー!僕も今教習所通ってバイクの免許取ってるんですよ。いいなー、早く乗りたいなー。」
そんな話をしながら作業部屋に通された。
中には50台の山本さんが作業をしていた。
「おう、鍛冶か。すまんなわざわざ来てくれて。」
「だいじょぶっすよ、ちゃっちゃと終わらせましょ。」
「そのバックで来たってことは、お前まだあの腐ったバイクに乗ってるのか?」
「腐ってませんよ!」
「はは、知ってるよ、大事にしてるもんな。良いバイクだよ、お前のバイク。腐ってるけどな。」
「もうそれいいっすよ。さっさとやっちゃいましょう。」
それから四時間ご作業はおわり、山本さんに飯に誘われてバイク談議に花が咲き山田君も興奮して結局帰るのが23時になってしまった。キャンプ場の予約なんて入れてないし、そこらへんに勝手にテントは張れないし、とか考えながら峠道を走っていたんだ・・・
慣れていない道だし、スピードは出していない。スマホのナビでゆっくりゆっくり走っていたんだ。
カーブに差し掛かり車体を傾ける、いつもと同じ曲がり方、違ったのはその先に猫が横たわっていたこと。
このままだと引いていてしまうと思った俺は、状態を無理やり起こして猫を回避した。そしてガードレールにぶち当たりそのまま崖から落ちた。
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誤字脱字ありますので読みにくいと思われますがよろしくお願いいたします。