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プロローグ 目覚めるとイケメンでした

 皆さんこんにちは。俺の名前は尾崎 龍平(おざき りゅうへい)何処にでも居る普通の高校生だ。

 顔面偏差値は中の下。は自称で、実際は下の上か下手すりゃ下の中位。しかも小学校の頃虐めにあって居たので人と話そうとするとキョドると言う悪癖持ち。まあ、中学3年間で大分改善されたから今は同性と話す分には問題無い。異性は別の意味で緊張する。

 まあ、そんな俺だから、高校生になってからも灰色の青春を謳歌していた。

 え?何で過去形かって?今は違うからだよ。昨日ベッドに入って、何時もの様に就寝し、今目が覚めると、知らない天井があった!え!?どゆこと!!一瞬、「知らない天井だ」とか言った方が良いのかとも思ったけど止めておいた。

 なぜかって?天井ですら無いからだよ!!今俺が見上げてるのは天蓋付きベッドの天蓋の裏側だ!!

 おかしい。どう考えてもおかしい。少なくても父さんはサラリーマン。母さんは専業主婦の我が家に天蓋付きベッドなんて言う豪華な物はなかった。我が家の姫にして暴君、絶対権力者である妹様の部屋にもなかったのだから俺の部屋に有るはずがない。もしそんなことが有れば、我が家の姫にして暴君様は、ものすごい癇癪を起こして、俺から天蓋付きベッドを奪い取った事だろう。しかし、俺が寝ているのはどう見ても天蓋付きベッドだ。コレはどういう訳か?


「とりあえず、起きるか?」


 寝たままでは何も始まらない。何も始まらない方が案外いいのかもしれないが、このまま無為に時間を過ごしても意味がない。布団を恋しがる怠惰な体に鞭打って、ベッドから抜け出し、部屋の床、正確にはその上に敷かれた高級そうな絨毯の上に降り立つ。


「何処だ此処!?」


 辺りを見回したが、部屋の様だ。でも、とにかく広い。俺のかつての部屋とは比べ物にならない。俺のかつての部屋が10個入ってもまだ余るだろう。


「ん?鏡?」


 部屋の一角に大きな姿見が有ったので、それの前に立つ。どうでも良いがこの鏡縁の部分の装飾が非常に豪華だ。ただ自分が映れば良いんだから、縁の装飾なんて要らない気がするが?無駄な所に金を掛けているだけに思える。

 まあ、それはともかく、まずは自分の姿を確認だ。


「誰だ?この美形?」


 うん。おかしい。良く考えよう。俺は今たしかに鏡の前に立ったはずだ。そうすると、普通見えるのは俺自身の姿のはず、断じて見ず知らずの某芸能事務所にスカウトされそうな美男子では無い。

 考えられる可能性は2つ。1つ、鏡に美男子の写真かポスターが貼っていた。一番有り得そうな可能性だが、そもそも自分の姿を確認することが目的の鏡にポスター貼るとか、使い方を間違ってるし、それなら美男子は動かないはずだ。

 

「よし、まずは右手を挙げて、次に左手を挙げて、右向いて、左向いて」


 俺が右手を挙げると、鏡の中の美男子は左手を挙げる。俺が左手を挙げると、鏡の中の美男子は右手を挙げる。俺が右向くと…以下略。

 結論……


「……コレ俺だわ!!」


 ありえないことが起こりましたよ。朝起きたら見知らぬ場所でイケメン美少年になっていた。何だこれ?こんな事ってあり得るの?「やった〜イケメンだ〜人生勝ち組だ〜」とか喜ぶ余裕も無いよ!!


「スーハースーハー。落ち着け俺。まずは現状を把握しろ」


 「何でこんなことになったのか?」とかも気になるが、まずは現状把握が大切だ。


「と言うか?このイケメンどっかで見たこと有るような?」


 俺は鏡の中のイケメン。現在の俺を覗き込む。何処かで見た気がする。でもこんなイケメンに会った覚えがない。

 俺はまだ高校生。ボケるような歳ではないから会ったことが有るなら覚えているはずである。 


「う〜ん??」


 どうにか記憶を掘り起こそうと唸っていると、「コンコンコン」と扉が3回ノックされ、外から鈴を転がしたような声が聞こえてくる。


「殿下。起床のお時間です。お目覚めですか?殿下?」


 どうしよう?なんて返事すれば良いの?どう対処して良いかも分からず、オロオロと辺りを見回した俺は再び鏡を見てはたと気づく。この輝かんばかりの美形。殿下と言う呼称。見たことがありそうなのに、ぱっと思い出せなかった理由。


「アニメ風の絵から実物の人間になってるから気づかなかったけど?」


 コレは間違いない。


「もしかしてコイツ、クリスティアーノか?」


 クリスティアーノ・ブァルク・フォン・ド・ティアーノ・ロード・エルドルード。エルドルード王国の第2王子であり、我が家の姫であり、暴君でもある絶対権力者。妹様がドハマりしていた乙女ゲーム「清純のフランチェスカ」の攻略対象の1人である。


「見たこと有るはずだ」


 我が家にテレビは1つしか無かった。そのテレビを占領していた暴君妹様が、此処最近は家に帰ると毎日キャアキャア言いながらプレイしていたのだ。ジュースを飲んだり、ポテチを食べたりする時も、降りていくと必ずやっていたので、ある程度覚えてしまった。

 うん。あの時常々母さんにテレビをもう1台買おうと持ちかけたが、「アンタ、テレビが幾らすると思ってんの?」と言われ、すげなくあしらわれたのは苦い記憶だ。俺だって見たい番組有ったのに。

 おっと、思考が脇道の逸れてしまった。とにかく現状、俺はその乙女ゲームの攻略対象に憑依?で良いのかな?してしまったらしい。そして外では召使?が待っていると。

 て言うか。


「悪役令嬢とかへの憑依って良く有る設定だけど、攻略対象に憑依って何だよ!!」


 俺は外に聞こえないように小さな声で、しかし、心の底から叫んだ。

 

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