6話
こんにちは、6話です。ここ最近天気が良いですが続いて気分が高揚します。しかし風はまだ寒く、家も冷えたままです。まだ厚着は必要ですね…。
ナルウェーの森の奥深く。そこにその屋敷はあった。
こじんまりとしながら、それでいてしっかりとした、まさに「丁度いい」豪華な屋敷だ。
「無駄がないわね。」
そう、全く無駄が無いのだ。あえて誇張するのではなく、なおかつ寂しくないように。
「モケもこんな屋敷に住むのが夢だったモケ〜。」
いつの間にか合流したモケが感慨深そうに見る。
「確かに、一度住んで見たいよなぁ〜。」
「ええ、そうね。でもその前に…、」
ハクは彼女を指差した。
「さっきからあんた誰よ!モケと一緒にいつの間にかしれっと合流してたけど!」
指差された本人は驚いた顔をした後、自慢げににやけ親指を自身の顔に向ける。
「シモン・ゲルハルト。モケと同じく幽霊になった、しがない軍人だ。ちなみに階級は中佐な。」
「中佐って、どの位偉いの?」
「そりゃもうとんでもだ。世界が変わるぞ?
因みにモケはそれより上の大佐だしな。」
マーリンが反応した。
「モケ、あんた軍人だったの⁉︎」
「モケ?言ってなかったモケ?(´・ω・`)」
「言ってないわよそんな事!」
「あなた達、静かにして!魔王の屋敷の前よ。」
全員が静まる。マホトはそれを確認すると、ゆっくりと屋敷の扉を開いた。
「ソプラ・ローズベルト中尉よ。会長に会わせて。」
貿易センターのビルのロビーで、ソプラは案内嬢に問い合わせる。
「ソプラ様ですね。話は伺っております。案内致しますので、こちらへ。」
案内嬢が席から立ち上がり、ソプラを案内する。
着いたのは屋上の応接室だ。
「よく起こし致しました、ソプラ中尉。」
で迎えたのは、会長のヘルマン・ヴィンソンだ。まだ25にして世界を股にかける、大強者だ。
「国際貿易協会会長ヘルマン。
…いえ、密輸団団長[トム・ワイルド]と呼んだ方が良いかしら?」
ヘルマン、トムの顔が強張る。
「普通にやってちゃ、こんな若くして会長とか普通あり得ないっての。それにあんた、結構有名人よ。
ああ、別にお縄にかけようとかじゃないわ。」
トムは気をほぐすために紅茶を飲む。
「…それで、今回はどちらの方にご用件が?正規?非正規?」
「どちらでも。機体が欲しいの。航空機。」
「米軍機に満足がいきませんか。
では型は古いですが、ロシアのMiG、フランスのエタンダール、それから…、」
ソプラは話を遮った。
「既存のものじゃない。新しいのが欲しい。条件は、日本製で、格闘と一撃離脱の双方がこなせるやつ、マルチロール性能と硬い機体。」
「…資金がかかりますよ?それもかなり。そしてここまで大掛かりですと、貴方にもツケが回りかねませんぞ?」
「No,problem、良い上司を持ってるの。クビを切るのはあんたらだけね。」
ソプラは小切手を出す。そこに記載されていた額はあり得ないほど多かった。
「ご先祖様が大統領だと金が有り余るの。まずはこれ。成功したら、もう少しあげる。」
トムは笑った。
「良いでしょう。交渉成立といきましょうか。」
「答えはノーよ。」
幼女が手でバツを作る。
「貴方がいないと本当に大変なの。お願い。」
「幾ら旧友の頼みでもダメなものはダメ。面倒臭いじゃない。」
幼女はため息をつく。
「世界が滅ぼうと、あんたも私も関係ない事でしょ?どうせあそこに帰るだけなんだし。」
マホトもため息をつく。
「貴方も人間観察をして、それでどれだけ人間に可能性があるか、わかるでしょ?」
「知った事じゃないわ。人間は神を語って馬鹿やってる。何千年と見てきたけど、虫唾が走るのよ。はっきり言って、大災厄で人類は滅んじゃえってね。」
「魔王。」
魔王、と呼ばれた幼女は更にため息をつく。
「諦めなさい、私は折れないわよ。…ま、最悪やっても良いとは思うけど、ね…?」
魔王が興味津々にマホトを見る。
「勇者とやらを連れて来なさい。話をして見たいの。答えはそれ次第よ。」
ハクはドアの前で硬直していた。
「マジで魔王とか、マジで笑えない…。」
ドアの向こうには魔王。その事実が、ハクを緊張させていた。
「えーっと、[面接にトライ!10の常識ビギナー編]だと、確かノックしてから…、」
ハクは役に立ちそうにない本を思い返していた。そして、覚悟を決めノックをする。
「どーぞ。」
(えっと…、)
「し、失礼します‼︎」
ガチャリ、とドアを開ける。ハクの目線には、ソファーに座り、ジャポンの漫画を読む幼女がいた。
「あんたが勇者ね?ま、そこにかけなさい。」
「えーっと…、」
(あの子が魔王?)
ハクは驚きを隠せないまま、ゆっくりとソファーに近づき、腰を下ろす。
ブゥッ‼︎
「えっ、おなら⁉︎ち、違います魔王様、これは…!」
魔王は笑っていた。そして、漫画で隠された右手を出すと、そこには…、
「え、ブーブークッション?」
ハクの顔が紅くなっていく…。
「…ま、緊張はほぐれたでしょう?落ち着いて、話をしましょう?」
魔王は真面目な顔になった。