行列にはとりあえず並んでしまうタイプ
「みんな準備を! 出発は1時間後だ。火属性対策を忘れるな!」
「おおー!」
ここ始まりの街ベインに似つかわしくない、いかにも高レベルプレイヤーの集団が集まっていた。ベインの南、森林を抜けた先にある火山地帯で、ペルグランデ・オンライン初の『竜種』のモンスターが発見されたのだ。
その討伐に向け、有名な大規模ギルド『アイゼン・フェッセン』の精鋭が準備を進めていた。
ナギはそのころ、同じくベインにて職業『テイマー』になるため、神殿へと足を運んでいた。
職業は3つまで選択することができ、初期に選んだ職業の魔法使いや、このテイマー等は基本的な職業なので、神殿に行き、僅かなお金と簡単な儀式でなることができる。どちらも人気の職業だ。
ナギはどんな可愛いモンスターをテイムしようか、儀式の最中から楽しみで仕方なかった。
「汝、新たなる道を歩むべく、テイマーの所業をなすことに相違ないか?」
「猫より犬派です。……じゃなかった! はい!」
「よろしい。では汝にテイマーとしての祝福を授けよう」
「ありがとうございます!」
無事テイマーを第2の職業としたナギは、テイムに必要なエサ系のアイテム、それとテイムしたモンスターに装備させることでアイテムとは別のモンスターインベントリに格納することができるアクセサリを買った。モンスターアクセサリは指輪、腕輪、髪飾りなど様々な種類があったが、赤い宝石が一つ埋め込んであるアンクレットに一目惚れし、少しだけ他のより高かったがそれにした。
「自分の装備は後回しかな」
財布が底をついたものの、良い買い物ができたと満足気に森に戻っていった。
「うーん、なかなか可愛いモンスターがいないなぁ……。敵も強くなってきたしそろそろ戻ろうかな」
森林でモンスターを倒しつつ、テイムするモンスターを吟味していたナギだったが、なかなか気に入るモンスターが見つからず、大分奥まできてしまった。もう街に戻ってログアウトしようかと考えていた矢先だった。
街の方角から30人はいるだろうプレイヤーが隊列を成して行進してきた。
「隊列を崩すな! 目的地は直ぐそこだ!」
何事だろうかと隊列の後ろの方の人に話しかけた。
「あの、どこへ行くんですか?」
「おい、隊列を崩すな、アイゼン隊長に怒られるぞ! こういうロールプレイに五月蝿いんだから、あの人」
「え? あ、はい、スミマセン」
訳も分からないまま、取り敢えず隊列の一番後ろに並び、周りに習って行進を始めた。
行進を始めて直ぐに森林から抜け、辺りは一変、ゴロゴロと黄土色の岩が転がる山道となっていった。ちらほらと出現するモンスターも強そうであるが、先頭集団が問題なく蹴散らしていく。ナギは小学校の運動会を思い出し、少し行進が楽しくなっていた。
しばらく歩くと一行は隊列を変え、大きな岩と岩の隙間に1列になって入っていく。
「隊長、この先です」
「よし。準備はいいか! 後衛隊、バフを掛けろ!」
自分の並んでいた後方の小隊の面々が何やら呪文を唱え、前衛部隊を強化していく。
「さぁ、気合いを入れろ! いくぞ!」
「おおおお!」
「おー!」
全員が揃って雄叫びを上げ、岩山の割れ目の奥へと走る! ナギもそれに習い後ろを付いていくと、急に開けた明るい場所へ出た。
広い空間が広がっており、上は吹き抜けになっていて遠くに空が見えている。
「グオオオオオオオオオオオ!」
「いたぞ、ドラゴンだ!」
そこには真っ赤な、どこかの物語で見たそのものの巨大なドラゴンが、威風堂々と鎮座し、こちらを睨み付けている。
「前衛隊前へ! いくぞおおおお!」
「おおおおおおおお!」
「おおおおお?」