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なんてないおでかけ。

作者: 高千穂 絵麻

今日、たまたま自転車に乗って回転寿司に行ったので、そこからイメージした短編です。

 今日は小雨のぱらつく中、久しぶりに自転車を繰り出して家の近くをふらついた。


「そういえはこの先に回転寿司屋があったよな」


 財布に優しい回転寿司は庶民の味方だ。なけなしの小遣いだけど今日は贅沢をしようか。たまの休みだしな。


「あれ、空気……抜けてら」


 久しぶりすぎた。自転車のタイヤがベコベコだ。


「仕方がない、どこかで空気を入れてこようか」


 自転車屋のセルフサービスで空気入れのコンプレッサーを使わせてくれる。

 店員さんの手を煩わせないのはこちらとしても楽だ。


「よし、っと」


 俺は空気圧の高まった自転車をこいで行く。


「チェーンがキコキコ鳴るな。今度油でもすかな」


 確か接地面積と摩擦係数だったか。よく分からんが空気を入れると軽くなった気がする。


「いらっしゃいませ」


 到着した寿司屋でロボットが出迎えた。


「お席は三十一番です。ごゆっくりどうぞ」


 機械音が多少違和感ありながらも役目は果たせている。

 俺はプリントアウトされた番号のカウンターに向かった。


「回転寿司なのに回らないって面白おもしろ


 ここの寿司屋はだいぶ前に改装して回転レーンがなくなった。レーンの上にあるタッチパネルから選択して注文すると、レールに乗って俺のカウンターまで寿司が届くという寸法だ。


「えっと、頼めるのは玉子と納豆巻き、それからツナサラダ軍艦。あとフライドポテトもチーズがけで頼もう」


 マグロとかイクラなんてのは売り切れになっている。

 俺は手慣れた動作で注文をすると、少しして依頼通りの品物が流れてきた。


「これこれ。いただきまーす」


 俺は久しぶりの寿司に舌鼓を打った。

 機械で作ったのか型にはまったシャリとネタ。それでも俺にとってはご馳走だ。


「ふう、ごっそさん」


 会計もセルフレジで、食べた分だけ支払う。ここも無人化されているんだな。


「あー、雨止んだわ。太陽なんて久しぶりだな」


 空を見上げると核の冬の雲から少しのぞいた太陽の光が俺を照らしていた。

 核戦争後でもAIや自動化でかろうじて機能している街。生きているのは俺の他にいるのだろうか。


 自転車のチェーンをキコキコ鳴らしながら俺はシェルターに帰った。

私はちゃんと魚食べてきましたけどね。


2019/07/14、日間ジャンル別で5位をいただきました。ありがとうございます~。

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― 新着の感想 ―
[良い点] きっとこの寿司屋のネタは化学合成されたモドキなんだろうなあ、なんて考えちゃいますね。 こういう短編好きです。
[良い点] 私も去年の今頃はじめてこの運ばれてくる寿司にいったなぁ、と思いました。スシローという店なんですけどね。なんといいますか、死ぬほど不味かった記憶しかありません。まさか回転する方の寿司屋の方が…
[一言] 日常の一コマを切り取った……なんて読み進めて行ったら、なんとなくの違和感。そしてこのオチ。好きです、こういうポトンと落されるお話。 淡々と語られているからこその(核戦争の)怖さみたいなものを…
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