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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第三章〜ようやく出ました真ヒロイン、彼女の無双ぶりは作者の熱が落ち着くまでは続くのでついて来てください!とモブ
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試合終了とモブ

「飛島く〜ん!かっこいい〜!」


観客だけでなくチア部の中からも黄色い声援だ飛ぶ。なんだかんだ言っても翔はやる奴だ。


「しかし思った以上に上手く行ったな!九尾先輩のフェイクは凄いな!」


武流も興奮していた。実際にあれだけのトリックプレーはなかなか決まるものではない。相手の油断に徹底的に付け込んだプレイとも言えるが。


しかしこのワンプレイで紅南の選手の集中力は嫌が応にも高まった。格下とちょっと遊んでやれという意識から公式戦のそれに変わったのだ。


その後は流石に強豪らしく、能力が高いだけの素人に負けない力を発揮してきた。それでもやはり名北の攻撃は強く、そして礼那と智の作戦により一進一退の攻防を繰り返し四十八対四十とリードしたままハーフタイムを迎えた。


ここでチア部の見せ場、ハーフタイムショーの始まりだ。総勢三十人からなるチア部は、時に激しく、時に華麗に選手達を鼓舞した。チアの可愛さと一生懸命さに男性陣は大いに奮い立ったのだった。


「モブ男、ちょっと話があるんだが……」


智が武流に声をかけてきた。その手には封筒が握られていた。


「これは……」(あの時のか?)


あの時とはビデオ研究の後の会話のことである。


「……紅という男の調査報告書だ。少し調べさせてもらったが、お前に必要な事が書いてあるんじゃないかと思ってな。それをどうするかはお前に任せるから持っていてくれ」


「……わかった……」


なぜ調べたか……とは聞かない。今はこの中身をどうするかが大事なのだから。武流は封筒を胸の中にしまった。


そこへハーフタイムショーを終えた湊が武流の元に走ってきた。まだ汗ばんで息も荒く顔も蒸気していて、武流はちょっとドキッとしてしまった。


「茂野君!ちゃんと見てくれた?BLも程々にね?」


「おぞましいこと言うな!ちゃんと見てたよ!それより那古野って意外と……」


「ん?」


[胸が大きい]とか言ったらお前は死ぬ。


「い……いや!運動神経いいんだなって!……」


「そぉ?まあ練習頑張ったからね!」


(危なかった……危うく命を無駄に散らすところだった……)


ちっ……命拾いしたか……


(死んで欲しいのか欲しくないのか…)


紅南ベンチに紅の怒号が響き渡る。


「貴様らなにをやっている!相手は素人だぞ!それを満足に防ぎ切れないライン!ろくにフリーになれないレシーバー!いい加減に仕事をしろ!これ以上無様な姿を晒してみろ!貴様らごとき一般人が数人退学になったところでこっちはいくらでも揉み消せるんだからな!」


大声で言う事じゃないが実際それだけの権力は持っていた。だからこそ誰も逆らえないのだ。例え紅本人も幾度となくミスをしていたとしてもだ。周りの人間との信頼関係などお構い無しのこの男に心からついていく者などいないのだ。


「わかったら後半なにがなんでも逆転するぞ!」


そして始まった後半戦。気合を入れ直した紅南の選手達が怒涛の猛攻を開始した。これに対して名北守備陣はなれない競技と前半の疲れとで何度もタッチダウンを許してしまった。


しかし、攻撃陣がそれを帳消しにせんとさらに攻撃色を強めていった。原動力はやはり翔の活躍があってこそだっだ。


終盤、八十対七十七で迎えた残り時間六秒、紅南の攻撃は四回目の攻撃で、残りヤードは十二ヤード(10.8m)。順当にいけば名北の勝利が間近に迫っているが、キックで同点延長もありえる場面だ。スタミナに不安がある名北メンバーでは延長はかなり分が悪い。


「みんな!最後の正念場だ!向こうはキックで延長を狙ってくるはずだ!こっちは高さのあるメンバーで少しでもプレッシャーをかけていこう!俺も出る!きついだろうが頑張ってくれ!」


九尾の策に礼那と智も頷いた。


そして紅南ベンチでは……


「キックで延長に持ち込む。ライン共、死ぬ気で俺様とキッカーを守れ」


試合再開。紅南ラインから紅にボールがスナップされた刹那、紅の頭に考えがよぎった。


(俺様が延長狙い?なんてことだ!こんな相手にそんな無様な真似ができるか!俺様が自ら引導を渡してやる!)


「スクランブルだ!」


武流が叫ぶが、その場にいた二十人全員がキックに集中していた為、武流以外は誰も反応出来なかった。紅はすかさず翔の逆サイドに走り出した。


「おおおおー!!」


武流が紅に向かってタックルを仕掛ける。だが紅は一瞬怯んだものの、片手で武流のタックルを潰し、エンドラインへと猛進する。


(くそ!やっぱり俺はヒーローにはなれない!)


「よくやったなモブ男!」


ヒーローが現れた。紅が怯んだ一瞬の隙を逃さず逆サイドから一気に間合いを詰めた翔が紅を止めた。


「試合終了ー!」


審判の笛が鳴り、名北の勝利を告げた。


「うおおおおーー!!」


名北メンバー全員が雄叫びを上げた。いや、紅南の選手以外全員だ。


「勝ったぞ!あの紅南に勝ったんだ!」「やったな九尾!アメフトを続けられるんだな!」「翔!ナイスタックル!今日のMVPた!」「みんな!ありがとう!今日の勝利はみんなのおかげだ!」


みなそれぞれに勝利の喜びを分かち合っている。


そんな中、まだ倒れたままの武流の元に湊がやってきてしゃがみ込む。


「茂野君!やったね!」


「ああ!勝った!でも最後はやっぱり翔がもってくんだな」


武流は少し苦笑いを浮かべた。


「そうだね、最後は惜しかったね」


「……まあ……俺はヒーローにはなれない運命なんだよ」


冗談めかして武流が言うと……


「……でも……かっこよかったよ……」


少し頬を赤くして湊が微笑んだ。


「え!?今なんて!?」


「なんでもな〜い!」


そのまま湊は立ち去ってしまった。


「さて……後はこいつだな……」


胸にしまった封筒を押さえながら武流が呟いた

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