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序章
「そんな事分かってるさ。けど、人が誰を好きになろうが、理屈じゃない。そうだろ?」
「そ・・りゃあ、そうですけど・・?」
脇が複雑な表情をしたが、田辺が、
「そんな人と悪いけど、ヤマさんと比べたら、そりゃあ、勝ち目は無いですよ。と言うか、どんな 競翔家でも太刀打ち出来ないや」
その言葉に葉山も頷き、
「会長・・この地で香月博士の講演があったのはいつでしたっけ?確か自分(葉山は自身を自分と表現する)は仕事があって講演には行けなかったんですが」
「・・確か、資料があったな、ちょっと待っててくれよ」
川中が奥の部屋に立った所で、内山がやっと口を開く。
「花ちゃんだって良い娘だよ。わしの孫娘もピアノを習っとるが、めきめき上達してピアノ発表会では鼻高々だった。気遣いも出来るし、少々勝気だけど、優しい良い娘さんだ」