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1話 9%の事故と未確認発光体

 人気のないコンビニの店内、自分の手をジッと見つめる俺。


「どう見ても骨だよなぁ……」


 そう、今目の前にある俺の手はどう見ても骨、それどころか全身くまなく骨なのは間違いないだろう。

 つまりは動く白骨死体、スケルトンってヤツ?

 魔物の類にはならないって聞いてたんだけどなぁ。


 取り敢えず落ち着くために、商品棚からチュウハイを一本。

 労働者の味方、最近流行りのストロング。

 あ〜、そう言えば俺こいつで死んじゃったんだよ。


 誇らしげに缶に印刷さてた9%の文字を見ながら思い出す。






 何も無い真っ暗な空間に浮かぶ光の塊。

 ここは?


「気がつかれましたね。まず初めにお知らせしておきますと、先程貴方はお亡くなりになりました。ここは死後の世界とお考えください。」


 いきなりブッ込んで来やがった。


「死因は、ヒートショックによる脳梗塞。本日は寒の戻りで気温が低かったですからね。

 忠告させて頂きますと過度の飲酒後の入浴は感心しませんよ?」


 な、なんと。

 つまり俺は酔っぱらって入浴後、温度差で脳梗塞で死亡と……。

 ああ、アルコールと熱い風呂で全開まで開いた脳の血管がキュッと締まってプチっとするところを想像してしまった。

 すまない俺の血管さん、ごめんな、俺の脳ミソちゃん。


「すいませんでした。以後気をつけますって、俺もう死んじゃったみたいですけどね……」


「ふふ、そこは大丈夫ですよ。魂とは流転するもの。今回の失敗は次回に活かせば良いのです。まあ、一つ付け足すなら、飲みやすくて度数の高いお酒には要注意ですかね」


 まさか謎の発光体にアルコールの摂取についてアドバイスされるとは、さすが死後の世界だ。


「さて、本題に入らせて頂くとですね、貴方には少し特殊な転生をして頂くことになります」


 特有!?これはアレか!アレが来ちゃうのか!

 俺は、はやる気持ちを抑えて聞き返す。


「特殊とは?」


「貴方の転生先は異世界と呼ばれる場所になります。貴方の魂の因子が先方から望まれた結果の特例です。今の貴方の状態を出来るだけ維持したいので記憶も持ち越しですよ」


 ビンゴ!!

 来ました、来ましたよ!

 若い頃に患う黒い感じの憧れが今、ここに!!

 いや、落ち着け俺、問題はここからだ。

 まだ転生先の情報も聞いてないし、本命の転生特典の有無も確認していない。


「申し遅れましたが、この場では心の声も筒抜けですのでお気をつけくださいね」


 うお、先手を取ってぶっとい釘を刺された感じだ。

 まだ失礼なこととかは考えてないからセーフだよね?


「セーフですよ。それにご想像どうりでほぼ間違いはありません。ただ、今のまま貴方を転生させて不慮の事態で早逝されると大変ですので何か強い力を持った存在に転生して頂こうかと考えています。まあ、魂の因子が汚染されては困りますのであまり極端なものにはしないつもりですのでご安心ください。ああ、貴方の記憶の中に良いものがありました。これはゲーム?の中で作られた貴方ですか?これなら魂の変質無しで良く馴染みそうです。それに能力的にも向こうで生きて行くのに申し分なしです」


「え?ゲームのキャラクターで人外?」


 ちょっと待て、ゲームのキャラクターで人外で強くて俺の作ったって、大ハマりして総計5000時間遊んだネットゲーしか思い浮かばん、アレはいかんぞ!

 止めて!金属スキンの長身ひんぬうポニテのメイド風ロボ子さんにTS異世界移転生なんて!!

 わたしの魂女の子に汚染されちゃうぅ!!


「因みに転生先での使命は『勇者の父親』になること。あなたの子供は勇者で、先方に望まれたあなたの因子、先方世界の【特異点】を受け継ぎ、世界の理に愛される者になるそうです」


 俺のボケは無視か。

 そして世界に愛される特異点ってなんだ?主人公補正みたいなものか?

 しかしそれって、


「俺、いわゆる種馬じゃ無いですか。正直な話面白くは無いですね。それに勇者と言うからには俺の子供は戦場とかで苦労するんでしょう? 気乗りしませんね」


「貴方の不満も分かりますが、上の話し合いで決まったことですので。しかし貴方の不満も理解できますし私自身、今回の横車には納得しかねるものがあるのも事実です。そこで提案なのですが、貴方が英雄的な行動をとる度にお子さんの能力が上がって行く様に細工をすると言うのは如何でしょう? 貴方の人生次第では無敵の勇者が生まれますよ」


「子供が強くなるなら心配事は一つ消えるけど、俺の不満は残ったままですよ」


「お任せください、ぬかりはありません。貴方の更に次の人生で、貴方の人生に勇者の人生分の能力を加えた全部盛りを約束しましょう。その位の報酬はあって然るべきです。」


「何だか能力継承システムのあるゲームみたいですね。有り体に言って大好物です。そこまでしていただけるのなら、俺も男です、やりましょう」


「ありがとうございます。ガッツリ鍛えてガンガンインフレさせて、あちらが二度とこの様な事をしようと思わないようにしてやって下さい。 二度目はそれこそ勇者でも大魔王でも好きにやっちゃって構いませんからね」


「それではそろそろ時間ですのであちらに御送り致します。 因みに貴方のお子さんですが、私の分身体なのでよろしくお願いします。では、良い人生を」


「ちょっと待て!実はあんたの都合か!?」


 俺の突っ込みも虚しく視界が光に包まれ……










 気がついたらここにいたわけだ。

 取り敢えずTSロボ子さんでなかったことは喜しいような、ちょっとガッカリしたような感じだが、何故に骨。


 プシュっとチュウハイのタブを開ける

 少し疲労を感じる。もしやチュウハイにトラウマ……


 カツッ


 口に運ぼうとして何かに当たる。

 ……


 仮面?

 どうやら俺は仮面をかぶっていた様だ。

 違和感なさ過ぎて気がつかなかった。

 よく見たら和鎧着てるし、これで気がつかないとか俺はマヌケか?

 いや、この違和感の無さが異常なんだな。


 ん?


 骸骨、和鎧 、仮面……


 ああああああああ!!


 思い出した。

 ゲームってTRPG(テーブルトークRPG)じゃないか!

 リアルで集まってダイスを振ってワイワイ遊ぶアレだ。


 こいつは高校生だったかの頃いじくり回してた


 妖怪 平家の落武者 (出典 耳なし芳一)


 当時の俺的カッコイイを大量に注ぎ込んだ上に、シナリオの最終ボスとして大量の製作ポイントをつぎ込んで作成した当時の自信作。


 お気に入り過ぎてプレイヤーの所属団体のサブリーダーとしてマイナーチェンジまでして、更に設定盛り盛りで完成を見たが、当時はTRPG遊ぶ仲間いなくてお蔵入りしたんだったな。



 そりゃあ違和感無いよ。これらの装備品は全て体の一部だった筈だ。

 妖怪は御都合主義の塊だった記憶がある。

 実質スーパーヒーローとかミュータントと同義だったもんな。

 発光体さんも奮発してくれたものだ。


 自身を確認してみる。


 外見は豪華な和鎧で武装した骸骨、顔に白い仮面、頭に烏帽子。

 腰に大太刀、ん?武装を意識したら弓と矢筒が生えたよ、何でもありか。


 コンビニ店内の鏡に映して確認してみる。

 外が暗いためガラス面でもよく映るが、やはり鏡だろう。


 思い出した、コレはアレだ。

 落武者作るに当たって、当時の知識がなかったからソレっぽいゲームのキャラクターのごった煮になってるんだな。


 はっきり言うと源平で横スクロールなアクションゲーム。

 白塗りの般若みたいな顔をした主人公が全国周りながら剣振り回す奴ね。


 平家の落武者設定なのに外見が敵側源氏のキャラの寄せ集めな当たりが泣かせる。

 行動前に「オヒョヒョヒョヒョ」とか声出しそうだ。


 しっかし妖怪ってどう考えてもモンスター寄りだと思うんだがその当たりどうなのよ。

 この姿で人前に出たら討伐対象待った無しだろう。

 どう見てもアンデット。名付けるならスケルトン侍か?


 生きるだけならイージーモードっぽいな、だが対外的に妖怪と言うのはいささかマズイ。

 今の俺は噛み砕くと『異世界からやって来たバケモノ』な訳だが、これを何とかする必要がある。

 昔の記憶を思い出す。

 妖怪TRPGの設定だとどうだった?


 そうか!人間の思いで不思議パワーがニョキニョキして妖怪瀑誕。

 本物の化け物では無く意思を持って実体化した不思議エネルギー体だったな。

 この条件で何か現地民の皆様に受け入れられやすい肩書きは……あった!


 妖精とかどうだろうか? 結構いけてる気がする。

 よし、今日から俺は妖精さんを名乗ろう。

 不思議パワーエネルギー体 = 妖精


 完璧な理論だ。

 これならモンスターっぽく無いし少しは人間とだって交流できそうじゃ無い?

 発光体さんの言ったとおりなら、この世界は剣と魔法のファンタジーってやつだろうから違和感も少ない。

 見た目が怖いのは勘弁して貰おう、伝承の妖精も子供さらったり人コロコロしたりするし、グロい見た目のやつもいるしね。


 首無し騎士のデュラハンだってアンデットでは無く妖精だ。

 肉無しサムライの落武者が妖精でもいいじゃ無いか。


 よし、【異世界転生初心者の骸骨妖精】これが俺。

 このスタイルで次の人間転生までやって行く。


 あとは本題の強さ継承だが。

 まあ、発光体さんの私怨もあった様だが、便宜を図ってもらったのも事実だ。

 しっかり鍛えて最高の勇者になってもらおうじゃないか。

 可能な範囲で英雄的な行動とやらを取る事を基本方針に決定。


 こうして俺の異世界生活が始まった。



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