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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第七章〜秋と言えばやっぱり文化祭だよね!?そんな事無いと言われても始めてしまったんで諦めて欲しい!とモブ
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文化祭二日目序盤とモブ

一夜明けて文化祭二日目、昨日のミスコンは大成功だったようで、朝から喫茶店は大忙しだ。


ミスコン上位の女子は時間が被らないようにシフトを組んだのだが、それでもかなりの人数が喫茶店に押し掛けた。そこで取り敢えずの方策として、キッチンに千種を招集、ホールの増員を余儀無くされた。


千種曰く、それ程広くないキッチンに男子がたくさんいても仕方ない、人は少ない方が動きやすいと言う事なので、調理を千種一人にして、大和を調理補助に付けることにした。


すると、キッチンは千種と大和の息のあったコンビネーションで流れる様に作業が進み、さらにはホールを増員したことで客の回転も良くなった。


恐らく他の人間ではここまでうまくいかなかっただろう事を鑑みれば、改めて千種の家事スキルの高さが伺えるというものだろう。


お昼頃になると、ミスコン上位の女子は店を出て自由時間だ。


これも良かったらしく、女の子目当てのミーハーな客がいなくなり、一般客が落ち着ける休憩所としてちゃんと機能していた。


「伏見、なんとか落ち着いたな。しかしファン達がいないといい店だよな」


翔が、接客も一息ついた頃に桃花に話しかけた。


「そうね、いい店よね。飛島君の作った飾りもちゃんとマッチしてるわよ」


「お?どうした?惚れちゃった?」


翔は思いがけず褒められて、慌てて冗談で返してしまった。


「土下座して泣いて頼んだら惚れてあげましょうか?」


「どんだけ上からだよ……」


二人で笑い合った。こうして見ると意外とお似合いなのかもしれない。


(あの二人がか?ちょっと無理ないか?)


そうでもないかもしれないぞ?脈ありかもな。


午後に入っても店は好調だった。S.T.A.F.Fメンバーの家族も次々押し寄せてきて一時は騒然となったが、なんとかトラブルも無く順調だった。


だったのだが、武流と湊のシフトの時に巫女がやってきた。


「ヤッホー、お兄ちゃん!遊びにきたよ!」


「お前何回来るんだよ……つかなんか飲んでいけよ。毎回毎回本当にただ遊びにきやがって……」


「今回はお客さんも連れてきたよ。お父さん!お母さん!こっちだよ!」


巫女に呼ばれて武流の両親が教室に入ってきた。


「おお!武流!ちゃんと働いてるか!?」


見ると両親は今まで見たことの無い程ビシッとしたスーツを着込んでいた。


「たかが高校の文化祭でなんて格好してんだよ!結婚式帰りか!」


「だって……あなたの彼女もいるんでしょ?その子を逃したら次は無いと思って……」


「母親の言う事じゃねぇ!後、理由になってねぇ!」


つまり両親は、武流自身の魅力で彼女を繋ぎとめる事が出来ないと思って、[ちゃんとした親の子供である]という付加価値を付けようと思った様だ。気持ちは良くわかる。


(わからねぇよ!どんだけ息子を信用してねぇんだ!)


「それで?どの娘なんだ?お前と付き合うくらいだからかなり個性的か若しくは無個性な娘なんだろ?」


「失礼にもほどがある!俺にも彼女にも!」


愉快な親子の会話もひと段落して、ようやく湊の紹介だ。


「湊!ちょっと来てくれないか?」


茂野家の会話の間、ずっとチラチラ様子を伺っていた湊。武流に呼ばれていそいそと嬉しそうに駆け寄ってくる。


「この子が那古野湊。巫女から聞いてるだろ?湊、この残念な二人が俺の遺伝子提供者だ」


「普通に紹介してよ……はじめまして!私は那古野湊と言います!武流君とは一学期の頃からお付き合いさせてもらっています!」


湊は若干緊張しつつも、丁寧にお辞儀をしながら挨拶をした。


それを見た両親はとても驚いた顔をした。


「良くできたお嬢さんだ!武流!お前どうやってこんなに良くできたお嬢さんを捕まえたんだ!?」


「那古野さん!あなた武流に脅迫でもされたの!?でなきゃ武流なんかとお付き合いするはずないわ!」


「脅迫なんかしてねぇ!普通に告白して普通に付き合ってるだけだよ!」


武流は全力で抗議した。だが両親は微塵も信用していない。そこへ助け舟を出したのは巫女だった。


「二人とも、湊お姉ちゃんはすごぉく優しい人なんだよ。それにちゃんとお兄ちゃんから告白したのもホントだよ。ほら……」


巫女は言いながらケータイを取り出した。


『湊!好きだ!俺の彼女になってくれ!』


『……はい!私を武流君の彼女にしてください!』


そこには武流の告白シーンが動画で映し出されていた。


「うわああああ!!やめろ!!なんて物を残してやがる!」


武流は叫びながら巫女のケータイを奪った。恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら。


「ほほぅ……武流……こんなの残してどうするつもりなんだ?」


「俺じゃねぇだろ!巫女のケータイだ!」


「脅迫じゃないとすると……一体武流のどこに魅力があるの?お母さんにはさっぱりわからないわ」


「……親目線ならなんかあるだろ……」


普通ならどんなダメな子でも[ホントは優しい子]とかありそうな物だが、それすら思いつかないようだ。


湊は苦笑いで呆れながらも真面目に答えた。


「どこって……とっても優しく[してくれる所]……です……」


言いながら、段々と照れて顔を赤くしていく湊。武流は、[してくれる所]を強調したのはキスの事と思い、同じく顔を赤くしてしまう。


「……本人の前でやめろよな……」


しかしこれがまずかった。両親は、まさか今時キスくらいでここまで照れるとは思わないので、この二人の関係はさらに深い仲の話と勘違いしたのだ。


(!!!)


「武流!お前なんて事をしてるんだ!こんなできたお嬢さんを傷物にしたのか!?」


「お母さんちょっと早過ぎると思うの!」


「だあ!違う!そういう意味じゃない!湊からも弁解してくれ!」


「ん?なにが?」


湊は素知らぬ顔で微笑んでいた。ちなみにわざとだ。


「味方がいねぇ!」

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