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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第三章〜ようやく出ました真ヒロイン、彼女の無双ぶりは作者の熱が落ち着くまでは続くのでついて来てください!とモブ
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試合直前とモブ

「なあ大和。知り合いの話なんだけどさ……」


ここは武流の部屋。明日はダービーだ。こんな時でも大和がなんとなく遊びにきて、なんとなく二人でいる、なんとなくの時間がいつも心地よいのだが、今日の武流はそれを楽しむ余裕はなかった。


「なに?」


武流はベッドの上で壁にもたれかかって大和は床で漫画を読んでいた。


大和は、ここ最近武流が悩んでいることに薄々ではあるが気づいていた。けどそんな時、大和は根掘り葉堀り聞いたりしないでただ近くにいてくれるのだ。


「その人はちょっと気になる子がいて、その子は昔負った傷を今も引きずってるんだ。でも全然そんなそぶりは見せないし、ましてやその人にも誰にも話してくれることもないんだよ」


「うんうん」


「でもその傷を偶然知ってしまって、なんとかしてあげたいって思うのは……余計なお世話なのかなって」


「そうだね……その人はその子の事をどう思ってるのかな?」


「大事な友達……違うかな……恋愛感情に近いかも……」


「そうなんだ」


「……って!その人は言ってた!」


[知り合いの話]は本人だ。なんて今や誰でもわかってることなんだがなぜ慌てるかな。


「わかってるよ。なんとかって言うのは傷を癒してあげたいってこと?それとも傷の原因を消してあげたいってこと?」


「それもまだ考えつかない……らしい……それでその人に嫌われても構わないとまで思っている……らしいけど……」


「嫌われてもか……それってもう余計なお世話とか関係ないんじゃない?嫌われる覚悟があるならさ」


「そうだよな、やっぱり。これで日曜の件は許してつかわす」


「はは〜ありがたき幸せ」


二人のいつものやり取りでその場は収まったかに見えた。


巫女の奇襲攻撃。空飛ぶ辞書だ。


「お兄ちゃん!なに大和お兄ちゃんに土下座なんかさせてんの!?」


辞書が突き刺さり、痛むこめかみを押さえながらなんとか[角→面券]を差し出す武流。


「わかったわ!今すぐ面で当てるからそこに立って!」


「立つか!やっぱり使い所ねぇじゃねぇかこの券!今折角いいとこだったのに!」


巫女の乱入で台無しだ。


そして一夜明けてダービー当日。綺麗に整えられたグラウンドで九尾が仁王立ちして叫んでいた。


「ああ!やっぱり試合前のこの緊張感はいい!」


「みなさん、あの人のいつもの儀式なんで気にしないでください」


頼馬が申し訳ない顔でそう言った。


綺麗になったのはグラウンドだけではない。ユニフォーム、ボール、観客席に至るまで、まるで新しいスタジアムのこけら落としのようにピカピカだ。その観客席には礼那たちが集めに集めた生徒や教師、果ては近所の方たちまでが詰めかけていた。


「みんな!今日までよく頑張った!相手は強豪だがお前達が日頃の練習の成果を発揮出来れば必ず勝てる!自信を持て!」


「……津島さん……キャプテンは俺……」


儀式を終えた九尾が泣きそうになりながら訴えた。しかし構わず続ける礼那。


「そしてお前らに最高の応援を用意した!感動に打ち震えるがいい!」


ワーーーー!!


現れたのはアメフト部のユニフォームと同じデザインの衣装を着たチア部の女の子たちだった。


「オーーーーー!!!!」


男たちの暑苦しい怒号が響いた。早くもテンションは最高潮だ。


華麗なチア部員たちのその中にフィオや千種たちS.T.A.F.Fの女子メンバーまでいた。どうやら男子に内緒でチア部と合同で準備していたらしい。


「お前らなにやってんだ!?」


「ショウ!どお?嬉しいかナ?」


「なに言ってやがる!嬉しいわけあるか!超嬉しいに決まってるだろおが!」


かなりの人数がフィオのけしからんボディに釘付けだが、遥香と千種も平均以上のモノを持っていた。巫女は一般的には残念な体型だが一部の男子が巫女に向けて凄い邪な気を発していた。


そんな中、智だけが他の男子とは違うテンションのあげ方をしていた。


「姉さん……これ……姉さんの衣装……僕の手縫いだから……」


「……私は監督だ……そんなモノはいらん……」


「わかってる!だから一回着たら洗わずに返してくれればいいから!」


「目的がわかりやすくて気持ち悪い!」


そんな微笑ましい姉弟のやり取りの後、チア部の列の最後尾には……


「那古野!?お前まで!?」


「やっほ!茂野君!どお?似合うかな?」


湊はグラビアのようにポーズを決めてウインクしてきた。


「……うん……すげぇ可愛い……」


途端に湊の顔が赤く染まる。


「!……最近茂野君素直過ぎ……」


赤くなった顔を更に真っ赤にしてうつむいてしまった。最近こんな沈黙が多くなってきた。


「あ!じゃぁみんな集まってるから行くね!頑張ってね!」


まだ赤い顔のまま湊は行ってしまった。


チア部の列が途切れたと思っていたらまだ一人いたらしい。ゆっくりと顔を出したその人は……


「てめーら!無様な試合しやがったら承知しないからな!死ぬ気で戦え!むしろ死ね!」


……なんとチア部と同じ衣装を着た、三章に入って一度も出番がなかった魅華だった。


(三章とか言うな……)


「お前なんて格好してやがるんだ!歳考えろ!」


徹が今までに見た事もない程顔を赤くして叫んだ。わかりやすいな。


「あ〜?なんだ徹。別に二十六歳でチアなんか珍しくもないだろう。それにそこらの小娘よりセクシーだろ?」


確かにそうだ。単純にサイズだけならフィオの方が勝っているのだが、全身から滲み出る大人の色気がさっきとは違う意味で男子のテンションを上げていた。


「姉さん……弟目線ではNGだよ……」


忠臣のテンションだけがダダ下がりだ。

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