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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第五章〜まさか学校を卒業してからテストに関わる事になるとは夢にも思わなかったからどんな教科が普通かもわからないがその辺はフィクションて事で勘弁してくださいとモブ
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やり過ぎとモブ

男達の面子の為にあえて言おう。彼らは確かに話を聞かれているから褒めていた。だがその言葉は紛れもなく全て本心から出た言葉であると。


「なんか……凄い悪い事した気分ね……」


女子達は褒められて照れているのと罪悪感で俯いてしまっている。湊も悪い事したと言いながらも顔は真っ赤だ。


「ま……全くあいつらは!頭の中は女の事でいっぱいだな!けしからん!」


礼那は怒っているような言葉とは裏腹に耳どころか首まで真っ赤だった。しかしそれは他の者も同じだったので突っ込んだりはしなかった。


「お兄ちゃんてば……よくもあんな恥ずかしい事を……妹でも照れちゃうよ……」


「言わないで巫女ちゃん!思い出したらもぉ武流君の顔見れなくなる!」


「ラブラブで羨ましいですねぇ」


「やめてよ〜」


湊は顔を手で覆い俯いて頭を何度も横に振った。


「それに遥香だって中村君に褒められてたじゃない。どんな気持ち?」


「わ、私は別になんとも……!」


(まだ気付かれてないと思ってるんだ……)


武流を含む女子全員が思った。


「じゃぁワタシがヤマトもらう〜!」


フィオが手をあげて言った。


「じゃぁ私が!」「あ……私も……」


それに巫女と千種が乗っかった。お約束だとわかっていない遥香は慌てて手をあげる。


「ダメです〜!私だって!……」


……本来ならばここで「どーぞどーぞ」と繋がるはずなのだが、冗談でも譲る気がない三人は手をあげたままだった……


「……このやりとりいつ終わるのよ……さぁさぁ!明日も早いわよ!私たちも寝ましょう!」


「はーい!……ところでミナト、なんでパジャマに着替えない?忘れちゃった?」


その時湊は勉強の時に着ていたブラウスに短パンだった。確かに寝るにはブラウスは邪魔なはずだ。


「ううん、私寝る時はいつも裸だから布団の中で脱ごうかなって」


ゴフッ!


突然のサービスシーンに武流が鼻血を噴き出した。幸い量はそれ程でもなかったので皆に気づかれる事はなかったが……


こうして女子達は電気を消して寝付こうとするのだが、皆が皆男子の意外な褒め言葉にしばらく眠れずにいたのだった。




翌朝……枕が変わったからなのか、大和は早めに目が覚めてしまった。特にする事もなく部屋を出てウロウロしていると、勉強部屋が開いていた。中を覗くとフィオがすでに着替えも終えて勉強をしているようだった。


(フィオちゃんか……ん?)


ドキン……


朝日に照らされたフィオは輝くような金髪と長いまつ毛と薄い唇がキラキラして見えた。昨夜の徹の言葉通り[真顔は美人]を体現していたのだ。大和はそれまでフィオの真顔を見た事が無かったのだが、確かにその大人びた顔は身震いする程綺麗だった。


時間にしてほんの数秒ではあったが、大和は間違いなく見惚れてしまっていた。


「あ!ヤマト!オッハヨー!」


大和に気付いたフィオが元気に挨拶してきた。そこにはもう身震いする程の美人ではなく明るく元気なラテンの少女がいた。


「おはようフィオちゃん。どうしたの?こんな早くに」


フィオの声に正気に戻った大和はいつもの笑顔で挨拶を返した。


「うん、トールがね?語学を伸ばした方がいいって言ってくれたから英語も勉強してみようかなって。大和は?」


フィオでさえ、昨夜の事は大きかったらしく、徹の助言を気にしての行動だった。眠れなかったのもあったのだろうが。


それから二人は朝ごはんまで他愛ないお喋りをする。


所変わって男子部屋。大和のいない部屋に翔の声が木霊した。


「ドリア〜ン!!」


その声に、男子だけでなく盗聴器を付けっ放しにしていた為女子たちも叩き起こされた。


無理矢理起こされた男子たちは、言った当人がまだ寝ている事もあって、苛立って一斉に枕を投げつけた。


「翔〜!なんだドリアンって!フルーツの王様がどうした!」


「んが?……いってぇなぁ……ん……なんかな?俺がボクサーでさ……試合に勝った俺がなんでか知らないけど叫んでるんだよ……ドリア〜ン!って……なんだと思う?」


(エイドリアン……)(エイドリアンだよな……)(ロッキーだろそれ……)(ロッキーだな……)(ロッキーのエイドリアンですよね……)


何故か皆の心の声は会話が成立していた。


翔の叫びも気になるが、これによって女子達は昨夜の盗聴の事が鮮明に思い出されてしまった。女子達は気まずい空気を払拭出来ないままで無言でダイニングに向かった。


「おお!おはよう諸君!昨夜はよく眠れたかな!?」


帝がダイニングに入るなり元気に挨拶してきた。だが発言とは真逆に目は充血してやつれた感じがありありと見て取れる。


「帝様、おはようございます。皆様も昨夜はよく眠れましたでしょうか」


対象的に小牧は帝と同じく目は充血していたがやけにツヤツヤした顔をしていた。


しかしこれに突っ込むには彼らは若過ぎたようだ。二人を直視出来ずに目線を泳がせていると男子と女子の目が合った。男子は普通に挨拶していたが女子は全員が俯いてしまっていた。


結果的に言えば作戦は成功と言える。いや、効き過ぎたとさえ言えた。


「……お前達、昨日は……まぁなんだ……はしゃぐのも程々にな……」


礼那は、らしくなくしおらしい態度だ。他の女子たちもどこか大人しく、そして最初に目が合ってからその後は一度も男子と目を合わせなかった。


全方位が気まずい空気の中、食事を終えて勉強が始まり、そして夕方に終わったが、翔だけが蚊帳の外で一日中不思議そうな顔をしていた。


余談ではあるが、この日一日中みんなの頭の中にはロッキーのテーマが流れ続けていた。


学校に戻ってからなんとなく男女に別れて帰りしな、忠臣がポツリと呟いた。


「やり過ぎちゃった……のかな……」

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