格闘する5day
倉庫の中は。
「静かにいくぞ」
「わぁかってるよ」
「だっ大丈夫なのかな」
「はぁはぁはぁはぁ」
「使えるものを見つけないとな」
広かった、そして赤かった。地面は血に染まっていた、何があったかは聞きたくないが想像できる、中にいるやつらは、ここにいたやつらを切り捨てたのだ。
まあそれがいいとか悪いとかなんてはどうでもいい、そもそも自分達だって切り捨てた側の人間なのだからそこは攻める気はない。ないのだが掃除くらいした方がいい、腐敗臭がひどいことになっていた。
「あなた大丈夫」
「シャンプーとか石鹸ももらっていこう、からだ洗わないと嫌われる」
「えっ嫌わないよ」
「そっか、けど洗いたいじゃん」
「そこ静かに」
「「はーい」」
響かないように注意して話していたのだがさすがに注意される。どうせ足音はしないし、気配も感じないので多分いないか少ないだろうが言わないでおく。どうせその場だけの付き合いだ、こういった経験を知りたければ聞きに来いと言うものだ。
遠くの方では銃声が聞こえてくる、囮が頑張っているのだろう。
「ここだ」
「よしかき集めろ」
「ほら早く集めろよ」
「…………はい」
学生服の強気なやつと、いかにもな格闘経験がありそうなやつが指揮を執り、それ以外のやつらが食料や物資を集め始める。それに混じり集めるのだが、なかなか保存が効きそうなものは少なく、自分達だけでも3食満腹まで食べたら50日持ちそうにないくらいしかなかった。とはいっても節約して食べれば、余裕そうだし、まあ困ることはないだろう。持ち出すことができればだが。
「あなたこれ」
「おおっ」
そんな中紗枝がフレッシュ野菜栽培キットなる、種のセットを持ってくる。何種類かの野菜の種が入っており、約25日ほどで育つ代物だ。
「よし確保しよう」
「そう言うと思って」
そうして鞄を見せてくると、それらが多数入っていた。
「さすが、偉いな紗枝は」
「えへへへへへへ」
紗枝の頭を撫でてやる、髪は洗えないので少しゴワゴワしているが触ると気持ちよかった。
「ならこれも押さえたから逃げられるな」
と紗枝に自分の鞄の中を見せる、小ぶりの化学肥料の袋が入っている。
「あなたすごい」
「だろう」
そんな感じでいちゃついていたかったのだが、誰かが、物を落とす、落としてしまう。
カーーーーーン
そんな風に甲高い音が響く、息を潜める、周囲を警戒する、学生服の中の1人が慌てている、そいつが落としたのだろう。それ以外にも、突入班の大半は初めてなのだろう、祈りを捧げていた。
経験がありそうなやつらは武器を握りしめる、が震えている。
そして自分達は。
「よし物を詰めるだけ詰めるか」
「ええ」
物を詰めていく、どうせもうダメだろう、あの音は甲高すぎだ、確実に数体来る、ならば物を集める方が正解なのだ。祈るなんて無駄だし、武器は常に抜けるようにしておいてあるので武器に手をかけたりもしない。ついでに常に周囲を警戒しているので。
「ひっ」
足音を逃しはしない、現れたのは慌てふためいていた学生服の近く、と言うかそれは当たり前だ、音がしたのがその辺りなのだ、音のそばによるのであればそいつのそばに現れるだろう。
だがそいつはそう思っていなかったのか、悪手に悪手を重ねようとして。
「うっ」
紗枝に手を伸ばす、同じことを考えていたのだろう、手をとると。
「わーーーーーーーーー」
叫び声と金属音、それを尻目に逃げるしかない。
「おい、大丈夫か」
「くそっこうなりゃ」
「大丈夫、大丈夫、生きて帰れる、成功すればあそこで生きていける」
「くそっ撃つぞ」
彼らは人だった、すっかり忘れていた、生存者ではない。正確には他人を見捨てられない正常な人であった。それだから発砲音。甲高い金属音に発砲音の合わせ技だ、逃げるしかない倉庫の入り口をゾンビに埋められる前に。
紗枝も同じ考えだ、一緒に入り口まで走る。まだ少し余裕はある。後ろの方では逃げるか戦うかを悩んでいたが、悩む暇があれば、立てこもるなら入り口のシャッターを下ろせばいいし、逃げる気なら逃げてしまえばいいのだ。そうしないと。
「もうかっ」
逃げる余裕も。
「ちっ集まってきてるか」
戦う余裕もない。ゾンビとの戦いは、一撃で顔を処理してしまうことだ。組み合ってはダメだ。そして逃げるのを優先すること。さらに言えば囮があればどうにかなると。
「思ったんだがっ」
「あなた集まるのが早い」
「切り捨てか」
口減らし、そんな考えが頭によぎる。使えない人材を捨てる、そのための餌が倉庫だ。だがそれも違ったようだ。金属音よりよりとおくまで響く音、それに伴う銃撃音。そして死を告げる音。
「逃げるぞっ」
「ええ」
唯一の脱出手段であるヘリの音だった。




