ゲーム!?
原田さんは朝登校すると私に消え入りそうな小さな声で私に挨拶をする。
「おはよう…」
返す勇気がない。外木さんが睨みつけている。次の標的になるのが怖いのだ。情けない、情けない、情けない。
しかし! ふふふふふっ! 落書きはもうない! 私が朝5時に登校して消している。
通販好きの母親から貰った『なんか分からないけどすごい繊維でできている雑巾』、飛行機の整備士をしている父親から貰った『なんかわからないけど油性ペンも一拭きで消える溶剤』MEKだとかなんだとか、危険物がどうのこうの言ってたけど、まぁこれがよく消える。
原田さんの机の色が日に日に薄くなっているのは気のせいだろう。
私は原田さんが気になって仕方なかった。
休み時間は俯いてスマホをいじっている。昼休みは一人で自席でお弁当を食べている。
いやでも、ほんとにかわいいな。幼い顔付きに落ち着いた茶色のショートカット、体は華奢だが出てるとこは出てる。体育館裏で男子共が行列作って告白しててもおかしくない。芸能事務所のスカウトさーん、早くあの子を見つけてあげて! あ、因みに私もお昼ご飯は一人でっす!
ある日、原田さんが数学の授業中、教科書を机に立て、スマホを隠すように見ていた。
スマホをいじるのは孤独を紛らわすのに最適な手段ではあるものの、授業中まで? 熱心に何を見ているのだろうか?数学の石志 重吾先生は学年主任でもあり、授業中のスマホなんてばれたら没収じゃ済まない可能性も。気になる……。
私は長年のボッチ生活で身に着けた特技を発動、視点は黒板をこれでもかと凝視しつつも周辺視野に意識を集中し覗き見る!
(クワッ!@@)
眼鏡かけてますけど、これ伊達ですから。視力2.0ですから。眼鏡キャラは目立たないための必須アイテムなのですよ。
(クワッ!@@)
石志(んんんっ! 視線が熱い!? 今日の儀間はやる気が違う!?)
「じゃあ、この問題を……儀間」
「わかりません!」
「立ってろ」
情報は取れた。立ったことで視点が高くなり、より見やすくなった。
前の席の佐藤太郎がなぜか頭を絶え間なく横に揺らしていてすごく邪魔だったが、確かに見えた。
『ペルグランデ・オンライン』をカートに入れていた。