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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第四章〜恋愛モノにする気はなかったけど意外と長くなったから章を分けてみたけど本当に短いな!とモブ
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四面楚歌とモブ

茂野武流は悩んでいた。偶然とはいえ意中の相手の気持ちを知ってしまったからだ。


(あれを偶然と片付けるのか……)


しかし両思いとわかってて何故悩むんだ?本来なら聞いてすぐに飛び出して行くくらいのシチュエーションだろう。


(なんかこう……ドラマチックでロマンチックな告白とかの方がいいんじゃないかなって思うわけだよ)


……誰もお前にそんな事期待してないと思うが……いいのか?わかっているとは思うが湊はかなりモテるぞ。湊が心変わりしない保証はどこにもないし、[強引に誰かに攫われたり]しないとも限らない。


(わかってる!わかってるんだがきっかけが!)


……このチキン野郎が……


(……人間ですよ?)


那古野湊は悩んでいた。昼間はああ言ったものの、待っているだけではいけないのではないかと。武流の周りには可愛い子が多い、その中でいつまで自分を好きでいてくれるのかなどどこにも保証などないからだ。


(やっぱり私から……ううん!武流君はきっと自分から告白してくれる!私に出来るのは受け入れることと雰囲気作り!)


大体にしてこれだけお互いハッキリ気持ちが伝わっているのにモタモタしている武流が悪い!などという気持ちは湊にはないようだ。


どうだ?これだけ相手を悩ませておいてまだシチュエーションとか言うつもりか?


(く……悔しいがお前の言う通りだ……よし!今度の日曜に告白する!)


次の日の朝、武流は湊をデートに誘うべく、気合十分で教室に入るなり湊にこう言った。


「湊、おはよう。次の日曜って空いてるか?」


逸る鼓動を圧し殺しながら湊の答えを待っていると、湊は申し訳なさそうに両手を合わせて謝ってきた。


「ゴメン武流君!日曜は桃花達と買い物に行くの!」


「そ、そっか……じゃぁ仕方ないな……」


まさかの出鼻を挫かれて、落胆の色を隠せないまま武流は席に着こうとする。


諦めるなチキン野郎!お前は今週で死ぬのか!?来週があるだろう!


「じゃぁ来週は?街まで遊びに行かないか?」


「うん、来週ならいいよ!」


この時、教室中が聞き耳を立てていた。湊の[来週]と言うところで全員がビクッと動いた。


(なっ!まさか全員知ってるのか!?)


神経質過ぎる気もするが、本当に全員が二人の事が気になって仕方がないのだ。


(やっぱりか!)


武流は小声で湊に耳打ちした。


「湊……湊も知ってると思うけど、多分俺たちの関係者全員が俺たちの事を知ってるみたいだ……来週出かけるのはばれたけど、場所とかは内緒で決めよう」


湊は真面目な顔で無言で頷く。チラリと周りを見渡せば不自然なくらいみんなが武流達に背を向けている。いつの間にか現れた魅華までもがだ。


「いや先生がそのアクションはおかしいでしょ!関係ない体でいいじゃないですか!」


「いやついノリで……」


何故か照れ笑いする魅華だった。


しかし困った。周りの全てが敵と言っていいこの状況では連絡を取り合うのも至難だ。学校で話そうにも誰が聞いているかわからないし、智が敵に回った以上メールすらも封じられたと思っていいだろう。あの男ならケータイをハッキングするくらいわけないはずだ。


事実それは当たっていた。しかも盗聴機まで仕込み済みだった。


(くそ!あの野郎いつか訴えてやる!)


そこで二人が取った行動は、あえてのメモだった。授業中に廻すアレだ。幸い二人は前後の席だったのでベストチョイスだったと言える


『多分だけど、メールも危険だと思うからこれで決めよう』


『そうね。津島君ならハッキングくらいやりそうだからね』


さすがに湊はわかっている。


『女子で味方してくれそうな子はいないか?』


『さっきのを見る限りいなさそうね。メールを逆に利用してみない?偽情報を流すとか』


『それでいこう。俺たちがハッキングに気付いてるのはばれてないと思うから。じゃぁ取り敢えず日付は裏の裏をかいて来週日曜で』


『わかった。楽しみにしてるね(ハート)』


なんだかスパイものの映画のように、二人は秘密の会話を楽しんだ。


「モブ男。ちょっと資料室の整理を頼まれてくれんか?」


放課後、いつものように部室に向かおうとした武流を魅華が呼び止めた。


「ああはい、わかりました」


「那古野も一緒か。じゃぁ二人で頼む」


「はい。わかりました」


湊が快く返事する。


「二人きりだからって変な事するなよ?」


「しませんよ!フリにしても雑すぎるでしょ!」


場所は変わってS.T.A.F.F部室。智を議長に会議が行われていた。メンバーはS.T.A.F.F、チア部、クラスメイトの選抜総勢三十人が意見を交わし合う。


「よし、これで役割分担などの取り決めは済んだな。後は肝心の日時と場所だが、これは各々で情報を集めて僕の所に連絡してくれ」


かなり組織だった作戦が練られていた。本当に応援しているのだろうか。


「……お前ら程々にしてやれよ……」


礼那は興味がないようだった。これは武流達にとっては大きな事で、礼那に本気を出されたらどんなに撹乱しようと勘でばれてしまうからだ。


それから当日まで、水面下での情報戦が繰り広げられた。

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