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演奏会
美里がピアノの前に座り、山川は教室奥の椅子に座る。演奏を静かに聴いた山川がここで言う。
「俺自身が感じた事を言うね?あの時の、花ちゃんの演奏からは、大空を飛ぶ爽快な鳩を想像した。しかし、今のフレーズからは、何の風景も見えない」
美里は驚いた。香月博士と同じ事を今、山川が言ったのだ。
「講演会の時・・確かに伯父さんの家で小さい頃見ていた鳩達を想像しながら弾いたの。でも、それを感じてくれたのは、2人目だわ。」
「そこまで表現出来る君なのに、何故ポロネーズの今の旋律からは何も見えないんだろう。花ちゃんは、ショパンを忠実に再現しようとしているだけじゃないのかな?それには、君がショパンに成り切って弾けるのか?と言う事だよ」
「あんな大天才に成り切って?それは不可能よ」
「だったら、花ちゃんは、花ちゃんの第7番を弾けば良いと思う。草原で舞踏するイメージがあるのなら、それはそれで、花ちゃんのポロネーズじゃないのかな?偉そうに言って御免・・」