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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第三章〜ようやく出ました真ヒロイン、彼女の無双ぶりは作者の熱が落ち着くまでは続くのでついて来てください!とモブ
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紅終了とモブ

名北の勝利で幕を降ろしたこの試合で、勝敗に大きく作用したのは両チームのキャプテンの差かもしれない。仲間を気遣い辛い場面でも強く鼓舞して引っ張っていった九尾と、仲間は手下で人のミスを許さない恐怖政治の紅とではチームメイトのモチベーションに差が出ても仕方ない。しかしそれが紅にはわからない。


「貴様らが不甲斐ないばっかりになんてザマだ!相手は名北だぞ!この失態をどうしてくれる!しかも最後が最悪だ!なぜ誰もブロックにこない!」


紅がチームメイトに怒りをぶつける。


「あれはお前が勝手な事をしただけだろ!勝手に暴走して勝手に潰れたんだろ!完全にお前の失敗だ!」


これまで我慢に我慢を重ねてきたメンバーの1人が言い返した。


「貴様……なんだその言い方は……俺様に逆らってどうなるかわかってるのか?」


「知るか!もうお前のわがままに付き合ってらんねぇんだよ!退部だろうが退学だろうが好きにしてくれ!お前と一緒のチームなんてもうごめんだ!」


「いいだろう!貴様一人がいなくなったところで俺様は痛くも痒くもない!望み通り退学にしてやる!」


逆らった選手が無言で控え室を出て行くと、紅以外の全員が部屋を出て行く。


これには流石の紅も驚いて止めに入る。


「まて貴様ら!退学になってもいいのか?」


だが選手達は一人として振り返る事なく出て行ってしまった。


「お前達まで……いいのか?退学になるかもしれないんだぞ?」


「なに言ってるんですか先輩。俺たちはチームでしょ?どこに向かうのもみんな一緒ですよ!……あいつ以外はね」


控え室には紅だけが残った。


「くそ!カス共が!まあいい、せめてあいつだけは!」


一方名北メンバー達は着替えを済ませ祝勝会の会場、学食に向かっていた。だが武流だけはみんなと離れて紅を探していた。


(帰っちまう前になんとか一人だけ呼び出せないかな……控え室にはいなかったし……)


武流が走り回っていると、部室塔の影から声が聞こえてきた。


「……やめてください……」


「抵抗するな。お前が一言うんと言えばすぐに離してやる」


そこには紅と、壁に押さえつけられている湊がいた。


「なにやってんだ手前ぇ!湊を離せ!」


「茂野君!助けて!」


湊が泣きながら助けを求めてくる。これに武流はさらに激昂して紅に殴りかかる。だが紅はサッと躱して逆に殴られてしまった。しかしそのおかげで湊は紅の手から解放された。そして武流の後ろに隠れる。


「貴様……たしかうちに偵察に来ていた奴か……貴様には用はない」


「お前にはなくたって俺はお前に用があるんだ!湊から手を引け!」


「貴様には関係ないことだ!どけ!」


湊を抱きしめ紅から庇う武流。ボコボコにされると覚悟を決めたが、ふと顔をあげると逆に紅が倒れていた。


「徹!なんでここに!」


「こっちのセリフだ。お前こそなにしてるんだ?」


「これは……大事な仲間を守ってるんだ!」


「じゃぁ俺と同じだな。それにあいつもいる」


いつの間にか智が紅の横に立っていた。


「紅君……だったね。紅財閥の関係者の……」


「だったらどうした!貴様ら俺様にこんな事をしてタダで済むと思うなよ!」


「いやね、面白い情報を入手したんで見せてあげよっかな〜ってね。ほらこれ」


手にしたケータイを紅が読み進めていく度に徐々に顔が青くなっていく。中身は紅財閥の不正と紅本人の悪行が羅列されていた。


「……なにが望みだ……」


「さっき僕の仲間が言ってたでしょ?[那古野から手を引け]って。安いもんでしょ?人生と引き換えなんだからさ」


「それとこれとは関係ないだろ!」


「送信」ピッ


「何をした!?」


「大丈夫大丈夫。君の悪行を紅南の人間全員に送信しただけだから、まだ人生までは終わってないよ。学校生活までは知らないけどね」


(エゲツねぇ……)そこにいる全員が思った。


「……わかった……言う通りにする……だから勘弁してくれ……」


十分後、その場にはまだ武流と湊がいた。徹と智が紅を連れて行こうとして、それについていくつもりだったが湊が泣いていたのでそのままなのだ。加えて言うなら、湊を庇って抱きついてからずっと抱き合ったままだった。


「なぁ湊……ソロソロみんなのところに行かないか?」


武流が何回目かの同じ言葉を言ったが、湊はずっと「ありがとう」を連呼したままだった。


「湊……お礼を言うなら徹とか智に言うべきだろ。俺はなんにもできなかったんだから」


すると湊はやっと顔を上げて言った。


「そんな事ない……私を見つけてくれた、私の為に怒ってくれた、私を庇ってくれた……ありがとう」


(湊の役に立てた……んだよな……)


それからしばらくして、ようやく湊が落ち着いた。湊は涙を拭きながら体を離してこう言った。


「えへへ……なんか……恥ずかしいところ見せちゃった……ゴメンね茂野君……」


まだ顔は赤いままで涙の跡も残っているが、湊はいつもの調子に戻って言った。


「別に俺はいいんだけど……噂になったら湊が困るだろ?」


「茂野君となら私は構わないわよ?」


「ちょ!そういう事言うなよ!」


今度は武流が真っ赤になってしまった。さっきまで抱き合っていたくせに今更そんな言葉で照れるとは情けない男だ。


「クス……やっぱり茂野君は茂野君だね。ところで気付いてる?さっきから私のこと[湊]って呼んでること……」


「えっ!?嘘!ゴメン!」


「ゴメンじゃないでしょ?私が呼んでって言ってたんだから。でもそれって茂野君の中で私はもう彼女ってことかな?」


「いや!その!勢いでつい!……つーか俺の中でって痛すぎだろ俺……」


確かに。これではまるで[○○は俺の嫁]状態だ。


「ホントね。でもこれからも湊って呼んで欲しいな。私も武流君って呼ぶからいいでしょ?」


「……それって交換条件になってるか?……」


「いいの!」


湊は本当に屈託無く笑った。

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