競翔
「自分から、こう言うのはおこがましいが・・そう考えている。足の速い者、持久力のある者。体力に自信のある者、状況判断力に優れる者。頭脳が明晰な者。人間だって、鳩だって同じ事だ。そして、それを天才的な洞察力と、類稀なる手腕で見抜き、個々の鳩の資質に合わせた競翔をしたのが*香月博士であり、磯川先生は、真似が出来なかったーーと。そしてシオン系を放出したのは、東神原連合会にはこの頃独自の帰舎ルートが白川博士によって確立されて居て、その中で、川上系の存在はとても大きく、この源鳩達をこの地区に順応させるには、幾世代も改良が必要で、若い自分には待てなかったと。香月博士が現れ、それまでの常識な競翔の考え方そのものを全く違う視点から打破して、新競翔スタイルが出て来るまでの間、思考錯誤の毎日であった。そして、その改良を自分(葉山)に託せて良かった、と礼を言われたんです」
「・・ううむ・・磯川氏は強気一辺倒の競翔家と聞いているが、その当時は15、6歳だろう・・そんな事を既に考えて競翔をしていたと言うのか?」
内山が唸った。
「そうです。確かに香月博士は大天才ですが、磯川先生も天才と称される競翔家ですよ。私の目からその時、鱗が落ちた気がしたんです」
*白い雲他、