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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第三章〜ようやく出ました真ヒロイン、彼女の無双ぶりは作者の熱が落ち着くまでは続くのでついて来てください!とモブ
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最初の攻防とモブ

グラウンドに紅南の選手が入ってきた。紅を筆頭に闘志を剥き出しにしている。会場がブーイングに包まれるが、そんなものは気にも留める事無くベンチに集まった。


ベンチに座ったのは紅だけで、後は選手だけで無く監督と思しき人やマネージャーまでもが紅を中心に直立不動だ。完全に支配者の風体に違和感すら覚える。


「貴様ら、わかっているな。今日はただ勝つだけではない、敵の戦意を根こそぎへし折れ!圧倒的な勝利以外はあってはならん!」


九尾は紅の言葉に嫌悪の念を抱いたが、部長らしく紅に挨拶をする。


「やあ紅君、わざわざ来てもらって悪かったね。今日はいい試合をしよう」


九尾が握手を求めるが、紅は返す事無く言葉を発した。


「いい試合だと?まともな試合になると思っているとしたらおめでたい話だな。せいぜい怪我をしないように頑張るがいい」


「そうかい。じゃぁ続きはフィールドで」


九尾は大人の対応をしたが、心の中では闘志をたぎらせていた。そして全員で円陣を組んだ時、こう叫んだ。


「俺たちは戦士だ!」「「YAー!」」「戦いの時は来た!」「「YAー!」」「北斗の星に!誓え!勝利を!」「「YAー!」」「行くぞ!ノーザンライツ!」「「YA〜HA〜!!」」


男達が叫びと共にフィールド中央に整列した。観客たちも大いに盛り上がってきた。


「今回はずいぶん人数を増やしてきたな。だがそれだけで勝てるつもりじゃないよな?」


「ま、素人ばっかりなのは認めるよ。けどやってみなければわからないことだろう」


九尾と紅が軽く言葉を交わした。コイントスの結果は紅の勝ちだ。


「もちろん攻撃だ。圧倒的勝利の幕開けだ」


試合開始。アメフトは、守備側のキックから始まる。ボールを攻撃側の陣地に蹴り出し、キャッチして前進。止められたところからシリーズが始まる。シリーズとは四回の攻撃権のことで、その四回の間に十ヤード(約9m)ボールを進めたらまた四回攻撃出来て、失敗するか得点すれば攻守の交代だ。


紅南の攻撃はフィールドのほぼ中央から開始となった。ボールをセットし、選手が位置に着く。ラインからボールがQBに渡されてゲームが始まる。


ライン同士がぶつかり合いQBを守っている間にWRがどんどん守備陣内に走って行く。はずだったのだが……なんと最初の接触で攻撃側のラインが全員仰向けに倒れてしまった。そしてLBの頼馬が紅にタックル。パス失敗だ。


紅南ラインは完全に虚を突かれたのだが、それにしてもいきなり青天(あおてん)を食らってしまう程弱くもないはずだった。だが名北ラインはそれ以上の強さだったと言うことだ。名北ラインは雷神風神コンビとプロレス同好会の人間で、恐ろしい程のパワーで相手を吹き飛ばしたのだ。


ちなみに青天とは、ライン戦で相手に完全に押し負けて仰向けに倒れてしまうことで、ライン最大級の屈辱である。


「よーし!よくやった!後でお前らチューしてやるぞ!」


魅華もご満悦だ。だが徹と忠臣は、「断固断る!」


このワンプレイで浮き足立つ紅南の選手の一人が呟いた。


「なぁ、あの名北ラインの二人…まさかあの[雷神風神コンビ]じゃねえか?」


「マジで!?」


どうやら紅南にまで二人の活躍が伝わっているらしい。ラインの選手が青くなっていた。


名北ラインの想像以上の強さと徹たちにビビっているのとで、紅南ラインは総崩れで満足にパスすら出来ないまま攻撃シリーズが終わった。

そして名北の攻撃。まずは挨拶代わりの一発だ。


「さあ、いきなり[あれ]でいこうか。出し惜しみするほど余裕もないからね」


九尾は余裕がないと言ってはいるが、その顔には笑顔が滲み出ていた。


「嬉しそうだな九尾」


左右左が同じく笑顔で言った。


「当たり前だろ?俺は早くうちのみんなを見てもらいたくてウズウズしてるよ」


名北の攻撃は残り六十ヤードだ。初めての大事な場面で選んだのは……


「はっ!バカの一つ覚えみたいにランかよ!」


九尾が左右左にトス。しかしこれはフェイクだ。ボールは九尾が持ったままだが上手く渡したフリが成功。左右左のランルートを雷文兄弟が強引にこじ開ける。その間を先に抜けたのは翔だ。続いて抜けてきたボールを持っていない左右左を止めにきたLBをブロック、そのまま左右左の前を走る。慌てて守備が翔の前に集まり出す。すると……


「違う!まだQBがボールを持ってる!囮だ!」


九尾は、翔達の逆サイドを走るWRにパスする様に体や視線を移すと、守備は意識の全てをWRに集中させる。しかしそれもまたフェイク、翔へのロングパスだ。囮がばれた後も翔達は走り続け、そこへ超ロングパス。翔の足でさえギリギリのポイントでキャッチ、そのまま今度は左右左が前を走りリードブロックだ。そして……


「タッチダーウン!」


「よっしゃぁ!」


翔の雄叫びといきなりのビッグプレイに会場が沸いた。

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