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ペルグランデ・オンライン  作者: リアン
暗雲広がる世界より
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お年玉

 

「ねぇ、佐藤くん、ペルグランデ・オンラインって知ってる?」


「えーなに? 儀間っちゲームとかやるの?」


 学校が終わり、帰ろうとした時に佐藤太郎に声を掛けられた。帰る方向が同じらしく、途中まで一緒に帰ることになったのだ。男子と一緒に下校なんて人生の一大イベントかと思いきや、佐藤太郎の人懐っこい性格からか、全くもって緊張はしなかった。


(隣の家のゴールデン・レトリバーに似てるんだよね。)


「知ってるも何もクラスのほとんどのやつがやってるよ」


「え、そうなの!? 佐藤くんも?」


「やってるやってる、とにかく色んなことができてさ、生活系のコンテンツなんかも充実してるし、俺なんて自分の畑で野菜作ってるんだぜ、これがまた面白くてさ、充実感っていうの?」


(お前が緑化委員立候補しろよ!)


「今度クラスでペルグラやってるメンバーでゲーム内で会おうって言ってたぜ、オフ会ならぬオン会ってやつ?」


「へー、楽しそう」


「俺は行かないけどね」


「なんで?」


「んー、外木が主催なんだけどさ、集まって誰かをPKするってコソコソ話てたの聞いちゃって、俺そういうの好きじゃないっていうか、集まるだけならまぁいいんだけど」


「PK?」


「プレイヤーキルの略、プレイヤーがプレイヤーを攻撃して殺すのさ、まぁゲーム内で死んでも、大したペナルティは無いんだけどね。」



 自分の体温が少し下がった気がした。

 ……繋がった。憶測でしかない。ただ確信はある。何もかもタイミングが良すぎる。


「それ、いつやるの?オン会?だっけ」


「え~と、再来週の週末って言ってたかな」


 佐藤太郎にペルグランデ・オンラインについて根掘り葉掘り聞いて、別れたあと、私は走って家に帰った。


 あの外木さんのことだ、他の人経由で原田さんをペルグランデ・オンラインに誘い、ゲームの中でリンチにする気だ。ペナルティがない? そんなの関係ない、心の傷はきっと消えない。


「なんとかしなくちゃ、ありがとう、佐藤太郎!」

 と、隣の家の垣根から顔を出したゴールデン・レトリバーにお礼を言って、二階の自分の部屋へ駆けあがる。


 まず必要なものは、ペルグランデ・オンラインのソフトとフルダイブ対応のヘッド・ギアだ。

 ヘッド・ギア型以外にもフルフェイス型や、リクライニングシートと一体になっているカプセル型なんかもあるが、ヘッドギア型が一番安価だ。いまやフルダイブ技術は一家に一台と言わないまでも、ほとんどの家庭で持っているものだ。

 フルダイブでネットショッピングをすれば本物さながらのものを手に取って見ることができるし、フルダイブ専用のテレビ番組さえある。だが儀間家はその辺だいぶ遅れていた。


「ペルグランデ・オンラインのソフトが9800円、ヘッドギアが……安くても89000円!?」

 スマホで値段とゲームショップの位置を調べる。


 机の一番し下の引き出しの裏、ガムテープでガチガチに固定してあるチョコレートが入っていた四角い缶がある。ガムテープを乱雑に引きはがし、蓋を開けると、逆さにして中身を床にぶちまけた。

 子供のころからお年玉を使わずに貯めていた。

 親戚から貰ったお年玉は「おっきくなるまでお母さんが預かっておくからね」などと言う巧妙な詐欺の手口を逃れ、ほとんど使わず、ダンサー・イン・ザ・〇ークの如くチョコレートの空き缶に貯めこんでいたのだ。

 ほしいものは漫画くらいしかなかったので、月々のお小遣いで足りていたって言うのもある。


「97300円・・・・」


 手持ちのお金と合わせればギリギリ足りる! だけど、交通費の分が足りない。一番近いゲームショップが三駅先、お母さんもお父さんもまだ帰っていない。


 自転車にまたがり、全力でこいだ。








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