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競翔
「早く!早く!」
美里が川中会長宅へ到着したのは、開函5分前だった。集まった会員は僅かに10余名。学生競翔家の姿も3、4名しか無かった。一般では、内山、葉山、瀬山、山川、美里、浜中のみ。この中で内山は審査委員長を兼ねているので姿は見せているが、競翔には参加していない。
ようやく、開函後、審査員の内山、山川が川中会長と席を離れ、葉山を中心とした座談会の輪が出来た。
「しっかしなあ・・花ちゃん。何時の間にどえらい鳩育ててたんだよ。今日は驚いたねえ」
美里がはにかみながら、手を振った。
「やっぱり、銘血オペル系ダブルBの血筋ですよね?葉山さん」
瀬山が葉山に確かめるように言うと、
「いやいや・・確かに体型、筋肉はオペル系の特徴を濃く受け継いでいるが、主翼、副翼が、自分の経験に無いような・・特に、今日優勝しているであろう、一羽は別格だ」
「え・・?」
驚かされる事の多い、ベテラン競翔家達の言葉、そして洞察力だが、そこまで自分の鳩を見ていたのかと言う驚きで美里は声を上げた。