再会する2day
「化け物かよ」
「なんなんだよあいつら」
飛び込んだ駅の中は囮が一杯いた。武装しゾンビを狙っている、弾はあるのか余裕そうだ。彼らの援護によって紗枝までもその中に入ることができた。状況は悪化したのだが。その中で青黒い服を着た囮に話しかけられる。
「避難されに来たのですか」
「菜々美って言う女の子は来てませんか」
「えっと菜々美ですか」
そういうとその囮は無線機に話しかける、すぐに答えが帰ってくる。
「失礼ですがお名前は」
「井上」
「紗枝」
「そうですか」
それをまた無線機に言うと、すぐに答えが帰ってくる。
「奥にいますよ」
「そうですか」
奥にいるのであれば連れてくればいいのだが、その囮は奥まで案内すると言うのだ。だがそれはできれば避けたい、避けたいのだが。
「紗枝どうする」
「ここは私に任せて」
「ならお願い」
そうして俺だけがその囮についていく。ついていく途中何度も話しかけられる。曰くここまでこれるなんて運がいいですねやら、ここまで来れば安全ですからねやら、よかったですね避難できてやらだ。運がいいのは確かだが、ここまで避難しにいたわけでもないし、安全ではないだろう。それに便利そうな襲ってしまってもいいだろうが、数が多いし菜々美を預かってもらっているのでそこまではさすがにしない。という思考をしているとついにたどり着く。この駅は大きく、様々な施設を複合していたようでその中の一部を避難所としているようだ。その中に入る。
「うっ」
圧倒的な囮の数、囮、囮、囮、囮、囮、囮。そしてその数に恐怖する。どれだけの爆薬を抱え込んでいるのだろうかその囮らは。そんな中に菜々美はいた。
「パパ」
「菜々美」
彼女は嬉しそうな顔で走りよってくる、ジーパンにTシャツ、それに遊びに来た時用のリュックだろうかを背負っている。
「怖かったよ」
「そうだよなぁ、そうだよなぁ」
こんな中にいれば誰だって怖い、よくこの囮どもはこんな中にいられるものだ。と考え方を変える、シミュレーターにいたとき、助け合ってる人たちがいた、彼らには互いに互いを支え合っていた、もしかしたら。
「なあいつになったら脱出できるんだ」
「早く脱出させてくれよ」
「早く家に帰りたい」
「もう嫌だよ、帰りたいよ」
そんな声が聞こえてくる、吐き気がする。
「もう少しお待ちください」
「昨日もそれだったじゃないか」
「それに食事もこれしかない」
「そうだそうだ」
「そうだそうだそうだそうだ」
ここにはいられない。
「それでですねあなた方の」
「帰ります」
「へっ」
「帰ります、よし菜々美帰ろうか」
「うん」
この囮を見ていられない、見たくもない。一緒の場所に閉じ込められるなら、ゾンビと一緒に閉じ込められていた方がいい。
「いやここにいれば」
「そういえばママは」
「ママも来てるぞ」
「うわ~い」
「なんだパパの時と反応が違うな」
「え~そんなことないよ」
そしてそこから離れようとするのだが。
「ですが」
「菜々美家に帰ろうか」
「うん」
ここまで案内した囮が食い下がろうとする、だがもうそれには興味はない。なのに食い止めるのなら。
「黙れっ」
拳銃を突きつけるしかない。
「ひぃっ」
「黙れ、邪魔をするな」
「パパ早く帰ろうよ」
「ああごめんな」
早く出ていきたかった。