ホラーゲーム!?
『ペルグランデ・オンラインへようこそ!それでは、果てしなき世界、果てしなき冒険をどうぞお楽しみください』
チュートリアルとキャラメイキングを終え、ゲーム初心者の私は、リリースからここ数か月で登録者数が世界最大となったフルダイブ型オープンワールドMMORPG『ペルグランデ・オンライン』の世界へと降り立った。
宇宙まで透けるような青空……は、ない。
吹き抜ける風、遥かに望む地平線……も、ない。
空はどんより暗く、低い雲に覆われ、今にも降り出しそうな雲に雷鳴が轟く。
辺りは、……そう、墓地だ。錆びてひしゃげた黒い柵に区分けされ、おびただしい数の十字架が並んでいる。
「あれあれ?ゲームのパッケージとは随分様子が……」
爽やかな草原に立ち、剣を掲げる銀髪の青年。そんなゲームのパッケージとのギャップに戸惑い辺りを見回すと、ちょうど後ろにいた何かと目があった。
「え?」
『……?』
「ぉ、お、おおおおおおおおわあああああああっ!!」
『アアアアアアアアアッ!』
全力で逃げた!我を忘れて走った!
「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ!」
一瞬人だと思ったそれは、人の形こそ成しえど、光沢のない灰色の肌に、眼球を大きく覗かせ、不揃いの歯の間からは粘り気のある黄色い液体を垂らしていた。所謂ゾンビである。
気づけば随分走ったが、景色に変わりはない。屋根の天辺に欠けた十字架が立つ、かつては教会だったであろう廃れた建物に思わず逃げ込んだ。
「ハァ、ハァ、ハァ、……ハァ、びっくりしたぁ、ホラーゲーム!?」
ゲームで上がるはずのない息を整える。
「フゥ」と一息吐き背筋を伸ばす。
何かを思い出したように天を仰ぎ、拳を握りしめ、決意を口にした。
「こんなことで驚いている場合じゃない! 強くならなきゃ!あの子を守れるように……」
何かが足を掴んだ。
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ……っ!」
走った。