prologue
遥か昔、一つの小さき星に漆黒の闇しか存在していなかった時代がありました。
星から離れた天界に住まう神々はそれを悲しく思い、それぞれの役割を担うことに。
一人は火を。
一人は地を。
一人は水を。
一人は風を。
世界が生きるための、なくてはいけない大事な理を次々と創り出しました。
そして一人の神もまた、未だわずかに残る闇に一筋の光を与え「生物」を作り出しました。
その光の温かさを受け入れた者は二足歩行をする「人間」や海、山、大地に住む動物に、
温かさを拒むモノは人間や神々を憎む「魔属」にそれぞれが生まれ変わりました。
ですが、ある時を境に魔属は反乱を起こしはじめました。時空を跳べるという力を身につけ、今とは違う時代へ飛び、度々戦乱を起こすようになりました。
その幾多もの戦乱で多くの人間達が犠牲になりました。中には魔属に抵抗しようと無謀にも戦いを挑む者も。だけど、それも虚しい結果に終わってしまいました。
――そんな残虐な魔属を生み出した責任ということで、生物を創り出した神が人間へと生まれ変わり、ある特殊な力を行使して魔属を討つよう命じられました。
使命を途中放棄したりしないよう、見張り役として生物を造り出した神の下の階級の神と、その神の化身「天属」も連れて、天界の遥か下層にある今や緑溢れる人間界に降り立ちました……
その神達が結果を残せないまま、神々が統べる時代から何千年もの時が流れました。
既に神々の姿はなく、人間が世界を支える時代になっています。
人間が人間の上に立ち、法という縛りを造り、人間が人間を罰し、人間がさも神かのように罪のない動物達の虐殺を繰り返す。
――神が姿を消した事によって、こんな理不尽が成り立ってしまったこの世界【ミュートス】。
理を作った神々は、殺戮を繰り返した魔属は、そして人へと生まれ変わった神は、一体どこに消えてしまったのでしょうか?
真実は未だ、深い深い闇に包まれています――
(『聖神話~創世記~ 著:シャンテ・チャルク』より、一部抜粋)