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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第七章〜秋と言えばやっぱり文化祭だよね!?そんな事無いと言われても始めてしまったんで諦めて欲しい!とモブ
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礼那と朝日とモブ

武流の両親が帰ってから、今度はアメフト部部長の九尾(きゅうび)とボクシング部部長の(じょう)が現れた。……いや、城は教室の外でキョロキョロ辺りを見回している。どうやら徹と忠臣には顔を合わせたくないようだ。


「よう!茂野くん!頑張ってるか?」


九尾は武流に声をかけた。


「九尾先輩、と……城先輩……二人とも知り合いだったんですか?」


「ああ、中学からの腐れ縁だよ。君らにはお世話になったようだね」


城に聞こえないように小声でニヤリとしながら言った。


「まぁ……それなりに……」


武流は苦笑いだ。


「S.T.A.F.Fのメンバーは君らだけかい?」


「はい、けどそろそろイベントの時間なんで集まると思いますよ」


「イベント?そう言えばこの後のシフトが[シークレット]になってたけど……なにが始まるんだ?」


「まぁお祭りですよ。な、湊」


「……ちょっと恥ずかしいんだけどね……」


湊は少し照れながら答えた。そして挨拶もそこそこに教室の隅の更衣室に消えていった。


「……なにがあるんだい?」


「……見てのお楽しみです……」


遡ること三十分前、場所は変わって生徒会室。礼那と朝日が雑談をしていた。


「礼ちゃん。なんで私たち、折角の文化祭デートを生徒会室でしなきゃいけないの?」


「まあそう言うな。お前の為でもあるんだぞ?お前は私とデートしていると変態性が全開になるからな、今もそうだろう」


二人は紅茶を飲みながら優雅に雑談しているように見えるのだが、裏では朝日が紅茶に睡眠薬を入れようとしたり、さりげなく部屋の奥の仮眠室に誘ったりという攻防を繰り広げていたのだった。


礼那は、本当はすぐにでも逃げ出したかったのだが、計画の為と思いなんとか踏みとどまっていたのだ。


(そろそろか……)


礼那は朝日に気付かれない様に時計をチラリと見た。


「朝日、確かにお前の言う通りずっとここにいるのもつまらないな。折角だしうちのクラスに来ないか?お前とのデートの為に特別室を作らせてあるんだ」


「特別室?私の為に?怪しいなぁ……」


「無理に、とは言わないが……自分の庭じゃなきゃ何も出来ないか?」


それは本当に安い挑発だった。安いがここで引ける程、朝日の礼那への想いは安くは無かった。それを見越しての挑発ではあるのだが……


「ふ……その挑発!あえて乗ってあげましょう!私の礼ちゃんへの愛を舐めないでもらいたいわね!」


「決まりだな。行くぞ」


そして武流のクラス。そこには本当に特別室が設えてあった。


個室になっているそれは、黒いカーテンで仕切られ中が少し暗くなっていて、アンティーク調のテーブルセットが落ち着いた雰囲気を醸し出していた。


「へぇ……急作りにしてはちゃんとしてるのね……って、どうしたの?礼ちゃん……」


見ると部屋の奥では礼那が後ろ向きで俯いていた。気になって朝日が近付くと、突然振り返った。


振り返った礼那は、頬を染めて若干目を潤ませながら朝日に詰め寄った。


「なぁ朝日……ううん、朝日お姉ちゃん……礼那、お姉ちゃんのメイド姿見たいな〜」


普段礼那とよくいる人間が見たら[誰だお前は!]と叫んでドン引きする程、可愛いキャラを作ってみせた。


しかし朝日はドン引きではなく的確にハートを撃ち抜かれたようで、恐ろしい程食いついてきた。


「わかったわ礼ちゃん!これね!?これを着ればいいのね!?」


「ありがとう朝日お姉ちゃん!私も着るからね!」


……もう一度言うがこれは礼那である。


「お揃いね!?ペアルックね!?」


そして二人が着替えを終える頃、昨日と同じく学校中のモニターに智が映し出された。


『文化祭をお楽しみの皆さん!S.T.A.F.Fがお送りする今年度文化祭最後のイベントが二年E組にて催されます!』


智の言葉と共に、タイトルが映し出される。[メインイベント!学内美少女ご奉仕タイム!]と。


そしてモニターからは、昨日のランキングをカウントダウン形式でざっと紹介する映像が流れ、ご奉仕タイムの開始が宣言された。


その宣言と同時に、朝日の為の特別室のカーテンが開かれた。そこから現れたのは、華やかなピンクのメイド服を着た、朝日と礼那だった。


「きゃぁ!なによこれ!」


朝日の悲鳴が木霊する。


そう、要するに礼那は朝日を嵌めたのだ。キャンセル出来たはずの朝日とのデートを実行したのも、あり得ない程のブリブリな演技も全てはこの為、朝日にこの衣装を着せる為であった。


二人の衣装は、外側のワンピースがピンクでインナーが白なのは共通していたが、色々な所に違いがある。礼那は乗馬用の白いズボンで、腰に馬用の鞭を装備しているのに対し、朝日は足元は白いレザーブーツで、大きく開いた胸元はこれもレザーのハーフカップで、豊かな谷間を強調していた。……つまりはボンテージの様なインナーだった。言い換えれば白い女王様風ピンクメイドと言えばわかりやすいか。


「尾張……お前その格好……」


特別室のカーテンが開いた時、たまたま一番近くのテーブルについていた九尾と城の二人とバッチリ目が合った朝日。


「き……九尾君と……城君……」


どうやら三人は顔見知りらしい。三人は言葉も無く数秒固まっていたが、朝日はすぐにいつもの完璧超人生徒会長の顔で口を開いた。


「ゴホン……こんにちは。お二人共文化祭は楽しんでいますか?」


「いや……君ほど楽しんではいないな……」


この九尾の言葉に自分の置かれた状況を無理矢理思い出させられた朝日は絶叫した。


「いやああああ!見ないでーーーー!!」

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