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冴えない猫耳の英雄伝  作者: 長門零
3/26

3話

こんにちは、3話です。

外は久しぶりに晴れました。春はもう近いです。多分。

ちなみにこの世界では、もう秋なんですよね。ああ、冬がまた来る…。

「ここにいたのか。」


潰れた酒場の跡地で、2人は再開した。1人が、カウンターにいるもう1人の隣の席に座る。


「幽霊なら、酒もいらないだろ?」


「シュバイネハクセ持ち歩く奴が言えるか?寄越せよ。」


1人がコートの裏から紐で繋がれた豚足を取り出す。旧友は酒を飲み交わした。


「私達は確かに死んだ。でも、何故か此処にいる。その訳が分からんな。」


「少なくとも、モケには守るものはできたよ。ちんちくりんな勇者が。」


1人が笑う。


「お前が?ハッ、笑える話だな。酒のつまみには丁度いい。

…私は随分長い間暇してるんだ。なんかシビれることはないか?」


「ああ。もうすぐ起きるみたいだ。」


「何が?」


もう1人は、黒い軍帽を被り直して、強気な笑顔を向けた。


戦争(クリーク)だ。」






ブリテンの外れ、ペンザンス・シティ。そこの岬の近くに建つ小さな小屋。


「ここよ。」


マーリンがノックをする。


「どちら?」


「誰でもいいでしょう?この声であなたはわかるはずよ。例の子、連れて来たわ。」


しばらくして、ドアがゆっくりと開いた。が、人がいない。


「どうぞー、中へ。」


マーリン達が中へ入る。



海の見える窓の前で、本を開き、読みながら、フラスコの中で錬金をする、小柄な少女。いかにも魔法使いのような、どこか学生服のような服を着ている。


「さて、と。こんな感じかな?うまく行くといいけど。」


少女が指を鳴らすと、ポンッ、という間抜けだ音が響いた。


「⁉︎」


ハクは驚く。しかし少女は一切気にしない。


「どう…?

…成功ね。上手くいった。」


フラスコの中には、小さな黒い塊。


「マーリン、見て頂戴。この塊、ダイヤモンドよりも数倍硬いオリハルコンを、更なる高みにたどり着かせる奇跡の存在よ?

硬い(hard)ともじらせて、名付けて[ハドビウム]!ってね。…あら?」


少女がハクに気がついた。


「あなたね?勇者は。」


「そう、この子。意外とちゃっちいでしょ?」


ハクはマーリンの発言にムッとする。


「そりゃないでしょ?あんたもそんなに変わらないんだし。」


「んなっ⁉︎」


「はいはい、そこまで。マーリン、そこの部屋にクッキー用意してあるから、よかったら食べて?」


「本当?わかった。」


マーリンが部屋に入る。窓の部屋には、ハクと少女が取り残された。

少女が挨拶をする。


「初めまして。私はマホト。マーリンの友達で、あなたを呼び出した張本人よ。」


「勇者(笑)のハクでーす。どーぞよろしくー。」


ハクは面倒臭そうだ。が、ふと気付いた。


「あんた、前どっかで会わなかった?聞き覚えある声なんだけど。」


「ああ…、」


マホトが察したような表情をした。


「あの時に腹痛を直したのは覚えてるわ。」


「ああ、あの声の主ね。なるほど。」


ハクは腹痛に倒れた時の、束の間の夢を思い出した。


「さて、それはそうと。あなたには今から伝えておくべきことがあるの。」


「何々?」


「まずは、合衆国に行くの。そこに現れるモンスターを、一匹残らず倒してもらうの。」


「何それやだめんどくさい。」


「その後、マーリンの案内で魔王の居城に向かうの。魔王は人間の味方だから、なんとかしてくれる…、かも。」


「なに?かもって。」


「魔王は気まぐれな性格なの。まるでヒモを擬人化したみたいに面倒臭がりで、とにかく本当に役立たず。でも本気を出せば、国1つはあっさり滅ぼしてくれるわ。」


「何々?チートの魔王様?」


「そう。ぶっ壊れな強さよ。海を全て蒸発させるだの、大規模都市まるごと火の海にするだの、赤子を捻るようにするの。恐ろしいわ。」


マホトはお手上げのジェスチャーをする。ふと、ハクは気がついた。


「先に魔王を連れて行っちゃダメ?」


マホトはテレビのリモコンを手に持つ。


「ノー。間に合わないわ。」


マホトがテレビをつけた。ノイズ混じりに人々の阿鼻叫喚が響く。


[信じられません!未だ嘗て、このような事があったでしょうか!全くもって、信じられません!]


ハクは息を飲んだ。



9月15日、PM1時頃、未だ嘗て異国の侵略を受けたことのない合衆国に、水生モンスターの群れが上陸した。場所はサンディエゴ。

上陸後モンスターは暴れ回り、サンディエゴを破壊し尽くした途端別の街へと向かい始めた。初日で少なくとも、3万人が犠牲となった。


上陸してから4日後、モンスターの群れはロサンゼルスに向かっていた。

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