競翔
「待ってよ・・連合会で確認した所でも、相当早い帰舎でも、葉山鳩舎が11時過ぎに1羽、瀬山君も11時過ぎに1羽。それは、信じられない位に特別早いよ、花ちゃん」
美里は余り驚かなかった。と、言うより今春の競翔は自分がやっているような実感がまるで無いのだ。全ては山川や内山の助言を守り、忠実に実行しているだけ。美里に手腕を要求されても、無理な話だ。競翔4年目を迎えて、やっと昨春700キロレースを記録したばかり。全く入賞すら考えても居ない競翔家だと自分でも認識している。それがここまで2つも優勝し、全レースに入賞もしている。だからまるで他人が競翔をやっているような感じだった。
「・・どうした?花ちゃん・・?」
電話の向こうで、無言で居る美里に山川が・・
「あ・・少しぼおっとしてた。予想外に早いなって事は思ったんだけど、全く帰舎時間なんて私は気にしてなかったから」
「そりゃ・・そうだろうなあ・・。10時35分なんて帰舎。香山連合会ではこれまで考えられなかった、7時半放鳩だもんな。そんな分速、予想も出来ないよなあ・・しかし、これも西地区合同レースになったからかも知れない。大羽数レースでは時折こう言う記録を生み出すからね。花ちゃん、総合上位の可能性が充分あるから、早めの6時に車で迎えに行くよ」
「えっ!」