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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第四章〜恋愛モノにする気はなかったけど意外と長くなったから章を分けてみたけど本当に短いな!とモブ
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初◯◯とモブ

二人はレストランで昼食を取る事にした。水族館近くによくある海鮮がメインのイタリアンレストランだ。……いつも思うが水族館で可愛い可愛い言った後に魚食うとか人間の業の深さが伺えるな……


(食べにくくなるからよせ!)


「ドリア一つとパエリア一つ、後シーフードピザを一つ」


「かしこまりました」


店員は丁寧にお辞儀をして厨房に向かった。


「イルカ可愛かったね〜。また今度来ようね!」


「ああ、水しぶきをかけられなければもっと良かったけどな」


「武流君そういうとこ運悪いよね」


「……自覚があるくらいにはな……」


食事を終えて雑談をしていると、湊がパフェを食べたいと言い出した。注文してパフェが運ばれてくると、スプーンが二個付いてきた。


「これは……二人でどうぞって意味だよな……」


「そうね。一緒に食べましょ!」


湊は笑顔で言うが、武流には敷居が高かったらしく遠慮したのだが……


「武流君。あーん」


湊がフルーツをすくって武流に差し出してきた」


「できるか!」


いつも通り武流は真っ赤になって突っ込んだ。


「なあに?口移しがよかった?もう……それは二人きりになってからね?」


「違っ!……モグッ!」


さらに赤くなって再び突っ込もうとした瞬間、口にスプーンが入ってきた。


「美味しい?」


湊はニコニコ聞いてきた。若干赤くなっているものの、からかうというよりは嬉しそうだった。


「……味なんかわかるかよ……」


「ふふ…武流君照れてる〜」


照れ隠しとお返しとばかりに武流はスプーンでパフェをすくって湊の前に差し出した。だが湊は全くうろたえる事なく食べてしまった。そして


「一人で食べるより美味しいね!」


と返してきた。武流はどんどん赤くなって言葉も出なくなってしまった。


(くそ!可愛すぎる!勝ち目がねぇ!)




「こちら翔。モブ男殺していいですか?」


「後日にしよう。そのまま監視を続けてくれ」


(殺すこと自体はいいのか!)


食事の後はショッピングモールで買い物を楽しむ。


その間に智が現場に到着していた。度重なる妨害に業を煮やしての現地入りだ。


「このタイミングで買い物なら最後はあそこか…」


物陰で監視を続けていると…


「いい加減にしろ。智」


後ろから礼那が現れた。武流の[奥の手]とはこれだったのだ。礼那は表情ではわからないが怒り心頭なのが智にはわかった。


「姉さん……やはり姉さんの仕業か……モブ男にしては手際がいいとは思ったが……」


「お前らは結局なにがしたいんだ?邪魔したいのか?」


「それは違う!モブ男のチキンを見守る為だ!このままではいつまでたっても二人はあのままだよ!?」


「それは余計なお世話だ。あいつは今日決めるつもりだ。そっとしておいてやれ」


「しかし姉さん……」


「私の言うことがきけないのか?」


これは礼那の最後通牒だ。これ以上食い下がれば、智だろうが容赦無く潰される。それは智が一番良くわかっていた。


「……わかったよ姉さん……だけど最後にこれだけはやらせてくれ」


「ほう……これは……いいだろう。やっていい」




買い物を済ませて二人は砂浜を歩いていた。海開き前のそこは、薄暗くなり始めたのもあってほとんど人はいなかった。


(部長が敵に回ったとは考えにくいな……なにをしてくるつもりだ?)


「武流君!……疲れちゃった?」


「いや、ちょっと考え事を……」


「こら!女の子といる時に考え事なんて失礼だぞ?」


「そうだな。ゴメン!」


「仕方ないなぁ。でも今日はこれに免じて許してあげる」


と言って湊は武流があげたイルカのぬいぐるみに頬ずりした。そんな様子を眺めて武流は決心した。


(今だ!)


「湊……聞いてくれないか?」


「なぁに?」


湊は真顔の武流を見て、頬ずりをやめて武流の目を真っ直ぐに見た。


「その……なんて言うか……えと……」


武流はてんぱり過ぎてずっと考えていた告白の言葉がぶっ飛んでいた。必死で思い出そうとしていると先に湊が口を開いた。


「武流君。私ね、言葉って言葉そのものよりも、その言葉に込められた気持ちを伝える事の方が大事だと思うの。だから私はそれがどんな言葉でも意味と気持ちを受け取るようにしてるの」


それは、アドバイスと言うよりも、湊の矜恃であると共に、武流の口から伝えて欲しいという湊の切なる願いから出た言葉だった。これに応えないのは男ではない。武流は湊の気持ちに胸が熱くなる。そして言葉を絞り出した。


「湊!好きだ!俺の彼女になってくれ!」


なんの飾りもないストレートな言葉だった。だがそれでいいのだ。


「……はい!私を武流君の彼女にしてください!」


二人は一歩づつ前へ踏み出した。辺りはすっかり暗くなっていたがこれでお互いの顔がはっきり見える。そしてゆっくり手を握り合い、やがて二人の顔が近づくとその唇を重ねた。


遠くの方から風切り音が聞こえてきた。


(ん?)


そして空が明るくなり、遅れて轟音が鳴り響いた。


「なんだ!?」


突然の轟音に二人は唇を離し、音の方へ目をやった。花火だった。智が言っていた「これだけは」とはこの事だったようだ。


(あいつら手の混んだことを……)


「綺麗……」


ここで[湊の方が……]とは言えない武流だった。


(うるさい!……けどまぁ……喜んでるならいいか……)


「ねぇ武流君。さっきこれを買ったんだけど……」


湊が小さな袋からストラップを取り出した。ガラスのイルカの横に小さく[恋愛成就]と書かれたガラスのプレートが付いていた。水族館の土産物コーナーで姿が見えなかったのはこれを買っていたからだ。


「つける前に叶っちゃったね!」

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