ネクロマンサー
『シークレットJOB ネクロマンサー』
ゲルニールへと戻り、30まで上がったレベルのステータスポイントを振っていると、新たにJOBを獲得していたことに気づいた。
「そういえば、屠るものとの戦闘中になにかアナウンスが聞こえたけど、これかぁ」
屠るものを倒した後ではないことを振り返ると、屠るものを倒すことが取得条件でないことは確かだ。
しかし、それ以外に何か特別なことをやったか思い返してみるも、何も浮かばない。
「そんで、どんな職業かな…………、」
職業の説明欄を読む。
「ほほ、…………ほほほほほほほ! これは使える! こと私の目的には最適かもしれない!」
悪い笑みを浮かべ、その日はログアウトした。
もう期日はすぐそこまで迫っていた。
金曜日の昼休み、佐藤太郎はいつもチャイムと共に購買に走っていく。
私は例の集会について聞くため、ボッチスキル『足音を消す』を発動し、佐藤太郎のあとを追った。
購買のパンは行列ができている。いつもこうなのだろうか……。
「うおおおおお! プリンパンゲットだ~~~っ!」
佐藤太郎が喚起の声を上げて人だかりから飛び出てきた。
高校生にもなってスキップする人を初めて見た。
「佐藤君、佐藤君」
「お? なんだ儀間っち、プリンパンはやらねーぞ!」
「イラナイデス……」
終業のチャイムが鳴ると私は鞄を抱えて走った。
迂闊だった。
佐藤太郎からの情報はこうだ。
日時は今日、金曜日の20時から。
場所は始まりの町から東、『聖都ルクレディア』の西側酒場前の噴水。
週末だと言っていたのでてっきり土曜か日曜だと思い込んでいた。
そして何よりまずいのが、私はゲルニールしか行ったことがない。
今から『始まりの町ベイン』へ行って、さらに東の町まで行かなくてはならない。
「うぅ~~、間に合え!」
家に着き、二階の自分の部屋へ駆けあがると、流れる汗も気にせずペルグランデ・オンラインを起動した。
「準備はできてる。あとは行くだけだ………」
ロード時間がいつもより長く感じる。
「早く早く……!」
ゲルニールに降り立った私は、全力で南東にあるであろう始まりの町ベインへと走った。