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《登場人物紹介》

創一……主人公の馬鹿大学生。彼女いない歴=年齢。姓は山田。


真実……『しんじつ』と書いて『まこと』。創一の親友。彼女はいたりいなかったり。姓は財前。


根岸君……上二人の大学の友人。③の合コンで初めての彼女ができた。名前はまだない。あだ名は『ネギ』。


遠野君……今回初めて名前だけ出てきた。どうやらツッコミ役らしいこと位しか書かれていない。

ていうかまだ何も決めてない。



「いわくつき物件だったんだよね〜ははは」


 長い連休のあと、久し振りに顔を合わせた創一の大学の友人、根岸君は言った。

 明るく笑いながら。




 彼は心優しく、身体が大きく、温厚柔和な脳筋である。

 一言で言うならば『いい人止まり』というフレーズがぴったりくる男。


 ————ただし本気になった彼は違っていた。


 GW中に引越しを終えた根岸君は、冬休み中に行われた彼主催の合コンで、幹事のくせに見事彼女をgetした。

 普段はおっとりしている根岸君だが、『こう』と決めたら譲らない。『やる』と決めたら即行動。そして猪突猛進。


『彼女欲しいな〜』→『そうだ合コンしよう』→『この子可愛い!』→『お友達からお願いしゃす!』→『迷惑にならないよう気遣いながらもガンガンアピール』……そりゃ彼女もできる。


 グダグダぐだぐだ「彼女欲すぃ〜」などとこぼしつつも、決して自分からは何もしない創一とは違うのだ。




 話を戻すと、根岸君は地方出身者なので一人暮らしをしているのだが、彼女と遊びに行くのにお金をかけたい……要はラブホを使用するのにお金がかかるという大変に青少年の欲望にまみれた理由から、引越しを決意した。

 素敵な部屋ならば彼女も気に入るだろうからラブホに行く必要がなくなり、そうでもなかったとしても今のアパートより安ければお金は残るのでラブホに行く頻度も増やすことができる。

 とにかく行ける日は行きたい。お金がないなんて理由で逃すのは勿体なさすぎる。……それが根岸君の主張である。


 些か……いやとてもガツガツしているが、初めての彼女なので許してあげて欲しいところ。


 で、散々探して見つけたのがなんと、両方の条件を満たしたお部屋だったのだ。


『小洒落ていて、破格のお値段』。最高である。




「ただしいわくつきだった……と」

 真実がいつものように煙草をふかしながら相槌をうった。

 いわくつき物件に住んでいるという、当の本人根岸君もいつものような明るい笑顔で「そうそうそうなんだよね〜」と笑っている。

 そこに暗さや悩みなどは一切感じられない。


「え、で?!出たの?出たの??」

 我らが永遠の小3、創一は食い気味に根岸君に尋ねる。

 教室にゴキブリが出た時にはしゃぐ小学生を彷彿とさせる、キラキラとした瞳で。

「う〜ん、それが俺にはよくわかんないんだよねぇ……朝目が覚めたら首に手の跡が付いてたりとかはしたんだけどぉ。この通り元気いっぱいじゃん?」

「めっちゃ霊障受けてんじゃん」

 ただし根岸君は確かに元気いっぱいだ。

 今日も学食で名物の1キロカレー(¥1000)を完食していた。「これルーが足らなくなるよねぇ……」などと呟きながら。


「エー!!泊まりに行ってもいい??行こうぜ!真実!!」

「いや、俺を巻き込むな。触らぬ神に祟りなし。……実際ネギ霊障受けてんだぞ?冗談じゃねぇ」

 真実はなんだかんだいって創一のアホ行動に付き合ってあげるのが常だが、今回は本当に嫌なようだった。


 結局創一だけで根岸君の家にお泊りすることになった。




 根岸君の住むアパートは確かに小洒落ていた。


 古いアパートを全体的にリフォームしたらしく、間取りは1DK。

 風呂とトイレは狭いながらも別。

 玄関を開けるとすぐにダイニングキッチン部分で、隣の部屋との境が格子のガラス戸で仕切られている。昭和の匂いを感じさせる間取りではあるが、床や壁紙、備え付けの照明や収納等でレトロモダンな雰囲気の作りになっている。


「おお〜!いいじゃん、洒落てんじゃん」

「だろ?彼女も気に入るかなぁ……」


「うるせぇ爆発しろ」……そう言いながら創一が格子戸を開けたその時だった。



 部屋に佇む、赤いワンピースの女。



 ————ピシャリ。


 即閉める。



「ねねねねねねぎしくん?」

「なんだよ創一、Gでも出た?」

「いやGじゃないよ!!ユーレー!早速出た!!」

「おぉそりゃついてんなぁ!……ん?『憑いてんな』か?幽霊だけに!!」

「ヤメテ!その冗談!」

「なんだよ、見たかったんじゃないの?」

「心の準備ってあるだろ?!」


「もう面倒臭いやつだなぁ……」根岸君はそうごちると適当な感じで格子戸を開けて中央に置いてあるテーブルの前に腰を掛けた。


 女は既に消えている。

 創一は青ざめた。


「しかし俺には強い味方がいるのだ!!」


 テレレレッテレ〜♪という効果音をつけながら、創一はカバンの中からあるものを取り出した。法事の際に貰った、般若心経である。


「これがあれば大丈夫!!」

「え、なにその自信」


 除霊=お経。その程度しか創一の頭にはない。

 般若心経にどういうことが書かれているとか、その意味合いだとかは彼には関係ないのである。だったら『南無阿弥陀仏』でも構わないわけだが、『南無阿弥陀仏』じゃ短すぎる。


 穢れなき小3の精神を持ち、『格好良さ』について厨二的な感覚を持っている創一にとって呪文は長いほうが良いに決まっている。

 ただし覚えられないので、寺から貰った般若心経の書いてある小冊子を持ってきたのだ。



 気分はすっかり『聖職者』とか『退魔師』とか、そんな感じ。


 般若心経を手の届く所に置いて、ふたりは缶の発泡酒で乾杯した。




「つーか創一、随分でっかいカバンできたけどそれ、何入ってんの?」

「ふっふっふ……コ・レ・DA☆」


 カバンの中に入っていたもの……それは、まず塩。


「いや〜、創一ぃ……気持ちはわかるんだけどさぁ、これ明らかにやっすいヤツじゃん?効かないんじゃない?」


 根岸君は何故かこう主張する。

『ミネラル含有度の高い、いい塩でないと効かないような気がする』と。別にいい肉を調理するために使うわけではないのだが。ちなみに創一の買ってきたのはほぼ完全な塩化ナトリウム(一番安いやつ)である。


「いや、関係ないんじゃない?高いと倒せるとか、どこの課金ゲームの魔道具だよ」

「そっかなぁ……うん、そうかもな。『ク●イジー・ソルト』美味いけど、あれで幽霊と戦える感じしないもんな」

「いや、待てよ……あれハーブ入ってるじゃん。ハーブってなんか魔除けになりそうな気、しねぇ?」

「……確かに。俺台所からとってくるわ!」


『ク●イジー・ソルト』は商品名である。塩にハーブが等が予め入っていて、「これをかけるだけでお手軽に美味しくなっちゃうぞ☆」という焼くだけ調理専門の根岸君のお勧めの逸品だ。

 以前根岸君の部屋(引越し前)に遊びに行った時に、焼いただけの肉とキノコを『ク●イジー・ソルト』で調理して出してくれたことがある。創一があまりの旨さに感動し、後日真実に「HEY、ユー!コレがなんだか知ってるかい?……塩?チ・チ・チ☆勿論そうさ。しかしコレはただの塩じゃないんだ!コレをひとふりするだけで……イッツ アメェ〜イズィング!!……ふりかけただ・け!『まぁ!ふりかけただけですって?!(高い声で)』まさにクレイジーな美味さだぜ!!」と深夜の外国人TV通販の感じで紹介したのは記憶に新しい。ちなみにその際の真実の感想は「アシスタント女性も自らやるとはなかなか凝っている」である。


「あっ!創一、じゃがいもあったわ。まだ芽そんな出てないから『ク●イジー・ソルト』で焼いてくるわ」

「さっすがネギ、気が利くぅ!」

『ク●イジー・ソルト』、ここにきてまさかの正しい使用方法。

 二人共タイプの違うアホである上、酒にはあまり強くない。そして雰囲気に流されがちなので、酒を少し飲んだだけで酔っぱらえてしまえる極めてコストパフォーマンスの良い身体をしていた。

 仲間うちでは真実か遠野君の二人が主にツッコミ役である。


「イモうめぇ〜、まさにアメイジング!」

「ああクレイジーな美味さだぜ!」


 今夜はふたりがいない上、グループの中でも筆頭馬鹿であるお調子者で怠惰な馬鹿創一と、穏やかでマイペースな脳筋馬鹿ネギ。


『幽霊はどうなった』


 ツッコミ不在のまま話は続く。


閲覧ありがとうございます!


誰も待っていない、馬鹿大学生創一シリーズ第4弾!

時々書きたくなるので短編で放出してたら案外うぜぇ。まとめようかとも思ったけれど、削除は結局あまりよくないので……もうこのままいくことにする。

次いつ書くかわからないし。


あ、後編はちゃんと近いうち放出しますよ。

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