3回まわってワンと鳴け
学校の屋上に出て、柵を越え、屋上の縁に足を揃える。
一度下を見てから、空を見上げて息を少し吸い、足を前へ踏み出す。
「名前を知らない君、そのまま飛び降りるの?」
突然後ろから声がする。
私は振り向かずにそのまま飛び降りる。
――――はずだった。
「飛び降りてごらんよ、さあ」
どうしても飛び降りれない、体が全く動かない、瞬きすら。
「お前は死ねない、死のうとした瞬間、私の奴隷になったの」
突然理解不能な事を言われ頭の中が真っ白になる。
「お前は自分の命を捨てた、だから私が勝手に使っていい命になった」
後の人物はひと呼吸置くと
「さあ、私のかわいい奴隷ちゃん、柵の中に戻りなさい」
私の身体は勝手に動き出し、屋上の縁から一歩後ろに下がり柵を掴んでから柵の内側に戻った。
ヘタリと膝を床に付けているとぬいぐるみを抱えた少女が近づいてくる。少女は私の目のまえて止まり、仁王立ちになり、ぬいぐるみを抱えていない方の手を腰に当てて
「はぁ、ちょうど良かった。一人暮らしするのに奴隷が見つけれなくて苦労してたの」
私はそんな話も聞かず、自殺を止められた事に激昂し
「なんなの!なんなのアナタ!私がどんな気持ちでここまで来たとおもって――――!!ッ!」
急に私の体が動かなくなる、口は閉ざされ息も出来ない。
「このクソ奴隷が、口を慎め!立場をわきまえろ!」
少女の口調が激変してみぞ落ち辺りを真っ直ぐ蹴り飛ばされた。
グエッ、ゲホッゲホ――
「てめぇの命は私のものなんだよッ!要らなくなったらいつでもどこでもクソみてぇーな所に捨ててきてやるよ!」
一息で言い終わると、私は頭を床に謎の力で押さえつけられ土下座をする形になった。
「わかったか!クソ奴隷が!」
ゼヒッゼヒッと私は息が出来ないままで体をビクつかせながら頷いた。
少女は息を整えてからニッコリ笑い
「さあ、立ちなさい」
さっき柵を越えたときの様に体が勝手に膝を付き、立ち上がる。
少女はぬいぐるみの背中のチャックを開けて、中から犬用の首輪を取り出した。そして、背伸びをして私の首に手を回し、首輪をはめた。
「とっても似合ってる!」
少女はピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねてから思い出したように
「あ、お名前決めなきゃ!」
「私は亜由美――」
自分の名前を言おうとした瞬間、また腹を殴られて両膝ガクリとを付く。
「テメェの話は聞いてねぇんだよ!クソ奴隷のクソ親に付けられたクソな名前を私に呼べってか?!私の高貴な口が腐るってんだよ!」
膝から崩れた私は地面に這いつくばってる、その上にポンッと座り、少女は私に付ける名前を考えている。
「思いついた!」少女は笑い
「投身自殺してたからトウって呼ぶわ」
少女は私の上に乗ったままこちらを覗き込んで、私の名前を付けてくれた。