表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第七章〜秋と言えばやっぱり文化祭だよね!?そんな事無いと言われても始めてしまったんで諦めて欲しい!とモブ
66/70

文化祭の合間とモブ

ミスコン発表会が終わり、武流のクラスも急いで片付けを進める中、礼那が朝日に声をかける。


「お疲れ、ミス名北。気分はどうだ?」


「そうね、智ーちゃんに[尾張先輩]って言われるのはちょっと違和感あるわね」


「いや……わからんでも無いがそっちでは無くてだな……」


「わかってるわよ。けどホントびっくりしたわよ。まさか一位になるなんて……嬉しいけど私で良かったのかなって」


「本音は?」


「また明日から男どもがわんさか言い寄ってくるかもと思うと気が滅入るわ……」


「贅沢な悩みだな」


こんな調子で二人は笑いながら教室を後にした。


片付けをしている中、智が二日目の注意事項を伝達する。


「今日はみんなお疲れ様。明日も予定通りに作業を続けてくれ。だけど明日は今日より忙しくなると思うから気を引き締めて臨んで欲しい」


今日一日でみんな疲れているはずだったが、何かしらの手応えを感じたのだろう、元気な返事が返ってきた。その後もテキパキと片付けを終わらせて下校時刻になった。


そしていつもの武流と湊のバカップルパートだ。


(うるっさい!)


いつものように一緒に帰る二人、最近では学校から少し離れた所から手を繋いで歩くようになった。


離れてからの理由は、周りからの冷やかし対策で、武流は未だに手を繋ぐだけで照れて周りにからかわれるからだ。


「湊、今日はお疲れ様と改めておめでとう!」


「うん、ありがとう武流君。なんかご褒美頂戴!」


[なんか]と言いつつ、湊は自分の唇に人差し指を当てた。キスのご褒美を所望のようだ。


「……アクセサリーとかどうかな?」


武流はあえてわからないフリで濁してみた。


「……武流君がくれるものはなんでも嬉しいけどね……わかってるんでしょ!?私が欲しい物!」


眉間にシワを寄せて顔を近づけてくる湊の勢いに圧されて武流は頷くしかなかった。


「はい……わかってます……じゃぁキス……していいか?」


頬を赤くして無言で頷く湊。そろそろ湊の家が近いのだが、丁度いい所に人気のない公園がある。


二人はよくこの公園のベンチで話をしているのだが、今日はお喋りは無しでベンチに座る。


並んで座った体勢から武流がゆっくりと湊の肩を抱き、そしてゆっくり引き寄せる。


ほんの数秒、見つめ合う二人。


またゆっくりと顔を近づけて、二人の唇が触れ合う寸前、武流の後ろ、つまり公園の出入り口から声をかけられた。


「あら湊、おかえりなさい」


武流は驚いて湊から体を離して振り向く。見るとそこには買い物バッグを腕に下げた三十代の女性、湊の母親が立っていた。


「お母さん、ただいま。今買い物帰り?」


武流は心臓が早鐘の様に鼓動していたが、湊はキスシーンを母親に見られたにも関わらず、普通に会話していた。


「そうなの、買い忘れしちゃってね。えっと武流君だったかしら?こんにちは。いつも湊を送ってくれてありがとうね」


武流は毎日湊を家まで送っているが、母親とは数回会った事があるだけだった。父親とは会った事がないが。


(見られた……よな……けど普通に会話してるし……)


「こんにちは、お久しぶりです」


武流は何事も無かったように挨拶した。


湊の母親は、三十代半ばのはずだが、見た目は二十代で通りそうな程若々しくて、はっきり言って美人だ。湊の可愛さも頷ける。武流は何度会っても照れてしまうのだ。


「ところで邪魔しちゃったみたいね。ごめんなさい」


やはり見られていた。


「いや!その!……」


武流は慌てて言い訳しようとしたが、湊は不満気な声で母親に抗議した。


「ホントよ、もうちょっと待ってくれたらできたのに……」


「なぁに!?してなかったの!?湊!ちゃんとリードしなさいよ!ゴメンね〜武流君、うちの湊が受けなばっかりに……」


凄く論点がずれていた。湊の家はその辺りは寛容と聞いてはいたが、寛容どころか推進していたようだ。


「私はリードして欲しいのよ!お母さんとは違うんだから!」


「そうなの?まぁそれはいいけどそろそろお父さんが帰ってくる時間よ?」


「え……じゃあ俺帰ります」


キスしようとしていた手前、なるべく顔を合わせたくない武流は即座に帰ろうした。


「そんなに急いでどうしたのかな?茂野武流君」


また武流の後ろから声がした。なんだろう、後ろから声をかけるのが流行りなんだろうか。


声の主は湊の父親だった。湊の父は怒りを露わにしながら武流に詰め寄った。


「急いで帰らなければいけないようなことをしていたのか?」


武流は湊の父の剣幕に圧されながらちらりと湊を見ると、母親と楽し気に談笑していた。武流に助け舟を出す気は無いらしい。


ここは男としてしっかりする所だと考えた武流は意を決して口を開こうとした。


だが、声を発したのは父親だった。


「まぁ、こんな所ではなんだから取り敢えずうちへ入ろうか。……じっくりと聞かせてもらおうかな……」


言葉は穏やかな風だが怒りのオーラは少しも消えてはいなかった。


さよなら武流!君の勇姿はきっちり三日後に忘れる!


(忘れたいのか!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ