表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第六章〜夏だからって海に行くと思うだろ?けどそこをあえて外してみたら自分が苦しい思いをしていることを知ってしまった!とモブ
56/70

新たな変態とモブ

「こんにちは〜」


岩倉姉妹が部室に顔を出した。今回のイベントのデータを届けに来たらしい。


「やぁいらっしゃい。この間はお疲れ様」


夏休み中でもS.T.A.F.Fは休まず営業だ。とはいえ全員出勤というわけではなく当番制である。


今日の当番は武流と湊だったはずだが津島姉弟もいた。他のみんなも暇になるとなんとなく集まっているのだった。


「津島君。この間の写真のデータ、うちのパソコンに移したからメモリーカード持ってきたよ」


「そうか、じゃぁこれ、イベントで知り合った人からも画像もらったから渡しておくよ」


智と美樹とでメモリーカードの交換が行われた。


「……津島君、どうやったらそんなに友達が出来るの?」


美樹は疑問ではなく羨ましいという表情だった。


「どうやってって……逆に聞くけどイベントにいる人間はみんな同じような趣味を持つ仲間だろ?少なくとも敵ではないからね、お互い有益だから連絡先くらいみんな交換してくれるだろう」


「うん……そうなんだけど……昔ね、クラスメイトに趣味の事を話したら離れていっちゃった事があってから友達とか仲間とか作るのに臆病になっちゃってるのよね……」


今のクラスメイトがそうだとは限らない。けれど一度そんな経験をしたら臆病になっても仕方がないことだろう。美玖も似たような経験があるようで、俯いてしまっていた。


結局、これ以上話すことも無かったのか、イベントのお礼を言って岩倉姉妹は部室を後にした。


[クラスメイトが離れていく]。この事に一番敏感に反応したのは湊だった。


湊は原因は自分ではないにしろ、同じ様な経験があることから、岩倉姉妹に対して親近感の様なモノを感じていた。


「部長、あの二人なんとか出来ないか?トラウマのせいでボッチってのはあんまり気持ちのいいものじゃないし……」


口を開こうとした湊より先に武流が言い出した。


「モブ男……そりゃそうだろうけどどうして欲しいんだ?僕たちが彼女達の仲間を見繕って[さぁどうぞ!この人たちが今日から君たちの仲間です!]とかやればいいのか?」


そんなことではなにも解決しない。仲間なんてものは自分がそうだと思わなければ仲間ではないのだから。


「そうだよな……そんなんじゃ意味ないよな……すまん……」


「いや、お前の気持ちもわからんでもない。気にするな。それに……」


礼那は一枚の紙を見下ろして意味有り気な言葉を残した。


そして夏休みも終盤、S.T.A.F.F一同は海に山に夏祭りにと大いに遊んだ。あんなことやこんな事があって、武流と湊もそれなりに関係を深めつつ、なんだかんだで夏休みが終わった。


(雑な進め方するなよ!俺と湊の所を詳しくやってくれ!)


二度も誰得する程甘くない!


(俺得でいいじゃねぇか!)


そして始まった新学期。全校集会の壇上にはこの学校の生徒会長、尾張朝日(おわり あさひ)が立っていた。彼女は一年生の頃から成績はトップクラスで、二年生の時に生徒会長に抜擢された才女だ。


容姿も相当なもので、知り合いに頼まれて雑誌のモデルをしたこともある程だ。そんな彼女だが、容姿を鼻に掛けることはなく、常に生徒の規範として振舞っている。


これだけのスペックなので当然の様にとてもモテるのだが、今までどれだけの男子が告白しても誰一人として成功したものはいなかった。


その放課後、生徒会長がS.T.A.F.F部室にやって来た。


「今日はどうしたんですか?今年に入って初めて来たんじゃ……」


「うんちょっと忙しくてね〜今日は礼ちゃんに呼ばれて……」


礼ちゃんとは礼那の事だ。ちなみに智の事は()ーちゃんと呼んでいるらしい。


「そうですか。今二人は不在ですのでよろしければお茶を淹れますからしばらくお待ちください」


そう言って遥香がお茶を淹れていると……


「武流君、生徒会長と知り合いなの?」


湊は生徒会長とは面識がなかったらしい、こっそり武流に耳打ちしてきた。


「ああ、湊は知らないか。会長は部長達と幼馴染なんだよ。去年はちょくちょく遊びに来てたんだけどな」


武流が話していると今度は徹と忠臣と魅華が入ってきた。


「おう尾張、なにしにきた」


魅華はなにやら少し棘のある言い方だ。


「姉さん……生徒会長と仲いいの?紹介してよ」


忠臣が魅華にお願いしたのだが……


「ん?お前尾張が好みなのか?けどやめといた方がいいぞ?お前じゃ釣り合わないし、何よりレズだし」


「え?今なんて?」


「ちょっと〜魅華ちゃんてば初対面にいきなりバラさないでよ〜一応ここの人間以外には品行方正才色兼備で通ってるんだから」


才色兼備は今は関係ないのだが、レズなのはアッサリ認めてしまった。どんな男子も相手にされなかったのはそういう事だったのだ。


「いいだろ別に、今ここにいるのはうちの人間だけだし、お前はもう生徒会にハーレム作ってるんだから」


……作っているらしい……ちなみに魅華と朝日はあまり仲が良くなかった。理由は可愛い女子を朝日に取られるケースが多いからなので、魅華が一方的に嫌っているだけなのだが。


「そうなの!みんな可愛くてホント食べちゃいたい!だから食べちゃった!」


本物がそこにいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ