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主人公とモブ  作者: 文月助椛
〜第三章〜ようやく出ました真ヒロイン、彼女の無双ぶりは作者の熱が落ち着くまでは続くのでついて来てください!とモブ
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偵察とモブ

「これが今までのユニフォームだ」


九尾が部室から出してきたのは黄色を基調に白のラインのボロボロのユニフォームだった。


「デザインは悪くはないが……どうだ?この際デザインやカラーを変えてみないか?」


「いいね!俺も実は変えたいなと思ってたんだよ!黒に白ラインプラス赤なんてどうかな!と言うかうちにデザイン画があるから見てくれよ!」


スラスラ出てくるところをみると本当に変えたかったようだ。しかも結構具体的に……九尾の食いつき具合に少し引きながらも礼那は答えた。


「よ、良し……では参考にさせてもらおう」


そのやり取りを横目で見ながら智が武流と大和を呼んだ。


「二人とも週末に仕事をして欲しいんだけど空いてるか?紅南高校に偵察(スカウティング)に行って欲しいんだよね」


「「偵察(スカウティング)?」」


二人の声がハモった。名北と紅南は今まで何度も対戦しているのである程度はわかっているはずだが最新情報を得るに越した事は無い。


「うん、要はスパイだね。本当は僕が行きたい所だけど僕ってホラ、イケメンで高身長で目立つからさ。二人みたいな無個性で目立たない方が向いてるんだよ」


「どうして余計な言葉の方が長いんだ?」


「武流、突っ込むとこはそこでいいの?」


そして週末……紅南高校の練習が午後からであるのと、大和が午前中用事があるとの事なので駅前で昼食を取ってから偵察に行くので駅前で待ち合わせしようと話していたのだが……


「大和が来ない……もぅ約束の時間を十五分もオーバーしてるじゃねぇか!」


別に武流の心が小さい訳じゃない。これがもし彼女との初デートだったら武流は五時間でも待てるだろう。しかし相手は気心の知れた幼馴染で、しかも男だ。むしろ先に来て待ってろと思っても不思議ではない。そんな時、大和からメールが入ってきた。


『ゴメン武流!巫女ちゃんからどうしても今すぐ話があるからって言われたからそっちはお願い!』


(巫女……絶対嘘だ!俺がいないのを見計らって呼び出しやがったな!帰ったら覚えてやがれ!大和も大和だ!親友よりも女を取りやがった!)


武流の言い分はもっともだったが、大和は休日はほぼフラグ管理に費やされているのだった。攻略される側で。


ところで今武流がいるのは普段からデートの待ち合わせによく使われる定番の場所だ。そんなところでケータイを握りしめてイライラしている。周りから見たらデートをすっぽかされた男にしか見えなかった。


(くそ……取り敢えずこの場所から動いた方がいいな……飯でも食いに行くか……)


なんとかその場から離れる理由を見つけた武流。幸い必要な機材は武流が持っていたので、なんとかなるだろうと思い昼食に考えを移した時……


「あれ?茂野君?どうしたの?こんな所で」


湊がそこに立っていた。日曜なので当然私服なのだが、初めて見ると新鮮だ。格好はと言うと、青と白のチェックのワンピースに同系色のハットで爽やかなコーディネートだった。


武流はつい魅入ってしまっていたのを湊が気付いた。


「ん?どうしたのかな?あんまり女の子をジロジロ見るもんじゃないわよ?それとも見惚れちゃった?」


いつものように武流をからかう湊。武流が焦って否定してくるかと思いきや。


「あ、うん……つい……」


「え!?あの……冗談だったんだけど……ありがとう……でいいのかな?」


武流のまさかの言葉に湊は顔を少し赤くしてうつむいてしまった。


「あ!いや違っ!いや違わないけど……じゃなくて新鮮……じゃなくてその……」


それなりに長い沈黙…もうなんと言っていいのかわからなくなり、話を変えようと必死で考えていると湊が口を開いた。


「ど、とうしたの?こんな所で。もしかしてデートとか?」


と話を最初に戻した。どうやらなかった事にしようとしている。


「いや……デートする相手がいねぇよ!……実はさ……」


武流もそれでいいと思い、これまでの経緯を話すと湊がなにか思いついた。


「私も行く!」


「なんで!?」




場所は変わって紅南高校。結局湊と一緒にくる事になったのだが、武流は少し心配していた。湊は紅南からの転校生なので詳しいのはわかるのだが、そもそも偵察なので顔バレしてはいけないのだ。だが湊の[女の子といた方が怪しまれない]との言葉に押し切られてしまったのだ。


加えて武流としても湊と一緒にいるのが楽しかったりするのだ。


(別にそんなことねぇよ!)


私に言い訳しても仕方ないだろう。さて、紅南高校のアメフト部のグラウンドは、高校の敷地の端の方の公園に面した拓けた場所に位置しているため、外部の人間が周りにいても特別怪しまれることはないようだ。武流たちがコッソリ撮影していてもそれ程気にする様子もなかったのだが……


(勢いで来ちゃったけど……アイツ……いないみたいね……よかった……)


(今の……那古野か?)


湊はグラウンドに着いてからずっとソワソワしていた。それは何かに期待してというよりは、嫌なことが起こらないように祈るような様子だった。武流は、気にはなるが湊が口に出していない以上聞くわけにもいかず偵察を始めた。


「今はレギュラーチームの試合形式の練習みたいね。紅南は攻撃重視のチームだけどQBは違うみたい」


「アメフト好きなのか?マネージャーやってたとか?」


武流はなんとなく聞いただけだったが湊の声が少し沈んだのがわかった。


「うん、マネージャーだったし……アメフトも好きだった……かな……」


その自分の声の沈みように慌てて明るい声を出した。


「だから私を連れて来て正解よ?色々教えてあげるね」


湊が元気アピールにウインクして来たが武流は気になって聞いてみた。


「なぁ……もしかしてなんかあったのか?」


その質問は別の言葉に遮られた。


「湊じゃないか。こんなところでなにしてるんだ?」

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