失恋
時間ある時にさらっと読める短編小説です!
宜しくお願いします。
「…ご、ごめんなさい…ありがとう」
そう言って彼女は走り出した。
僕は恋をしている。
だけど、この想いを伝える事は永遠にない。
彼女には想い人がいるのだ。
彼女との出会いは小学校五年の時だった。
学校帰り。
彼女は男の子と一緒に帰っていた。
その時の笑顔が眩しくて見とれた。
人は幸せだと、こんなにも笑顔が美しいのか。
その笑顔は僕ではなく別の男の子に向けられたもの。
彼女を笑顔にしているのは僕じゃない。
それでも…その男の子を想って笑顔になっている彼女を…僕は好きになったのだ。
叶わぬ恋。
わかってる。
太陽に手を伸ばす向日葵のように僕は恋焦がれた。
一目惚れだった。
それは燦々と輝く希望の光。
想いは届かなくても…
太陽がなくては生きてはいけない。
彼女は同い年で隣のクラス。
少し男の子っぽい性格。
一度も話した事はないし接点もない。
彼女が視界に入ると目で追ってしまう自分がいた。
日に日に思いが高まる。
それでも…
この気持ちが届く事はないのだ。
思われたいから思うのではない。
思うからこその自分なのだ。
特に何もなく小学校の卒業を迎えた。
結局一度も彼女とは話す事はなかった。
帰宅後にコンビニに行きジャンプを立ち読みしていると彼女が来た。
気付いたら目で追っている。
どうやらコンビニに夕飯を買いに来たみたいだ。
心なしか目が赤く腫れているような気がする。
彼女は店員から受け取り損ねた小銭を落とした。
「こ、これ…」
そう言うと落ちた100円玉を渡した。
「ありがとう」
そう返した彼女の笑顔。
あぁ…
やっぱり敵わないな。
僕じゃないんだ。
あの笑顔は…彼にしか向けられない。
それでも…
僕も彼女も…
後悔だけはしてはいけない。
「あの!」
わかっていても戦わないといけない時もある。
それは自分の為じゃない。
「た、高橋瑞希さん…ですよね。僕…」
彼女に伝えたい気持ち。
彼女の助けになれば。
それが僕に出来る唯一の事。
「あ、あなたが好きです!僕じゃない…けど…違う人に向けられた笑顔だけど…その笑顔に…僕は救われたんです…」
本当は伝えるつもりはなかった。
答えは分かってる。
彼女なら平気だ。
きっと上手くいく。
「遠藤くん…ご、ごめんなさい…ありがとう」
隣のクラスで話した事もなかったのに…
僕は初めて笑えた気がした。
「おー遠藤!」
「さ、佐藤くん…遅いよ…1時間も遅れてる…」
「怒るなよ!なんかいい事でもあったか?」
「怒ってるのに…いい事あったかっておかしくない?」
「そういう日もあるだろ」
「な、ないよ!」
「中学からは別々になっちまうし…今日は遊びまくろうぜ!」
怒ってはいるけど彼が遅れなければ彼女に出会う事もなかった。
「マリカー死ぬ程やらせてくれたら許してあげる!」
(完)
読んでいただきありがとうございました!
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