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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第七章〜秋と言えばやっぱり文化祭だよね!?そんな事無いと言われても始めてしまったんで諦めて欲しい!とモブ
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準備も大詰めとモブ

翌日、テーブルセットや、カップなどの小物に調理器具が届き、更に特別講師として、春日井家のスーパーメイド鳳来小牧と執事兼変態の弥富が派遣されてきた。これから本番までの間毎日飲み物の淹れ方や言葉遣い、立ち居振る舞いをみっちり勉強する事になる。


「みなさん、こちらのお二方が春日井家に勤めてくださっている、弥富さんと鳳来さんです」


遥香が二人を紹介する。美男美女の登場にクラス中のテンションが上がる。


「鳳来小牧と申します。本日はお招きに預かり光栄です」


スカートの裾を摘み優雅にお辞儀をする小牧に男子だけでなく女子までもが溜め息を漏らした。


「私は弥富と申します。日頃からお嬢様が大変お世話になっております。暫くの間よろしくお願いします」


言いながら右腕を前に、左手を腰の後ろに回して見事なお辞儀をする。そこで終わっておけば良かったのだが弥富は弥富らしい言葉を続ける。


「大天使礼那様からの召喚でなければ誰がこんなオバサンまみれの地獄に足を踏み入れるものかとグハッ! ……光栄至極に御座います……」


途中で小牧が弥富の脇腹に肘を叩き込んだが、弥富は何事も無かった様に恭しく畏まった。


「はい!聞いての通り弥富さんはロリコンの変態ですがそれ以外は有能な方なので安心してください!」


遥香は有能を強調したつもりだったが、クラスメイトは遥香の口からロリコンの変態という言葉が出てくるとは思っていなかったのでそれ以外の言葉が耳に入ってこなかった。


(わかるぞ……みんな……)


武流は深く頷いた。


「はいはーい!それじゃぁ男女に分かれて接客練習を始めましょう!」


桃花の号令で練習開始なのだが……


「……男女で分かれてと言ったはずだが?……」


見ると弥富が礼那の後ろに立ったままだった。片手にはカメラを持っている。


「やや!これは失礼!つい本能に身を任せてしまいました!こちらはオバサンばかりですが礼那様の魅力に惹き寄せられてしまいました!」


「戯れ言はいい……とっとと男子の指導を始めてくれ……」


「かしこまりました」


弥富はお辞儀をすると、本当に嫌そうな顔で男子の所に来た。


「とうとう教室まで来てしまったなこの変態。姉さんに近づく害虫は僕が駆除しちゃうよ?」


智の言葉に弥富は動じる事なく返す。


「これはこれは天使様の弟君、花に蝶が集まるのはいた仕方ない事。それを一々気にしていては花を愛でる余裕も無くなりますよ」


二人はなんだかかっこいい事を言っているが、異常性壁が根幹にあるので今一納得し兼ねる所だった。


そしてようやくちゃんと講習が始まった。


S.T.A.F.F部室、会議中のようだ。設営の準備に派遣されて得た情報交換が議題だ。


「するとやはり合同制作が増えているんだな。うまくいったな」


「それとアメフト部のグラウンドの第二ステージは酷いね。軽音部だけじゃなくて有志のステージも乱立して票の奪い合いは必至だよ。体育館も劇だけで九の団体がエントリーしてるよ。存外派手なだけでオリジナリティーのカケラもないね」


「なんか……正直今回の文化祭失敗なんじゃねぇの?」


「まぁいいんじゃないか?それだけうちが優勝に近づくってだけじゃん」


「朝日は大変だろうがな」


礼那は、大変と言いながらもニヤニヤしていた。朝日の困った顔が目に浮かんでいるのだろう。


「それでクラスのシフトなんだけど、姉さん、春日井さん、フィオ、那古野さんの四人は十一時から十三時を外してお互いが被らない様にしたいんだ。理由はお昼の混雑を避ける為だね。希望があれば明日までに僕に教えて欲しい」


「それと二日目の十六時からはこの四人は全員参加だ。私はその仕込みの為に十五時から抜けるがそれまでには帰ってくる」


智の説明に礼那が補足と希望を伝えた。


「私は武流君と違うシフトにしてね。それ以外は希望は無いわ」


「なんで!?俺なんかした!?」


すかさず武流が抗議の声を上げる。しかし湊はにっこりと返す。


「冗談よ。津島君、武流君と同じシフトね」


湊は満足気な顔だ。どんな時でも武流をからかうのを忘れない。


「ほんともうなんてぇか……砕け散れ……」


翔は本気の顔だ。


「……お前もこないだ彼女できたんだろ?その子とイチャイチャすればいいじゃないか……」


そう、翔は非常に頭が残念ではあるがモテるのだ。学校のヒーローの名は伊達ではなく、いつも告白される側だ。


「……振られたよ!」


「早いな!最短記録じゃないのか!?一体何をしたらそんな簡単に振られるんだよ!」


「知らないよ!今回は俺なんにもしてないぞ!付き合って三日で[なんか違う]とか言われたんだよ!三日で何がわかるんだ!?教えてくれよ!」


モテるのだが何故かすぐ振られるのだ。半分位はすぐに襲いかかって嫌われるのだがもう半分は何もしてないのに振られるのだ。


翔は気付いていないのだが、原因は胸にあった。胸に惹かれて付き合った子はそればかりを見ていて嫌われて、そうでない子と付き合うと緊張していつもと違うキャラになってしまっているのだ。その普段の明るいキャラとのギャップが[なんか違う]に繋がるのだ。


「……取り敢えず普段通りを心掛けてみたらどうだ?二人きりになった途端緊張しまくりなんじゃないのか?」


あ、武流、バラすなよ。つまらないな。


(お前の娯楽に付き合う気はない!)


「後、女の子の胸ばっかり見てちゃダメよ?」


「翔だもんな〜仕方ないよ」


武流と湊に核心を突かれて翔の心は激しく揺さぶられたが、智が笑いの方向に話を持っていったのでなんとか堪える事が出来た。


ともあれ、翔が本当に人を好きになって長く付き合うのはまだまだ先の話だ。可哀想だが先の話だ。


(二回も言うなよ!ホントっぽいだろ!)

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