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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第六章〜夏だからって海に行くと思うだろ?けどそこをあえて外してみたら自分が苦しい思いをしていることを知ってしまった!とモブ
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夏休み直前とモブ

「んじゃいってきま〜す」


無事に補習を免れて、今日も忙しく助っ人生活の翔が元気に部室を出ていく。


コンコン……


翔と入れ替わるように部室の扉を誰かがノックした。


「どうぞ〜」


遥香が返事をして入ってきたのは女生徒二人、スカーフの色が一年生と二年生であることを示していた。


「はい、えと……その……私たちは……」


「二年C組の岩倉美樹(いわくら みき)と妹の一年C組の美玖(みく)姉妹だね。ようこそS.T.A.F.Fへ」


顔を見るなりすぐさま検索。仕事が早い智が二人のデータを引き出した。


「お?どうしたお前ら、先生のオモチャになりにきたのか?」


魅華は二人の間に立って肩を引き寄せた。


(先生、久しぶりです)


「いや、断じてそれはありません」


凄く無表情にしかしキッパリ断ったのは妹の美玖だ。彼女はしっかり者のようで、魅華にセクハラされても落ち着いてあしらっている。かたや姉の美樹はというと、部屋に入ってからこれまでずっとビクビクしっ放しだ。彼女は魅華に負けず劣らずの長身だったが、その態度からかかなり小さく見えた。


「実はですね……」


ガチャ!「ただいま〜!」


美玖が口を開こうとすると巫女が派遣から戻ってきた。


「あれ?ミクちゃんミキちゃんどうしたの?」


巫女は美玖と同じクラスだった。クラスメイトの姉をちゃん付けするのは巫女のキャラの成せる技と言ったところだろうか。


「はっ、いけません。この四人が揃ったら」


美玖は表情と口調はともかく焦っているような内容の声をあげた。この四人とは魅華美樹美玖巫女(みかみきみくみこ)の四人だ。みんなは何のことを言っているのかわからなかったが礼那は気付いた。


「おーい。誰かミケって名前の猫飼ってないか?」


「やっぱり言われたよ美玖ちゃん!」


「仕方ないよお姉ちゃん。私達本当にミケって猫飼ってるし」


二人は抱き合って床に座り込んでしまった。美樹はわかりやすく涙目だが美玖は表情からは感情が読み取れなかった。


絶える事なくコントが続く中、武流はようやく我に帰り二人に聞いてみた。


「それで?二人はなにか用事でうちまで来たんだろうけどコントを見せたかったのか?」


「えっと……誰?」


「茂野だよ!去年一緒の組だっただろ!?」


この場合、美樹の頭が悪いわけではなく武流の存在感の無さがそうさせたのだ。武流が悪い。


(いや悪くはないだろ!)


「姉さん、話が進まないので私から説明します」


要点をまとめると、依頼に来たのだが部活でなくても頼めるのか。可能であれば緊急でも構わないかという事らしい。


「部活でなくても報酬さえあれば構わないよ。けど緊急となると要望通りの人材が集まるかは非正規部員次第だね。内容を聞いてもいいかな?」


智が回答した。事実S.T.A.F.Fは性質上、非正規部員の好意で成り立っているので仕方のないことだった。


「実は夏休み中に学校外のイベントの準備とそのイベントに参加する為の人材を探しているのですが……」


「夏休み中とはますます難しいね。どんなイベントかとどんな人材が必要かは?」


美玖は無言で小刻みに体を震わせている。だが表情が変わらない為、それが何を意味しているのかさっぱりわからないでいると、巫女が口を挟んできた。


「今、言い出し辛くてモジモジしてるんだよね?」


「はい、その通りです」


(わかりにくい!)


「その……同人誌即売会にコスプレで参加したいので衣装を作れる人と集団コスができる人を探しています」


モジモジしてた割には淡々と説明してくれた。いや、微妙に顔が赤いので勇気を振り絞ったようだ。言い終わる頃に遥香が不思議そうにしながら話に入ってきた。


「あの〜……本を売るイベントなんですよね?それとコスプレとなんの関係があるんでしょうか……キャンペーンガールと言うものですか?」


これが一般の認識なんだろうが、あまりのわかってなさに智のオタク魂に火が付いた。


「違う!同人誌即売会と言うのはだね!……」


そこから延々三十分に渡り智の熱い講釈が始まった。二次元にしか興味がない智にとってはコスプレは劣化コピーくらいにしか思ってない筈だが物凄い熱量だった。


「つまり仮装パーティーですね?わかりました!」


遥香は両手をポンと合わせて納得した。智はまだ何か言いたげだったが、概ね合ってるのでそれ以上は何も言わなかった。


ようやく話が進むかと思っていたら、今度は大和が疑問を投げかけてきた。


「でもそれだったらメールで済む話だよね。なんでわざわざここに?」


その通りだ。S.T.A.F.Fの営業として、智は定期的にメールを配信しているのでそれに返せば事足りるはずだ。部室まで来るということはそれだけではないと示唆していた。


「はい、実はコスプレ要員は目星がついていて、確認を兼ねて伺った次第なのです。今は残念ですが当人たちがいらっしゃらないようなのですが……」


「ちわ〜遊びに来たよ」「忘れ物しちまった」


美玖が言葉を続けようとした時、またも来室で遮られる。徹、忠臣、翔だった。


「キター!特にこの三人です!是非ともやって欲しいコスがあるんですよ!」


急にテンションをあげてきたのはなんと美樹だった。彼女はビクビクオドオドなキャラではなく、感情が表に出やすいタイプだったようだ。彼女は三人に凄い勢いで近づいて品定めしている。


「どうですか?姉さん」


「うん!飛島君はチョット細すぎるけど身長でクリア!他の二人は完璧!」


智はすぐにピンときた。というのも突然閃いた訳ではなく前々から感じていた事ではあったので線が繋がったという方が正しいかもしれない。


「まさか……あれか?」


「はい、あの作品です!」

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